こんにちは。GNGの武田です。

10月2日に、(国研)医薬基盤・健康・栄養研究所(以下、国立栄研)が「「新型コロナウイルスにビタミンDが効く」等の情報に注意」というタイトルでコメントを出しました。

コメントは「現時点では、インフルエンザに対して「ビタミンDが効く」といえる十分な情報は見当たりません。ましてや、新型コロナウイルス感染症に対して検討した論文は見当たりません。健康情報の拡大解釈にはご注意ください。」と締め括られています。

免疫系の働きにとって重要なビタミンD

一方、血液中のビタミンDレベルが低い人は、COVID-19に罹患するリスクが高い可能性があるとの報告が、「JAMA Network Open」9月3日オンライン版に掲載されました。
筆頭著者である米シカゴ大学のDavid Meltzer氏によると、「ビタミンD免疫系の働きにとって重要であり、ビタミンDサプリメントウイルス性気道感染症のリスク抑制することは、これまでにも報告されていた」といい、今回の研究の結果から、「この関係がCOVID-19にも当てはまる可能性がある」と述べています。

2020年3月3日~4月10日に米シカゴ大学医学部でCOVID-19のPCR検査を受けた人のうち、過去1年以内に血清ビタミンDレベルが測定されていた人のデータを基に、ビタミンD欠乏とCOVID-19罹患リスクとの関連を検討しました。
この期間にPCR検査を受けた人は4,314人、そのうちPCR検査から過去1年以内にビタミンDレベルが測定されていたのは489人でした。
489人中、PCR検査で陽性と判定されたのは71人(15%)でした。

多変量解析の結果、非白色人種であることと、ビタミンD欠乏が、有意な関連因子として抽出されました。
Meltzer氏は、「ビタミンD欠乏症治療することによりCOVID-19のリスクが変化するかどうかを、地域ごとに調査することが極めて重要と考えられる」と述べています。

また、米レノックス・ヒル病院のLen Horovitz氏はこの研究について、「ビタミンDが、免疫系において重要な役割を担っていることを示唆するもの」と述べています。そして、「適正な摂取量は個人の体格と日光曝露量によって決まり、簡単な血液検査で知ることができる」と同氏は説明しています。

Meltzer氏らは、最も有効なビタミンD補給戦略を明らかにする研究が必要だと考えており、研究グループでは既に、複数の臨床試験を開始しているとのことです。

ビタミンDとCOVID-19の関連性

この研究以外にも、COVID-19がパンデミックとなってから関連研究が数を増やす中、ビタミンDCOVID-19との有意な関連性示唆する論文が多く発表されています。
特に、血中のビタミンD濃度とCOVID-19との関係を指摘する研究が多くみられます。米国、韓国、インドネシア、イスラエル、トルコなど、多くの国が研究を進めています。

その中に、Northwestern University研究チームが報告したもので、中国、フランス、ドイツ、イタリア、イラン、韓国、スペイン、スイス、英国、米国の病院、クリニックから入手した4月20日時点のデータを統計学的に分析した研究があります。

この研究によると、イタリア、スペイン、英国などCOVID-19感染による死亡率が高い国の患者は、死亡率が低い国に比べ血中ビタミンD濃度が低いことが判明しました。研究者は「適正なビタミンDレベルを維持することは、COVID-19感染患者のサイトカインストーム(免疫システムの過剰反応で生じる過度の炎症状態)を抑制することで症状の重症化を低減する」と推測しています。

但し、同大学で研究チームを率いたBackman教授は「COVID-19禍でのビタミンDの最適な用量についてはほとんど分かっていない」と指摘しています。

気道感染症の予防

WHO(世界保健機関) が信頼できる情報源として紹介しているデータベースのナチュラルメディシン・データベース(NMDB)には、ビタミンDの有効性が数多く掲載されていますが、有効性レベル③(効果の可能性が科学的に示唆)の1つに「気道感染症」があります。

NMDBには「ほとんどの研究により,小児および成人がビタミンDを摂取すると,気道感染症の予防に役立つことが示されています。気道感染症には,インフルエンザ,感冒,感冒などの感染症から起きる喘息発作などがあります。」と記載されています。

NMDBには、成人の気道感染症予防にはコレカルシフェロール(ビタミンD3)として300~4,000IUを7週間~13カ月摂取、学童年齢の小児のインフルエンザを予防するには、冬季にビタミンD3を1日1,200IU摂取します。また、気道感染症に起因する気管支喘息症状の悪化を予防するには,コレカルシフェロール1日500IUを摂取します、と記載されています。

また、科学的根拠の要求レベルが高いとされている欧州食品安全機関(EFSA)認めるヘルスクレームの一つに「ビタミンDは免疫系の正常な機能に寄与します」があります。

日本と欧米で異なるビタミンDに対する評価

このようにビタミンDに対する評価は、日本と欧米とでは異なっています。
国立栄研が指摘するように、今現在はCOVID-19に対する有効性について明確な研究成果は出ていません。それらは、現在進行形なのです。
そして、血中ビタミンD(25(OH)D)濃度との関係性を示唆する論文は多く出ています。

国立栄研のように注意喚起のみでは、可能性の芽を摘んでしまう事になるのではないかと心配しています。
ポジティブな情報ネガティブな情報正確に公正に提供し、消費者自ら情報評価して、判断行動できるような環境作りの必要性を強く感じています。

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18年間の実務経験と16年間のコンサル経験を積み、34年間一貫して健康食品ビジネスに携わる。国内外600以上のプロジェクトを実施。「世界全体の中で日本を位置付け、自らのビジネスを正確に位置付ける」という「グローバルセンス」のもとに先行する欧米トレンドを取り入れたコンセプトメイキングに定評がある。世界各地にネットワークを築き上げ、情報活用サービス「グローバルニュートリション研究会」主宰。食品会社、化粧品会社、製薬会社の健康食品部門に対して、商品開発・マーケティング・海外進出などのコンサルティングを行っている。人が幸せに生きるためには健康が第一である。健康食品産業は「幸せ創造産業」である、という信念のもと、クライアントの成功を通じ、消費者に支持される業界を目指し、業界で働く人すべてが自分の仕事に誇りと自信をもてるようにしたいという想いから、業界健全化活動にも取り組んでいる。