減量薬でネスレの利益は増えるのか?|NNBマンスリーレポート2024年6月号

こんにちは、GNG武田です。

機能性表示食品制度は、安全性、品質管理体制については規制強化される方向で改正されることになりました。一方、機能性表示の科学的根拠については新規原料を除いては手を付けられることはありませんでしたが、安泰とは程遠い状況だと思います。

一昨年の日経クロステックによる機能性の科学的根拠に対する批判から、さくらフォレスト措置命令、そして直近では日経サイエンスによる「誇張表示」批判、など、枚挙にいとまがありません。

機能性表示(ヘルスクレーム)について、恐らく世界で最も厳格なものはEUヘルスクレーム制度だと思います。一方、米国ダイエタリーサプリメント制度の構造機能表示は自己責任による制度で、表示そのもののハードルは高くありません。但し、米国には強力な抑止力があるため、企業の自制が一定程度機能しています。その強力な抑止力とは、FTCによる告発と民間弁護士による集団訴訟です。

EUは、厳格な制度による事前規制、米国は告発や訴訟による事後規制で制度を維持しています。現在の日本の機能性表示食品制度は、このどちらでもありません。トクホ制度も、EUヘルスクレーム制度の厳格さには及びません。

今号のNNBでは、レギュレーション・ケーススタディとしてEUヘルスクレームの近況を分析しています。この内容は、5月24日に「GNG創立20周年記念セミナー」のために来日したJulian氏が、当日話してくれた内容のサマリーになっています。EUヘルスクレーム制度があまりにも厳格なため、申請を避ける企業が増加している状況が報告されています。これは、社会にとってハッピーなことなのか、考えさせられます。

問題は3つあると思います。
まず、食品の機能性研究に対する投資が減り、イノベーションが起きにくくなること。
2つ目に、ヘルスクレーム制度を変化球として使うことで、消費者を誤認させてしまうこと(日本の栄養機能食品も同様です)。
そして、国内産業の空洞化です。EU企業は米国進出を目指し、米国での市場化を優先するようになります。これは、ここ最近の日本企業も同様かと思います。

日本の機能性表示食品制度は今まさに岐路に立たされていると思います。米国スタイルか?EUスタイルか?或いは独自のジャパンスタイルか?そんなことを考えていました。

武田 猛

この記事について

GNGでは、会員向けに英国発信の食品・栄養・健康分野の業界専門誌【NNBマガジン(New Nutrition Business)】を日本語に要約し、定期的にお届けしています(月1回)。

毎月、最新情報を「定点観測」することで、ブランド戦略、マーケット分析、法規制、新技術に関する世界の動向を素早くつかむことができます。

この記事では、その会員向けマガジンの一部を抜粋してご紹介させていただきます。

■NNB(New Nutrition Business)6月号  トピックス

今回、会員向けにお届けしたNNB日本語要約版のタイトルは以下の通りです:
●減量薬でネスレの利益は増えるのか?
●着想を得たいなら巨大都市以外にも目を向けよ
●差別化と勇気がもたらしたDaveの成功
●消費者に合わせた自然食品の成功をソーシャルメディアが後押し
●Nutri-Score は現実との接触で失敗した
●EUのヘルスクレーム、申請を避ける企業が増加
●Mary’s Gone Cracker社:オーガニック、グルテンフリーのパイオニア
●低炭水化物パン・ブランド Hero はゼロで競争を目指す
●大自然由来の発酵菌類から生まれた乳代替品
●標的アミノ酸カットが癌の予後を改善するという期待
●クレアチンはスポーツ・ブラザーの枠を超えられるか?

グローバルニュートリション研究会の会員企業の皆様は、会員ページで最新記事から過去10数年分のバックナンバーまですべての記事を読むことができます。

会員の方はこちら お問合せはこちら

[今号のハイライト]

減量薬でネスレの利益は増えるのか?

Ozempic®やその他の減量薬は2023年に突如として食品ビジネスの意識にのぼったが、その影響はまだ始まったばかりだ。ネスレ社が2024年5月に、これらの医薬品を使用する患者を対象としたまったく新しい商品を発表したが、グルカゴン様ペプチドの影響と、肥満や糖尿病患者への訴求に企業が対応しようと躍起になっていることを示す最も明確な例である。

(会員向けニューズレター「NNBマンスリーレポート2024年6月号」日本語要約版より抜粋)

【NNB(New Nutrition Business)】とは

NNB(New Nutrition Business)」とは、食品・栄養・健康の分野で読者の75%が企業の経営トップである、英国発信の業界専門誌です。

ブランド戦略、マーケット分析、法規制、新技術に関する世界の動向を、日本語の要約付きでお届けしています(月1回、11月&12月は「10キートレンド」として合併号を発行)。

NNBを日本語で読めるのは、弊社が主宰するグローバルニュートリション研究会だけ

会員は、過去10数年分のバックナンバーを英語と日本語の両方で入手可能です。

*株式会社グローバルニュートリショングループは、New Nutrition Businessの日本におけるパートナー企業です。

※ グローバルニュートリション研究会とは?

世界中のニュートリションに関する情報の洪水の中から価値ある情報を厳選し、タイムリーに提供する、日本で唯一のサービスです。

単なる情報ではなく、これまで、弊社が関わった700以上のプロジェクトから得た経験や知見もお伝えしています。

ご多忙の皆様が、業界動向を短時間で把握できますよう、お役に立てることができましたら幸甚です。

会員の方はこちら お問合せはこちら

The following two tabs change content below.
18年間の実務経験と20年間のコンサル経験を積み、38年間一貫して健康食品ビジネスに携わる。国内外750以上のプロジェクトを実施。「世界全体の中で日本を位置付け、自らのビジネスを正確に位置付ける」という「グローバルセンス」のもとに先行する欧米トレンドを取り入れたコンセプトメイキングに定評がある。世界各地にネットワークを築き上げ、情報活用サービス「グローバルニュートリション研究会」主宰。食品会社、化粧品会社、製薬会社の健康食品部門に対して、商品開発・マーケティング・海外進出などのコンサルティングを行っている。人が幸せに生きるためには健康が第一である。健康食品産業は「幸せ創造産業」である、という信念のもと、クライアントの成功を通じ、消費者に支持される業界を目指し、業界で働く人すべてが自分の仕事に誇りと自信をもてるようにしたいという想いから、業界健全化活動にも取り組んでいる。

最近の記事

CONTACT

  • TEL:03-5944-9813

お問合せフォーム

PAGE TOP