こんにちは、GNGの武田です。今回の健康食品ワールドでは、3月4日から米国カリフォルニア州アナハイムで開催される予定だったNatural Products Expo West 2020のご報告をしようと考えていましたが、渡米前日に開催延期の連絡があり、米国出張を見合わせました。
そこで今回は、近年のグローバルトレンド(米国-アメリカ、欧州-EU、ヨーロッパ、ASEAN-東南アジア諸国連合)のご紹介をさせて頂く事にしました。
米国ニュートリション市場をけん引する上位トレンドとは?
近年の米国ニュートリション市場のトレンドは複数の要素が絡み合っており、相反する二つのトレンドが生まれています。
米国ニュートリション市場トレンド|プラントベース
一つはプラントベースニュートリションです。近年、好調に推移している米国スポーツニュートリション市場の中でも植物由来のプロテインパウダーの商品化が活発化しています。原料は主にエンドウ豆(ピープロテイン)、玄米、大豆、チアシードなどを使用しており、グルテンフリー、オーガニック、ビーガン、Non-GMOを冠した商品が多くなっています。
プラントベース、商品形態やターゲットは種々様々
プロテインパウダー、プロテインバー、チップス、飲料、レトルト食品など多種多様な商品で「植物性プロテイン配合」を訴求しています。
プロテイン市場は、近年好調なスポーツニュートリションに加え、毎日の健康的な食事をサポートする健康素材としてプロテインを摂取するという認識が広がり、様々なユーザーをターゲットに商品開発が活発化、市場が拡大しています。
更に、“Non-dairy(ノン・デリー、乳製品不使用)”、“Dairy-free(デリー・フリー)”商品市場も好調です。豆乳は既にコモディティとなって久しいですが、近年はアーモンドミルク、ライスミルク、カシューナッツミルクなど新しい乳代替品が人気です。
また、肉代替品も多様化し、味も美味しい商品が増えています。
米国ニュートリション市場トレンド|動物性プロテイン
一方で、プロテイン人気に連動して動物性のプロテインも人気です。牛、豚、鶏の骨を野菜やスパイスと共に長時間煮込んで取ったスープ(だし汁)であるブロススープ(ボーンブロススープ)がトレンドとなっており、新たなプロテイン摂取源として新商品も多数発売されており、 米国では2014年以降から徐々に認知され始めています。
先週アップしたこちらの記事でも、ボーンブロススープについて取り上げました。
プレミアム直販で躍進するボーンブロスブランドは複数ベネフィットを訴求、ほか|NNBマガジン2020年2月号
乳代替プロテインとして、卵プロテイン(エッグプロテイン)も注目されています。動物愛護の観点から平飼いされた(ケージフリー)雌鶏のオーガニック卵黄プロテインパウダー、卵白パウダーが商品化されています。
また、高プロテインで人気となったギリシャヨーグルトは既に定番化しています
このように、植物性と動物性、相反する二つのトレンドが動いています。
米国ニュートリション市場トレンド|プロバイオティクス
プロテインと合わせて人気が高いのはプロバイオティクスです。特にサプリメント分野での成長が著しく、米国のプロバイオティクスサプリメント市場は、近年急成長しています。
プロバイオティクスは、整腸のみならず、免疫、美容、女性の健康、心臓の健康などを目的にサプリメント、機能性食品両カテゴリーで活発な商品化がなされており、2023年までは年率6.5%以上の成長率で65億ドル市場(プロバイオティクス全体)になると予測されています(Global Market Insights Inc)。
米国サプリメントトレンド注目株は「美容」と「ブレインヘルス」
アメリカにおけるサプリメントの注目すべきトレンドは「美容」と「ブレインヘルス」です。「内外美容」のコンセプトが消費者に浸透し、「コラーゲン」を中心に美容訴求市場が活発化しています。これまで、コラーゲンといえば「関節の健康」でしたが、コラーゲンを中心とした美容訴求のサプリメントが新商品として市場に投入されています。
米国のブレインヘルスサプリメント市場は2010年代前半も堅調に推移しているものの、2014年以降は二桁増となり、市場は急拡大しています。
このカテゴリーは「スマートドラック」とも呼ばれ、大きなトレンドとなりつつあります。
欧州ニュートリション市場の注目トレンド
次に、近年の欧州の注目トレンドについて述べたいと思います。
近年の欧州ニュートリション市場における注目トレンドは、以下の通りです:
- プロバイオティクス
- 脳の健康(ブレインヘルス)
- コラーゲン
- スポーツニュートリション
1.プロバイオティクス
一昨年の展示会場では「マイクロバイオーム(microbiome、腸内細菌叢)」という表示が目立ちました。プロバイオティクスの訴求ポイントが、これまでの整腸、免疫のみならず、口腔の健康、上気道炎の罹患リスク減少、スポーツニュートリション、グルテンの消化のサポート、美肌まで非常に多岐にわたっており、数多くのプロバイオティクス原料が展示されていました。
2.脳の健康(ブレインヘルス)
ブレインヘルス素材は独自性のある素材で、ターゲットは高齢者のみならず、学生や勤労者の勉強や仕事のパフォーマンスを上げるための学習力、集中力や注意力の向上(生産性向上)やメンタル全般(ムードサプリ)など、ターゲット層も訴求領域も日本と比べ幅広いと思います。
3.コラーゲン
コラーゲンは美肌とスポーツニュートリション(関節、腱)訴求の出展が目立っていました。
EFSAヘルスクレーム指針では、皮膚に関するヘルスクレームとして
1.コラーゲン生成に関する表示
