海外から見た日本の機能性表示食品制度|ウェルネスフード・ワールド第94回

こんにちは、GNGの和泉です。
7月のウェルネスフードワールドをお届けします。

今月は、日本の機能性表示食品が海外メディアでどのように伝えられているかを、一部GNGによる補足や考察を交えてご紹介したいと思います。

海外から見た日本の機能性表示食品制度

日本の機能性表示食品制度は当然海外からも注目されており、海外メディアでも、その動向が定期的に紹介されています。そして先日、2020年度の機能性表示食品の動向についての記事がNutraingredients-Asia(*1)によって配信されました。

同記事によると、日本の機能性表示食品届出数は、2020年4月から2021年3月までの1年間で1,067件(*2)に上りました。
これは機能性表示食品制度が開始された2015年4月1日以来、1年間の届出としては最多となります。
この後にも記載していますが、機能性表示食品は特定保健用食品(トクホ)とは異なり、国の許認可制ではありません。
(GNG注:機能性表示食品の場合、差し戻しがない場合に限りますが、消費者庁への届出から公表まで約50日というスピードで公表されています。一方、トクホは一般的に申請から国の認可が下りるまで平均で4~5年を要しており、莫大な費用がかります)

【GNG補足】

機能性表示食品制度とは(消費者庁HPより):
「国の定めるルールに基づき、事業者が食品の安全性と機能性に関する科学的根拠などの必要な事項を、販売前に消費者庁長官に届け出れば、機能性を表示することができる制度です。特定保健用食品(トクホ)と異なり、国が審査を行いませんので、事業者は自らの責任において、科学的根拠を基に適正な表示を行う必要があります」

上記で述べられている科学的根拠とは、届出された最終製品のヘルスクレームの根拠となる、最終製品を用いた臨床試験(ヒト試験)(RCT)または最終製品又は機能性関与成分に関する研究レビュー(SR)のことを指します。

Nutraingredients-Asiaの記事によると、2020年度に届出された製品ほとんどがSRで評価を行っています(95.5%)。RCTで評価されたのは43製品(4%)のみで、前年度の6.8%と比べ減少しています。
そして2020年度、単一成分として最も届出数が多かった成分は”GABA”でした。他に届出が多かった成分としては、”難消化性デキストリン”、”ブラックジンジャー由来ポリメトキシフラボン”、”イソマルトデキストリン”などが含まれます。

また、同記事によると、2015年の機能性表示食品制度開始当初、届出された製品のほとんどはサプリメント形状の加工食品でした。しかし、2020年度に届出された1,067製品のうち、サプリメント形状の加工食品が578、加工食品450、生鮮食品39と、加工食品カテゴリーが増加しています。
(GNG注:生鮮食品カテゴリーも急成長しています。2019 年12月末までの届出総数は約 60 件だったのに対し、2020 年12月末には93 件に達しています)

2020年度に届出された製品のヘルスベネフィット人気があったのは、食後血糖値上昇抑制、腸の健康、脂肪の減少および抑制、肌の健康、血圧、血中コレステロール低減で、生活習慣病に関連するベネフィットが多くを占めています。
(GNG注:長引くCOVID-19(コロナ)の影響による「コロナ疲れ」、リモートワーク導入などで生活リズムが崩れたことによる睡眠の質の低下に悩む人が増加していることから、GNGではストレスおよび睡眠サポート分野にも注目しています)

同記事でも述べられていますが、2020 年の最大の注目点は、「日本初」の機能性表示食品が数多く届出公表されたことです。
最も話題になったのは免疫機能に関する機能性表示食品の誕生です。8 月 7 日、キリングループから免疫機能第一号となる機能性表示食品(機能性関与成分:プラズマ乳酸菌(L. lactis strain Plasma))の届出が公表されました。
さらに、GABAのヘルスベネフィットについても取り上げられています。
7月10日に届出された日本コカ・コーラ株式会社の「からだおだやか茶W(ダブル)」(機能性関与成分:GABA)は、認知機能の一部である、記憶力の向上を訴求しています。GABAのヘルスベネフィットはこれまで、血圧、ストレス、睡眠、活気・活力感、肌の健康がありましたが、認知機能としては初めての届出です。
(GNG注:その他の例として、9 月 2 日には、帝人株式会社の「発酵するナチュラルイヌリン」の届出が公表されました。『発酵』という言葉をヘルスクレームに組み込んだ機能性表示食品は、これが初となります)

機能性表示食品制度では、科学的根拠がある場合に限り、身体の特定の部分を対象とするヘルスクレームを表示することができますを行うことができます。Nutraingredients-Asiaは「消費者は単に”内臓脂肪を減らす”と表示された製品より、”腹部の周りの脂肪を減らし、BMIを改善する”」といった具体的な表現を表示した製品を選ぶ傾向がある」と述べています。
(GNG注:内臓脂肪については、「内臓脂肪(おなかの脂肪)」と具体的に表示されている商品も多いです)

