腸内細菌代謝物質のプロピオン酸が認知機能低下を促進する可能性、ほか|GNGグローバルニュース2022年11月25日号

こんにちは、GNGの和泉です。
11月25日号のグローバルニュースをお届けいたします。

今号も、2023年のトレンド予測、腸内環境や腸脳相関に関する最新の研究、海外業界メディアから数多くの業界最新記事を取り上げています。ぜひご覧ください。

ご存じの方も多いと思いますが、今月2日、国連(UN)は地球上の人口が80億人に達し、2080年には104億人に達すると発表しました。年々人口が減少している日本とは対照的です。
国連はこれを「人類にとって画期的な出来事」と称しましたが、一方で、人口増加は食糧安全保障、気候変動、生活の質に対してさらなる圧力をもたらす可能性があると懸念しています。さらに、人口が増加しているのは主に発展途上国です。

世論調査会社のIpsos Public AffairsのCEO、Darrel Bricker氏は、世界人口の約36%を占める2ヶ国、中国が史上最低の出生率を記録し、インドの出生率も横ばいのため、今世紀末には人口増加率は低下すると予測しています。
国ごとの健康格差も問題視されており、経済的不平等も広がっています。最近の研究で、疾病の15% の 原因が栄養失調であり、インドの幼い子供たちの主な死因であると指摘され、別の研究では低所得と栄養価の低い食事との関係が示されました。すべての市民に質の高い生活を提供できるようにするまでには、課題は山積みです。

今号でもトレンド予測に関する記事を取り上げていますが、スイスに本拠を置くバイオテクノロジー企業であるLonza社も今月18日、業界メディアのNutrition Insightsに対し、業界の変化についての洞察を共有しています。

以下、Lonza社が注目するトレンドを一部抜粋しました。

  • 関節の健康:同社の調査で、あらゆる年齢層の消費者が、関節の健康に注目していることが判明したとのことです。サプリメントユーザーの82%が、効果が証明されれば関節のためのサプリメントに興味があると回答し、また、ミレニアル世代(38%)とベビーブーマー世代(38%)も、ほぼ同じ割合で関節の健康に関心を持っている可能性があることが分かりました。
  • スポーツ(eスポーツ)ニュートリション:Lonza社は、スポーツニュートリション市場の成長と同様、eスポーツ市場の成長にも注目しています。同市場規模は2022年で18億ドルに達すると予測されています。
  • 腸の健康:プロバイオティクスの運動機能に対する効果が注目され、同社は、運動持久力を最大75%向上させ、体組成とエネルギーレベルを改善することが臨床的に証明されている、台式泡菜(台湾風キャベツの漬物)から抽出されたスポーツ乳酸菌TWK10に注目していると述べています。

特に腸は、脳機能を含め身体全体の健康につながっていることが分かっています。
腸の健康領域は今後もますます成長することが見込まれます。

和泉 美弥子

この記事について

GNGでは、会員向けに世界各国の健康・食・栄養に関するニュースをセレクトし、日本語に要約したものを月に2回、ニューズレター「GNGグローバルニュース」として配信しています。

本日配信したグローバルニュースでは、2023年のトップトレンドとは:Mintel社の分析、豪州の企業がポストバイオティクスコーヒーを開発、腸内細菌代謝物質のプロピオン酸が認知機能低下を促進する可能性、NMNをサプリメント定義から除外というFDAの判断に業界が猛反発、など12の記事を取り上げています。

この記事では、その会員向けニューズレターの一部を抜粋してご紹介させていただきます。

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■GNGグローバルニュース 2022年11月25日号 トピックス

Market News マーケット
●健康はフィジカルからメンタルへ、今の消費者意識を探る:HMTレポート
●2023年のトップトレンドとは:Mintel社の分析

Products News 商品情報
●Grøntvedt社がオメガ 3脂肪酸 、セトレイン酸含有製品を発売
●豪州の企業がポストバイオティクスコーヒーを開発

Science News サイエンス
●過去のライフスタイルデータが現在の腸内環境の健康を占う可能性
●食物繊維の摂取量を増やすと大腸がんのリスク因子が減少する研究結果
●合法化から3か月、タイ政府が食品へのヘンプとCBDの使用規制を強化
●腸内細菌代謝物質のプロピオン酸が認知機能低下を促進する可能性
●エルダーベリーのポリフェノールがアッカーマンシア菌のレベルを高める可能性
●たんぱく質とプロバイオティクスによる食事療法がコロナ感染後のサルコペニア治療を改善

