こんにちは、GNGの和泉です。
9月12日号のグローバルニュースをお届けいたします。
今号も海外の多彩な最新ニュースを取り上げています。ぜひご覧ください。
コーヒーの健康効果については長年にわたり様々な研究が行われ、コーヒーに含まれる抗酸化物質、ビタミン B、リボフラビン、カリウムなどが、脳卒中、認知症、不整脈などのリスク低下と関連することが分かっています。
そして今、砂糖入りコーヒーも注目されているようです。
Annals of Internal Medicine誌に掲載された新しい観察研究で、砂糖または人工甘味料を入れた甘いコーヒーおよび無糖コーヒーが、死亡率とどのように関連しているかが評価されました。
研究者らは、UK Biobankの心血管疾患(CVD)もしくはガンに罹患していない約17万人のデータを抽出し、2018年までの7年間の追跡期間中に、ガンによる1,725人の死亡、CVDによる628人の死亡を含む3,177人の死亡を記録しました。
その結果、加糖コーヒーを毎日1.5~3.5杯摂取していた参加者は、コーヒーを飲まない参加者に比べて死亡率が29~31%低いことが分かりました。
無糖コーヒーについても同様の効果を示し、コーヒーを飲まない参加者に比べて死亡率が16%~21%低いという結果でした。
なお、人工甘味料入りのコーヒーと死亡率の関連性については一貫性がありませんでした。
加糖コーヒーを好む消費者にとって良いニュースではありますが、調査の結果で示された加糖コーヒー1杯あたりの砂糖量は平均して小さじ1杯程度だったことに注意が必要です。
研究者らは、有名カフェの甘いコーヒー飲料(ラテ、カフェモカ、カプチーノ、アイスコーヒー飲料など)よりもはるかに少ないと警告しています。
上述の研究で使用されたのは英国のデータですが、Coffee Statisticsによると、米国人は 1 日あたり 4 億杯以上のコーヒーを消費し、約65%がコーヒーにミルクや砂糖を入れ、3千万人の米国成人が毎日甘いコーヒー飲料を飲んでいるのだそうです。
米国は世界有数のコーヒー消費国のひとつではありますが、コーヒーの健康効果よりも、糖質の過剰摂取に対する更なる対策が必要かもしれません。
和泉 美弥子
この記事について
GNGでは、会員向けに世界各国の健康・食・栄養に関するニュースをセレクトし、日本語に要約したものを月に2回、ニューズレター「GNGグローバルニュース」として配信しています。
本日配信したグローバルニュースでは、Stray Dog Capital社、代替肉・代替たんぱく質企業に投資、ノルウェーで細胞農業技術開発プロジェクト「ARRIVAL」が始動、政府機関が資金提供、スクラロースやサッカリンは腸内細菌叢を変化させ耐糖能に影響する:イスラエル研究、など15の記事を取り上げています。
この記事では、その会員向けニューズレターの一部を抜粋してご紹介させていただきます。
……グローバルニュートリション研究会 会員企業様は、会員サイトにて、すべての記事をお読みいただけます。
■GNGグローバルニュース 2022年9月12日号 トピックス
Market News マーケット
●Stray Dog Capital社、代替肉・代替たんぱく質企業に投資
●食事はパーソナライズへ:Nutrition Business Journal
●米国、ヘルシースナックとジャンクなスナックの売上が共に好調
●食と健康の関連性、理解度向上がパンデミック後の食品開発を活性化
●英国:細胞肉、遺伝子組み換え、肉の消費についての調査結果
Products News 商品情報
●ノルウェーで細胞農業技術開発プロジェクト「ARRIVAL」が始動、政府機関が資金提供
Science News サイエンス
●スクラロースやサッカリンは腸内細菌叢を変化させ耐糖能に影響する:イスラエル研究
●COVID-19に関するエキナセアエキスの抗ウイルス作用、信頼性増す研究報告
●「ベジタリアンは股関節骨折のリスクが33%高い」とする研究結果
●レジスタントスターチが豊富な豆・豆果がプレバイオティクスの選択肢となる
●DHAの濃度が高いほど集中力が高まることが判明
●ビタミンC、Dの摂取が新型コロナウイルス感染症の治療に役立つ可能性
●ブルーベリーが脆弱な人々の認知症リスク軽減に役立つ可能性
Company News 企業情報
●HelloFresh社、オランダでダイエット食ブランド立ち上げ
Regulatory News 法規制
●連邦取引委員会がCBD消費者に返金
