米国のオーガニック市場:オーガニック食品を考える|ウェルネスフード・ワールド第97回

こんにちは、GNGの和泉です。
10月のウェルネスフードワールドをお届けします。

オーガニック食品産業は活況を呈しているビジネスです。
2020年、世界最大のオーガニック大国である米国市場は、619億ドルに達したそうです。
消費者はこれまで以上に健康志向になっており、自分たちがより良いと感じるものに対しては、より多くのお金を払っても構わないと思っています。

しかし、「オーガニック」とは実際はどのようなものなのでしょうか。
オーガニック食品の扱いは国によってさまざまですが、今回はオーガニック食品産業の最大市場である、米国を取り上げてみました。

オーガニックとは

米国農務省(USDA)のNational Organic Program (NOP) では、オーガニックの定義を以下のように定めています。「オーガニックとは、認可された手法で生産された食品、あるいはその他農業製品のことを指す、表示用の用語である。その手法とは、資源の循環を育み、生態系のバランスを整え、生物多様性を保護することが可能な、文化、生物、機械を使用して行う農法を取り入れたものである。合成肥料や下水汚泥、放射線照射、遺伝子操作は使用してはならない。」

USDAオーガニックと認定されるためには、主に以下の規定に従う必要があります。
少し長くなりますが、以下に記載しますのでご参照ください。

【農作物】

・オーガニック農産物を収穫する前の少なくとも3年間は禁止物質使用していない土地であること。

・土地の肥沃度や作物の栄養素の管理には、耕うん・耕作、輪作、被覆作物の栽培、動植物性老廃物や認可された合成物質による補填といった方法を活用する。

・害虫、雑草、疫病管理には、主に物理的、機械的、生物学的な防除方法を用いる。こうした手法が不十分な時のみ、国が認めている生物、植物、合成物質を使用することができる。

・事業者は、入手可能な場合、オーガニック種子やその他の植え付け材料を使用しなければならない。

・遺伝子操作、電離放射線、下水汚泥の使用は禁止。

【家畜と家禽】

オーガニックであると販売、表示する、食肉、ミルク、卵、およびその他の動物性製品に使用される家畜には、以下の要件が適用されます。

・食肉用の家畜は、3世代前から(鶏肉の場合は、生後2日目以降から)、オーガニックな管理のもとで育てられなければならない。

・生産者は家畜に100%オーガニックの農業用飼料を与えなければならないが、許可されたビタミンやミネラルサプリメントを与えることもできる。

・牛乳や乳製品をオーガニックとして販売、表示するためには、少なくとも12ヶ月間、乳牛をオーガニックな管理のもとで育てなければならない。

・家畜の健康維持のため、予防医療を行わなければならない。生産者は、病気や怪我をした家畜の治療を見合わせてはならないが、使用禁止物質で治療された動物は、オーガニックとして販売することはできない。

・反芻(はんすう)動物は、放牧シーズン中120日以上牧草地に放牧しなければならない。また、飼料または乾物摂取量(DMI)の少なくとも30%は、牧草地から摂取する必要がある。

・すべてのオーガニック家畜と家禽は、年間を通して自由に屋外に出ることができなければならない。家畜を一時的に閉じ込めることができるのは、環境面や健康面での配慮が文書化されている場合に限る。

【取扱基準】

合成・非合成を問わず、すべての非農作物原料は、「National List of Allowed and Prohibited Substances(国が定める認可合成物質リスト・禁止非合成物質リスト)」に含まれていなければならない。

・「オーガニック」と表示された複数の原料を含む製品は、すべての農作物原料がオーガニックで栽培されたものでなければならない。ただし、その原料がオーガニックの形で市販されておらず、国が定める認可原料リスト(205.606項)に記載されているものはその限りでない。

・取扱者は、オーガニックと非オーガニック製品との混在を防ぎ、オーガニック製品が禁止物質と接触しないよう保護しなければならない。

【複数の原料を含む製品の表示】

・95%以上の認証済オーガニック原料を含む製品は、最終製品パッケージに、オーガニック表示、USDA認証マークを貼付できる。

・70%以上(95%未満)の認証済オーガニック原料を含む製品は、「made with organic」と表示される。最終製品パッケージにUSDA認証マークを貼付することはできない。

・70%未満の認証済オーガニック原料を含む製品は、原材料リストで特定の原料がオーガニックであることを記載することができる。最終製品パッケージにUSDA認証マークを貼付することはできない。

※100%認証済オーガニック原料を使用している製品の場合、「100%オーガニック」表示およびUSDA認証マーク貼付が可能となります。

オーガニック食品は一般食品より健康的なのか?