2.皮膚の機能の維持に関する表示
A)乾燥から皮膚を保護する表示
B)(紫外線誘発を含む)酸化損傷から皮膚を保護する表示
C)紫外線誘発(その他の酸化)損傷から皮膚を保護する表示
が可能とされていますので、日本の機能性表示食品より多様な商品展開が期待されます。
また、スポーツニュートリション訴求のコラーゲンペプチドは、靭帯と腱の健康を訴求していました。同原料を摂取することで柔軟性が高まり、けがのリスクを低減することが新しい研究で示唆されており、さらなる研究が進行中です。
4.スポーツニュートリション
成長著しいスポーツニュートリションでは、米国同様プラントベース(植物由来)のプロテインが注目されています。
新製品として紹介され、Nutra Ingredients Awards 2018を受賞したマンゴーの葉抽出物はカフェイン代替品として注目を集めていました。
欧州のニュートリショントレンドはオーガニック、ビーガン、ナチュラル
オーガニック、ビーガン、ナチュラルがトレンド上位
欧州の業界エキスパートに「欧州のニュートリションのトレンド」を聞いたところ、「オーガニック、ビーガン、ナチュラル」が引き続き強いトレンドであるとのことでした。
実際に、パリの自然食品店舗を視察した際に「EUのオーガニック認証」のロゴが付いた食品(飲料、スナック、乳製品、他)が数多く販売されており、これらが消費者の食品選択の指針であり、オーガニック食品が消費者に浸透していることを実感しました。
スポーツニュートリションにおいても、プラントベース(植物由来)のプロテインが伸びており、ヨーロッパ、特に都市部の消費者のスーパーフード、ローフード、オーガニックへのニーズはかなり高い、とのことです(都市部以外では、オーガニック商品のラインナップがあまり充実していません)。
オーガニック食品が好まれる理由
オーガニック食品が好まれる理由として、「健康」「安全」といった健康的な食品という意味合いのみならず、「環境の保護」「動物の保護」のような消費者が持つ信念がベースにあります。
このような理由で、動物由来を避けるビーガンの食生活を好む消費者も多く、肉代替製品のラインナップも増えています。
ASEANのニュートリション市場トレンド
ASEANのニュートリション市場は急速に欧米化しています。
元々欧州の大手食品企業や米国MLM(マルチレベルマーケティング、ネットワークビジネス)企業が早くから市場に参入していることもあり、日本以上に欧米のトレンドが浸透しています。
注目のトレンドとしては、
- ナチュラルヘルシー
- ヘルシーエイジング
- 腸の健康
が挙げられます。
東南アジア諸国のニュートリション市場|ナチュラルヘルシー
ナチュラルヘルシーとは、加工過程が少なく、植物由来で素材そのものの健康効果を訴求した食品であり、自然由来の機能性成分を強化し、健康効果を訴求した食品をいいます。
ASEANの消費者が食品に求める「ナチュラルヘルシー」 とは
消費者が食品に求める「ナチュラルヘルシー」は、以下の通りです。
「オールナチュラル原料」
「低糖、あるいは糖分無添加」
「トランス脂肪酸、硬化油不含有」
「GMO原料不使用」
「人工添加物不使用」
「食物繊維、ビタミン添加」
「低脂肪、脂肪ゼロ」
「低カロリー食品」
「自分が知っている原料を使用している」
このように、アジアにおける消費者が食品に求めるポイントは欧米と同様となっています。
タイでは、近年高プロテイン飲料への消費者の関心が高まっており、エンドウ豆(黄エンドウ)由来の高プロテインドリンクが人気です。
なお、ベジタリアンの国であるインドでは、肥満予防という観点から近年健康的な食品への関心が高まっています。また、健康油、食物繊維、植物由来のプロテインへの関心が高いようです。シリアル、オーツヌードル、機能性ミルクなどを朝食に取り入れる消費者が増えており、市場は二ケタ増で推移しています。
ASEANのニュートリション市場|ヘルシーエイジング(健康な加齢)
日本と同様、アジア各国にとっても生活習慣病、特に肥満、糖尿病患者数は増加基調にあり、国民の健康増進策を進めることが課題となっており、生活習慣病予防という観点から消費者のセルフメディケーションへの関心が高まり、サプリメント市場も成長しています。
更に、肥満予防、糖尿病予防といった観点から「砂糖税」の導入について検討している国もあります。
健康増進対策に「砂糖税」や「ソーダ税」を導入
ブルネイでは、2017年4月1日より砂糖税を導入、タイでも、砂糖入り飲料に対して、2017年9月より6年間にわたり増税(一方で、無糖、人口甘味料含有の飲料については減税)。更にインドネシアでは、ソーダ税の導入を検討しています。
アジアのニュートリション市場|腸の健康
腸の健康が訴求する分野は、「プロバイオティクス」「食物繊維」「グルテンフリー」「ラクトースフリー」「乳フリー」などさまざまです。
アジア全体では過去5年間、腸の健康訴求の食品、飲料は二桁増で推移しています。
腸の健康カテゴリーは世界的なトレンドでもあります。
まとめ:アメリカ、ヨーロッパ、アジアのニュートリション市場を俯瞰
ここまで、駆け足で米国、欧州、ASEANのトレンドを俯瞰しましたが、既に日本でも起こっていること、日本の方が進んでいること、まだ日本には現れていないもの、いろいろあると思います。
トレンドを仕分けし、先取りする、あるいは皆さのビジネスのヒントになれば幸いです。
次号では、今年で発足5周年を迎える機能性表示食品について述べたいと思っています。
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