[今号のハイライト]スクラロースやサッカリンは腸内細菌叢を変化させ耐糖能に影響する:イスラエル研究
[2022/8/19] [foodnavigator.com]
1カ月前、WHO(世界保健機関)は、スクラロースやサッカリンなどのノンカロリー人工甘味料の長期的影響について注意喚起するガイドライン草案を発表したが、さらに、人工甘味料の使用と代謝症候群の間には逆の因果関係が生じる可能性を示唆したイスラエルの研究が報告された。イスラエルのWeizmann Institute of Science研究チームは、「全てのノンカロリー人工甘味料が同じであるというわけではないが」と前置きしながら、一部の甘味料は腸内細菌叢を変化することによって、耐糖能に影響を及ぼす可能性を示唆した。
研究チームは、これまで非栄養人工甘味料の使用経験がない健康な成人120人を、ステビア、スクラロース、アスパルテーム、サッカリンのいずれか6包/日(1日の推奨量より低い)を摂取する4群、ブドウ糖のみを摂取する群、甘味料を補給しない群(対照群)の6群に割り付けた。被験者は、食事摂取記録や運動を行い、グルコースモニターを装着してもらった。
試験は、メタボリック、メタボロミクス、および微生物の各パラメータを測定するベースライン週、甘味料を摂取する2週間、追跡期間1週間の3段階で行われ、身体測定、血液検査、糞便検査などを定期的に受けてもらった。この結果、非栄養人工甘味料を摂取した群では、腸内細菌の組成および機能、さらに末梢血に分泌される分子にはっきりとした変化が認められた。
特に、サッカリンとスクラロース群では腸内細菌の数や種類に変動があり、耐糖能に有意な影響がみえた。この変化は、対照群では見られなかった。興味深いのは、腸内細菌の変化が血糖反応で示された変化と大きく相関していることだった。
これにより研究者は、「非栄養人工甘味料は不活性なものではなく、腸内細菌や分子に多面的な影響を与えるといえる」と説明している。血糖作用に関していうと、サッカリンおよびスクラロースを摂取した群には変化が見られたが、ステビアやアスパルテーム、対照群には認められなかった。
つまり、サッカリンとスクラロース、そして変化した腸内細菌で誘導される血糖反応は、群レベルで評価した場合、より顕著であることを示唆する。この変化が耐糖能に影響するかをさらに確かめるため、被験者から採取した糞便サンプルを無菌マウスに植え付けたところ、マウスの血糖値に変化が生じ、耐糖能が低下したことがわかった。
以上から研究者は、「非栄養人工甘味料が人の体内で不活性ではなく、その影響の度合いがどのくらいのものか、甘味料の使用を促進する上で研究を進める必要があり、証明されるまで安全であると評価すべきではない」と説明した。
専門家は、今回の研究で、
1)異なる甘味料が異なる代謝作用を起こし、中でもスクラロースとサッカリンは強い影響を及ぼす
2)すべての人が同じ反応を起こすわけではない。障害を受けずに、甘味料に忍容性がある人もいれば、耐糖能異常を起こす人もいる
3)耐糖能異常を生じる場合、その腸内細菌叢に変化が起こっている場合がある
4)無菌マウスに甘味料摂取した腸内細菌を移植したとき、そのマウスに耐糖能異常が生じ、因果関係を示した――ことが明らかになったとしているが、エリトリトールやアルロースについてはどうか、最も影響を受けやすい群はどういうものか、インスリンに対しどんな影響が出るかなど、いくつかの疑問が残ると指摘した。
今回の報告に対し、国際甘味料協会(ISA)などから、「ノンカロリー人工甘味料が血糖コントロールに有害な影響を与えないとする、多くのRCT(無作為化対照試験)の臨床分析や系統的レビューがある。甘味料が人の腸内細菌叢を変えるといった説を裏付ける明確な臨床試験やRCTはない。
さらに、長期的基準の血糖コントロールマーカーである、HbA1cなどのマーカーが、低/ノンカロリー甘味料の影響を受けないことを示唆する研究も多い。腸内細菌叢に影響を与える決定要因は特定の食事などでも考えられる。腸内細菌に関しては完全に分かっているわけではなく、腸内細菌叢は日々、変化している。
世界の規制機関は、多くの科学的証拠を基に、承認しているのだ」が出ている。本研究はCellに掲載された。
(会員向けニューズレター「GNGグローバルニュース2022年9月12日号」より抜粋)
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和泉 美弥子
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