【GNG補足】事後チェック指針

消費者庁は2020年4月1日から「不適切な表示に対する事業者の予見可能性を高める」とともに「事業者による自主点検及び業界団体による自主規制等の取組の円滑化を図る」ことを目的とした『機能性表示食品に対する食品表示等関係法令に基づく 事後的規制(事後チェック)の透明性の確保等に関する指針』(以下、事後チェック指針)の運用を開始しています。
『事後チェック指針』には、科学的根拠として明らかに適切ではないと判断される事例のほか、広告その他の表示において問題となる恐れのある事例も含まれています。
その中で、一般消費者が、その製品を摂取するだけで身体の悩みが解消すると誤認するような表現は、景品表示法上問題となるおそれがあると示されています。また、同指針の「打消し表示」の項目では体験談についても触れています。広告その他の表示において体験談を使用する場合は特に確認が必要となり、表示にはさまざまな注意が必要です。
さらに科学的根拠において、一般社団法人健康食品産業協議会などの 4団体が機能性表示食品の届出で生じた疑義について評価する第三者機関「エビデンスレビュー評価委員会」が設置され、機能性表示食品制度の運用における透明性の向上を図っています。

海外で紹介された機能性表示食品に関する研究

もう一つ、こちらは少し前の記事になりますが、2020年7月に配信された、同じくNutraingredients-Asiaによる「日本の機能性表示食品における血圧管理に関する製品は、すべてのヘルスクレームを表示していない」もご紹介します。

同記事は、製品ラベルに記載されたヘルスクレームと、本来は表示できるにもかかわらず戦略的な理由から表示されていない別の潜在的ヘルスクレームを持つ機能性表示食品について調査した研究について伝えています。
この研究は、2015年4月1日から2018年7月20日までの間に届出された1,310の機能性表示食品を分析したものです。
研究者らは、全ての製品を22のヘルスクレームに分類し、製品の機能性関与成分と実際に表示されているヘルスクレームを調査しました。さらに機能性物質リストに基づき、表示できるにもかかわらず届出されていない別の潜在的なヘルスクレームを特定しました。

その結果、潜在的なヘルスクレームを持つ機能性表示食品で最も多かったのは血圧(79.5%)に関連する製品でした。続いて血中中性脂肪の減少(75%)、食後血糖値の上昇の抑制(73.4%)が続き、潜在的なヘルスクレームを持つ製品の多くは、生活習慣病に関連していることが判明しました。
対照的に、肌の健康、認知機能、目の健康に関する製品の多くは、全てのヘルスクレームを表示していたことが判明しました。
研究者らは、「機能性表示食品の表示内容の不一致は、消費者による特定の成分の意図しない大量摂取を引き起こす可能性がある」と述べています。
(GNG注:潜在的なヘルスクレームについては、被験者に軽症者が含まれている場合は科学的根拠に出来ない等の理由も考えられますので、一概には言えないと思われます)

研究者らは、その上で、機能性物質の科学的根拠を含む有効性情報の総合データベースの構築と公開を推奨しています。
日本には国立医薬基盤・健康・栄養研究所による「健康食品」の安全性・有効性情報データベースはありますが、健康食品とそれ以外の製品の両方に含まれる有効成分の総摂取量を確認できる機能はありません。(GNG注:機能性関与成分には一日当たりの摂取目安量を明記することが義務付けられています)
研究者らは、総合データベースの構築と公開により、消費者は機能性関与成分の有効性情報に簡単にアクセスできるようになり、健康増進のための正しい情報に基づいた最適な選択を行う能力が向上する可能性がある、と結論付けました。

なお、研究者らはこの研究の限界として、各製品に含まれる機能性関与成分の含有量を考慮していないことを追記しています。しかしながらこれは、製品ラベルに記載されたヘルスクレームと、本来は表示できるにもかかわらず表示されていない別の潜在的ヘルスクレームを持つ機能性表示食品についての研究として最初のステップであるとしています。

今後の課題

機能性表示食品市場は、COVID-19禍で培われた消費者の健康志向を追い風に今後も拡大していくと予測されています。
新たな機能性表示食品の開発には、『機能性表示食品の届出等に関するガイドライン』『質疑応答集』、『事後チェック指針』等を活用し、消費者が安心して選択することができるようにするため、機能性表示食品制度の運用における透明性向上が、重要な課題であると考えます。

*1 Nutraingredientsとは:ダイエタリーサプリメントおよび機能性食品に関する欧州、米国、アジア・オセアニアのニュートリション業界を網羅した、世界各国の最新ニュースを配信する世界的なオンラインメディアです。同業界における投資、開発、成分、食品科学から消費者動向および規制問題、新技術、新製品情報に至るまで、さまざまな最新ニュースを日々提供しています。
*2 GNG確認済み

皆様のビジネスに少しでもお役に立てましたら幸甚です。

和泉 美弥子

<GNG研究会について>

GNG研究会では、過去十数年にわたるニューズレターのバックナンバーを会員ページにてすべて公開しています。

そして、例えば「免疫」、「プロテイン」、「乳酸菌」、「腸内細菌叢」など特定のキーワードで過去の記事を見出し検索できるので、トレンド把握に役立ちます。

皆様のウェルネスフードビジネスに少しでもお役に立てましたら幸いです。

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