こんにちは、GNGの有松です。
今、更年期のヘルスケアが大きな注目を集めています。
Nutrition Bussiness Journalによると、米国における「女性の健康」サプリメント市場は24億4,000万ドル、更に「更年期障害」対応サプリメント市場は9億3,100万ドル市場とされており、多くの企業が女性の健康に注目しています。
NAMS(The North American Menopause Society)は、「更年期障害」対応サプリメント市場は2022年から2030年にかけて年間5.29%で成長し、2025年までに世界で10億人が更年期を迎えると予測しています。
現在、更年期障害の治療はホルモン補充療法(HRT)が治療の第一選択となっていますが、HRTに伴う副作用を避けるため、プラントベースの食事やサプリメントなどの代替品を望む女性が増えています。
■働く女性の更年期離職
個人差はあるものの、女性の場合、平均閉経年齢(50〜55歳)の5年間に体力の低下や精神的な落ち込み、睡眠障害、体の痛みなどの更年期症状に悩む女性は多く、働く女性にとっては大きな試練となります。更年期症状が原因で離職した女性は46万人、男性では11万人に上ると推計されています。
また、離職によって収入が減ったことによる経済損失は女性で年間およそ4,200億円、男性で年間およそ2,100億円とあわせて6,300億円に上ることが分かりました。(NHK調査「更年期と仕事に関する調査2021」2021年7月調査)
女性の離職による経済損失は男性の2倍となっています。
さらに、米国の更年期女性に対する大規模調査によれば、寝汗の深刻さと労働生産性の間には負の関連性があることが分かっています。
■更年期障害の症状
「更年期」は一般的には45歳~55歳あたりと考えられていますが、個人差もあり、心や体の変調がみられる時期も人により異なります。
代表的な症状として、
・自律神経失調症状:顔のほてり、のぼせ、異常発汗、めまい
・精神神経症状 :倦怠感、うつ、不眠、頭痛
・皮膚・分泌系症状:皮膚や粘膜の乾燥、湿疹、発汗、ドライマウス、ドライアイ
・消化器系症状 :食欲不振、吐き気、便秘、下痢、腹部膨満感
・運動器官系症状 :肩こり、腰痛、関節痛、手のこわばり、手足のしびれ
があります。
■更年期症状は食事で軽減できるか
BNF(British Nutrition Foundation)の研究では、地中海食がホットフラッシュ(顔、首、胸の突然の熱さや冷たさの感覚)や寝汗などの血管運動症状などの短期的な更年期症状の一部を改善するのに役立つとされています。また、ビタミンB6(ホルモン活動の調節をサポートする)、カルシウム・ビタミンD(閉経後の骨密度の低下を軽減する)、亜鉛(皮膚、髪、爪の維持に貢献する)が更年期障害をサポートするとしています。
反対に、コーヒー、アルコール、スパイシーな食べ物は、更年期障害の症状を悪化させる可能性があり、ほてりや寝汗などの症状を引き起こすため控えた方が良いとされています。
また、大豆を十分に食べることで、更年期のホットフラッシュを軽減する効果があるということについてはご存じの方も多いと思います。日本には、納豆や味噌といった大豆の発酵食品が豊富にあります。米ジョージワシントン大学医学部が、NAMSの刊行誌「Menopause」に発表した研究では、大豆を多く含むプラントベースの食事は中程度から重度のホットフラッシュを1日5回近くから1回未満に84%減少させることを明らかにしました。同研究では、ホルモン薬は使用せず、代わりに低脂肪のプラントベースの食事と、サラダやスープに加えた1/2カップの普通の大豆を組み合わせて毎日テストをしました。これまでの研究で、ベジタリアンやビーガンの食生活を送っている人は、エクオール濃度が高いことが示されていますが、同研究では、植物ベースの食事と大豆を併用することで、より強固な反応が示されたとのことです。
■自然療法
NAMSは、ホットフラッシュに対する自然療法として、ブラックコホシュやレッドクローバーを挙げています。ブラックコホシュは北アメリカ原産のハーブで、欧州では医薬品として販売されており、米国や日本国内ではサプリメントとして販売されています。ほてりに対しての効果が期待されているため、科学的に注目を集めています。しかし、海外では健康被害の報告もあることから、日本では厚生労働省が「指定成分等」に指定し、注意を呼びかけています。その他、中国医学で伝統的に使用されてきたドンクアイや高麗人参、月見草オイルなどがありますが、更年期障害の症状に有用であると示すエビデンスは十分ではありません。
韓国の研究ではコイケマ(Cynanchum wilfordii Hemsley)、ヒカゲキセワタ(Phlomis umbrosa Turczaninow)、オニノダケ(Angelica gigas Nagai)の3種のハーブを組み合わせたホルモンフリーのプラントベースサプリメント、EstroG-100の安全性と有効性を調査したところ、体重増加や内臓・循環・代謝の変化といったホルモン療法の典型的な副作用がなく、更年期障害に有効であることが明らかになりました。配合されている3種のハーブは韓国の民間伝承両方で長く使用されてきたものです。(2023年5月23日Nutraingredients-USA記事)
最近では、2023年5月13日、アステラス製薬株式会社が、更年期障害向け治療薬「fezolinetant」について、閉経に伴う中等度から重度の血管運動神経症状(VMS)の治療薬として米国食品医薬品局(FDA)から承認を取得したと発表しました。欧州やオーストラリアでも承認を申請しており、同治療薬は非ホルモン治療薬で、更年期障害に伴う症状(顔のほてり・のぼせ等)に対する新たな選択肢となる可能性があります(2023年5月13日 アステラス製薬株式会社 プレスリリース)。
2022年の総務省統計局「労働力調査」によると、45~54歳の女性の就業率は79.4%となっています。2022年4月からは女性活躍推進法も改正となり、労働力として期待される世代です。更年期障害はすぐに症状が緩和するとは限らず、発症しないようにコントロールする事が難しいのが特徴です。日々、子育てや仕事などで忙しい世代にとって、食事の栄養バランスやサプリメント、定期的な運動や休息など、取り入れやすい改善方法が求められています。Natural Products Expo West 2023においても更年期の女性のために作られたエナジーバーや更年期障害の緩和を提供するナチュラル素材のオーガニックティーなどWomen’s Wellness製品の出展が目立ちました。セルフケアのための健康食品、副作用のない治療法や医薬品など、今後さらに選択肢が広がることを期待したいと思います。
皆様のビジネスに少しでもお役に立てましたら幸甚です。
(株)グローバルニュートリショングループ 有松 志寿子
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有松志寿子
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