乳代替品に乳製品の「模倣」は重要か、ほか|GNGグローバルニュース2023年8月25日号

こんにちは、GNGの和泉です。

8月25日号のグローバルニュースをお届けいたします。

今号では、プラントベース代替品における動物性製品を完全に模倣する必要性についての議論や、サステナビリティの重要性、これからの代替たんぱく質のイノベーションなど、プラントベース代替品に関連する記事を多く取り上げています。

また他にも、炎症性腸疾患(IBD)などの症状発症に口腔と腸の細菌叢が大きく関わる可能性を示唆する研究レビューや、女性の健康に関する複数の研究、欧州委員会が「プロバイオティクス」用語に関する規制の調和を図る作業部会の設置を検討、Mars社によるKevin’s Natural Foods社の買収、Sanofi社によるCoQ10ブランド「Qunol」買収など、様々な記事を紹介しています。是非ご確認ください。

今号で取り上げた記事のひとつである「次世代プロテイン:フレキシタリアンのZ世代にアピールする製品開発」では、Z世代(概ね1990年代中盤から2010年代序盤までに生まれた世代)の多くが成人年齢を迎える時期に差し掛かっていることから、この世代を大きなビジネスチャンスと捉え、彼らを取り込むための製品開発のヒントを提供しています。

記事の中で特に個人的に印象的だったのは、Z世代は他の世代よりも自身の健康を心配する傾向が強く、人生を最大限に楽しむことができていないことが示唆されたという米国精神医学会の調査結果です。ストレスの要因として、回答者の66%が「健康への懸念」を挙げたのに対し、18~21歳のZ世代では75%だったそうです。

少し古い情報になりますが、2016年に発行されたMinttel社の「消化器系の健康-米国」レポートによると、18〜24歳の10人に6人以上が毎年、消化不良、ガス・鼓腸、下痢、便秘に悩まされていると回答したそうです。米国の業界団体であるCouncil for Responsible Nutrition(CRN)が実施した2017年の消費者サプリメント調査では、Z世代が最も使用するサプリメントのトップ5に、食物繊維、プロバイオティクス、消化酵素が含まれていました。また、18~24歳のZ世代は植物性製品を好む傾向があり、24%が緑茶、13%がクランベリー、9%が高麗人参、ニンニク、エキナセア、6%がウコンまたはイチョウ葉のサプリメントを使用していると回答したそうです。

ターゲット層の行動特性を把握しマーケティング戦略を立てることの重要性がさらに増していると感じています。

皆様のビジネスのお役に立てますと幸甚です。

和泉 美弥子

この記事について

GNGでは、会員向けに世界各国の健康・食・栄養に関するニュースをセレクトし、日本語に要約したものを月に2回、ニューズレター「GNGグローバルニュース」として配信しています。

この記事では、その会員向けニューズレターの一部を抜粋してご紹介させていただきます。

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■GNGグローバルニュース 2023年8月25日号 トピックス

Market News マーケット
●乳代替品に乳製品の「模倣」は重要か
●次世代プロテイン:フレキシタリアンのZ世代にアピールする製品開発
●乳代替品メーカーのリーダーらはサステナビリティにどう向き合うか
●代替たんぱく質のイノベーションを探る

Products News 商品情報
●シンガポールのMoom Health社がPMSや月経痛緩和サプリメントのラインナップを拡大

Science News サイエンス
●食品加工レベルに対する消費者の認識はNOVA分類とほぼ合致
●RCT:ハーブブレンドのRhuleave-Kは月経痛を改善する可能性
●口腔と腸の繋がりはヒトの健康にとって「極めて重要な要素」
●ビタミンDは新型コロナウイルス感染入院患者の予後を改善する可能性
●コンブチャに含まれる乳酸菌は糖尿病患者の血糖値低下に有望

Company News 企業情報
●Mars社、Kevin’s Natural Foods社を買収
●Sanofi社、Qunolの買収に成功
●生成AIの時代:食品イノベーションの最適化と製品開発の促進を目指すAi Palette社

Regulatory News 法規制
●欧州委員会、「プロバイオティクス」用語の使用規制に関するEU作業部会設立を呼び掛ける

[今号のハイライト]乳代替品に乳製品の「模倣」は重要か

[2023/8/2] [foodnavigator.com]

乳代替品の目的は動物性乳製品の代わりとしての役目を担うことだが、味をそっくりに作る必要はあるのだろうか。
Foodnavigator のインタラクティブブロードキャスト「ProteinVision」では、乳代替品分野のリーダーが集まり、消費者が求める乳代替品について意見交換を行った。
「消費者は、従来の乳製品に味も食感もそっくりそのままの商品を求めている」と主張するパネリストもいれば、「味、食感にこだわらず、別の新しいものを作り出すことも必要」と述べるリーダーもいて、さまざまな意見が交わされた。
英国の代替乳スタートアップ企業、MIGHTY 社の創立者である Nick Watdkins 氏は「我々は従来のミルクに見た目、味、機能が似たものを提供しようとしている。プラントミルクを選ぶ消費者は 20%だが、従来のミルクを選んでいる残り 80%も引き入れる努力をしている」と話す。
同社のエンドウ豆ベースのプラントミルクは高たんぱく質で、その口当たりは従来のミルクと非常に近く、「MIGHTY 社にとって模倣は不可欠」と断じた。オランダの代替チーズメーカー、Willicroft 社のBrad Vanstone 氏も、模倣は重要という点に同意し「動物由来の従来品と同じ食感にすることに注力している」と述べた。
一方、ドイツを拠点とする代替乳メーカー、Vly 社の CEO である Nicolas Hartmann 氏は「模倣は単なるカテゴリーの一つで、ビジネスの核ではない」と話す。同社は消費者の嗜好を重視し、従来のミルクの味にこだわらない製品と、従来のミルクの味を模倣した製品の 2 種類を生産している。乳製品の模倣か、それとも新しいものを作り出すのか、その目的によって製品は根本的に異なるものになる。異なる消費者層をそれぞれ見据える際、優先すべきものが異なり、アプローチも異なる。
さらに一歩踏み込んで、代替チーズメーカー、Stockeld Dreamery 社の Sorosh Tavakoli 氏は、乳製品とまったく同じ味の代替品の必要性に疑問を呈している。
「我々が社内で議論しているのは、原材料やレンズ豆やヒヨコ豆の風味にどこまで誇りを持つべきか、ということだ。従来の乳製品とまったく同じ味を目指す場合、何が目的で、消費者にとっての価値は何なのかが見えなくなる。サステナビリティが推進力だと言われるが、これには非常に懐疑的だ。当社では多くの従業員が肉や乳製品を食べている」と意見を述べた。

(会員向けニューズレター「GNGグローバルニュース2023年8月25日号」より抜粋)

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