Regulatory News 法規制
●CJEU、FSMP規制に対する予備的判決を下す
●NMNをサプリメント定義から除外というFDAの判断に業界が猛反発

[今号のハイライト]
腸内細菌代謝物質のプロピオン酸が認知機能低下を促進する可能性

[2022/11/10] [nutraingrediens.com]

腸内細菌が代謝する物質、ポストバイオティクスが高齢者の認知機能低下を促す可能性が、フランスやスペインなどの研究で示唆された。特に、肉、乳製品、加工食品の摂取と関連するプロピオン酸濃度の増加と認知機能低下の促進との関連が指摘された。
食事、腸内細菌叢、そして中枢神経系間の相互関係は、近年、腸脳相関として知られ、その関係に焦点を当てた研究が盛んに行われている。特に、認知症やアルツハイマー病といった認知の加齢やそれに伴う疾患と腸内代謝物との関連を示唆するエビデンスが多く挙がってきている。

代謝物の候補としては、アントラニル酸、トリメチルアミンオキシド(TMAO)、コレステロール由来胆汁酸、短鎖脂肪酸(SCFA)などがある。ただ、研究者は、「食事および腸由来の代謝物の検出には高感度のメタボロミクスアプローチが必要で、これは、最新で最先端なものであるので、今のところ大規模なバイオメディカル研究にしか適用されていない。加えて、サンプルサイズや候補代謝物の数が少なく、こうした研究は制限されてしまう」と指摘する。
従って、今回の3都市の集団ベースコホート研究では、大規模定量的マルチメタボライトプラットフォームが使用され、206の食品関連代謝物、腸内細菌誘導体、および内因性代謝物の同時検出と定量化のためターゲットメタボロミクスを実施した。

研究者は、ターゲットメタボロミクスの206代謝物のうち腸内細菌叢を生成、あるいは影響すると考えられる72の代謝物に絞った。これには、芳香族アミノ酸とその誘導体、生物由来四級アミン、二次胆汁酸、ビタミンB群、SCFA、ポリフェノールの腸生体内変化由来代謝物などがある。
1999年に開始されたフランスの3都市研究は、認知症の血管危険因子を調べることを主目的とし、65歳以上で施設に入っていない高齢者9,294人を対象とした。3都市には、ボルドー(2,104人)、ディジョン(40931人)、モンペリエ(2,259人)が選ばれている。ベースライン時に、被験者と対面の面接を行い、社会人口学的データ、ライフスタイルおよび健康パラメータを採取した。さらに、血圧測定、空腹時血液検査も行い、被験者の受けている薬剤療法を記録した。そして、ベースライン時と各フォローアップ診療時に、認知テストを受けてもらった。ボルドーでは食品頻度調査や24時間想起といった栄養調査も実施している。
発見段階において、認知低下オッズに関連する食物および腸内細菌叢由来代謝物7つ、つまり3つのアミノ酸誘導体(フェニルアセチルグルタミン、インドール乳酸、キヌレン酸)、TMAO基質(ベタイン)、ビタミンB(パントテン酸)、SCFA(プロピオン酸)、ポリフェノール誘導体(3’,4’-DHPV-S)が選択され、このうち、プロピオン酸のみが検証段階で複製された。
各1標準偏差(SD)の場合、血清中のプロピオン酸濃度は増加し、認知機能低下のオッズ比は発見サンプルで40%だった。潜在的交絡因子の調整後、プロピオン酸は認知低下との有意な関連を維持していた。追加的な分析では、プロピオン酸は血糖と強く相関し(r=0.79)、肉やチーズ摂取とは相関(r>0.15)したが、食物繊維とは相関しなかった(r=0.04)。つまり、加工食品との関連が考えられるということである。

研究者は、この研究で、偽陰性のリスク、小規模なサンプルサイズなど幾つかの制限を指摘している。また、代謝物パネルも、腸-脳軸のすべての代謝物をカバーしきれていない。例えば、γアミノ酪酸(GABA)、アンモニウム、フィトエストロゲン、オリゴ糖など認知機能との関連が推測される一部の細菌叢由来代謝物の定量化も行われなかったことを挙げ、今後への期待を示した。本研究はNutrientsに掲載されている。

(会員向けニューズレター「GNGグローバルニュース2022年11月25日号」より抜粋)

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