これはすでに様々なメディアで議論されていますが、改めて考えてみたいと思います。

USDAが2012年に発行したレポートには、オーガニック食品は有害重金属の含有量、残留農薬が少ない安全な食品であると述べられています。
さらに、オーガニック栽培された野菜や果物などの農産物には一般の農産物と比べて20~40%高い抗酸化物質が含まれており、オーガニックの牛肉、卵、乳製品には、体に良いオメガ3脂肪酸が多く含まれているという研究結果もあります。
オーガニック食品は一般食品よりも健康に良い、と信じている消費者も多く存在しているようです。Pew Research Centerによる2016年の消費者調査によると、オーガニック食品を購入する理由として、76%の消費者が「健康のため」、33%が「環境問題」、22%が「便利だから」と回答しました。2018年の調査では、米国の成人の約45%が「オーガニック農産物はそうでないものと比べて体に良い」と回答しています。

しかしながら、オーガニックであることが必ずしも健康を主張するものではないかもしれません。
2020年1月に学術誌Nutrientsに掲載されたシステマティックレビュー(系統的レビュー)の中で、研究者らは「オーガニック食品を購入している消費者は、一般的に動物性食品よりも植物性食品を多く摂取する傾向がある。このような食事パターンは、西洋型の食事と認識される食事パターンよりも大きな健康上のベネフィットがある可能性がある。したがって、オーガニック食品の摂取によるベネフィットとされているものは、より健康的なライフスタイルも関連している可能性がある」と述べています。
この研究は、オーガニック食品が実際にヒトの健康に関連しているかを、ヒト試験、観察研究を含む35の研究論文を基に評価したものです。
研究者らは、「いくつかの観察研究では、オーガニック食品の摂取によるメタボリックシンドローム、高BMI、アレルギー、中耳炎、子癇前症などの発症率の低下等、有意で前向きな結果が示されたが、現時点のエビデンスでは、オーガニック食品の摂取による長期的な健康上のメリットについて決定的なことは言えない」と結論付けています。
つまり、もともとプラントベース食品を多く食べるようなライフスタイルが健康に関連している可能性があり、オーガニック食品が一般食品より健康的かどうかを判断するにはさらに多くの良質な研究が必要ということなのです。

食品安全上の問題としては、前述の通り、オーガニック食品は有害重金属の含有量、残留農薬が少ない食品です。
しかしながら農産物の場合、パイナップル、トウモロコシ、アボカド、玉ねぎなどの皮が厚い、または食べられない食品の可食部には残留農薬がほとんど含まれず、特にオーガニックである必要はないと言われています。
第三者機関のEnvironmental Working Groupは、農産物の残留農薬を懸念する米国消費者のために、残留農薬が最も多い食品リスト(Dirty Dozen)、最も少ない食品リスト(Clean Fifteen)を毎年更新し、ウェブサイト上で公表しています。
このリストは、毎年実施されるUSDAおよび食品医薬品局(FDA)による46,000を超える農産物の残留農薬量テスト結果に基づいた、果物と野菜の残留農薬レベルをランク付けしたものです(※)。

※日本と米国では栽培環境、使用する農薬の種類や量などが異なります。あくまで参考までにご覧ください。

米国オーガニック市場の成長

業界団体のOrganic Trade Association によると、米国のオーガニック食品総売上高は2020年に急増し、2019年と比べて12.4%増619億ドルに達しました。
米国のニュースネットワークCNBCが報じたところによると、2021年2月時点で、米国では20,000店舗の自然食品店、75%近くのスーパーマーケットでオーガニック食品が販売されているそうです。そしてUSDAのデータによると、米国の食品総売上高のうち、4%がオーガニック食品で占められています。

この成長は、COVID-19禍で消費者の健康意識が高まったことが大きな要因であることは間違いありません。
ただし、COVID-19パンデミックが始まる以前からオーガニック市場は成長し続けています。
その理由として、食の安全性や環境問題を懸念する消費者が増加していることに加え、一般食品とオーガニック食品との価格差が縮まったことが考えられます。
調査会社Nielsen社のデータによると、2014年の一般食品とオーガニック食品との価格差が27セント(オーガニック食品価格が一般食品価格より平均27セント高い)であったのに対し、2018年は24セントまで縮まっているそうです。

オーガニック食品価格が下がった理由として考えられるのが、化石燃料の高騰です。一般的な農薬や化学肥料は化石燃料を使用しているため、一般の食品価格も高騰したことが理由の一つとして考えられます。
さらに、大手スーパーマーケットチェーンがプライベートブランドとしてオーガニック市場に続々と参入し、価格競争が起こったことも大きな理由として考えられています。

今後もますます成長が予測される米国のオーガニック市場ではありますが、CNBCが報じた中で専門家は、「米国人は、必要とされる新鮮な野菜や果物量の10分の1しか消費していない」と警鐘を鳴らしています。

これについては、2017年の米国疾病予防管理センター(CDC)による調査レポートで報告されています。特に男性、若年成人、および貧困層の人々の消費量が少なかったそうです。

価格差が狭まってきたとはいえ、オーガニックの野菜や果物が高価であることに変わりはありません。

高価なオーガニック農産物にこだわって少量食べるよりも、地元農家や市場でたくさんの種類の新鮮な野菜や果物を購入し、楽しみながらたくさん食べることが、私たちの長期的な健康に繋がっていくのかもしれません。

皆様のビジネスに少しでもお役に立てましたら幸甚です。

和泉 美弥子

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そして、例えば「免疫」、「プロテイン」、「乳酸菌」、「腸内細菌叢」など特定のキーワードで過去の記事を見出し検索できるので、トレンド把握に役立ちます。

皆様のウェルネスフードビジネスに少しでもお役に立てましたら幸いです。

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