ASEANの業界団体、サプリメントによる医療費削減を調査、ほか|GNGグローバルニュース2024年4月10日号

こんにちは、GNG武田です。
ASEANヘルスサプリメント業界団体連合(AAHSA)が、オメガ3、ビタミンD、プロバイオティクス、マグネシウムなど、特定のサプリメントの使用による医療費削減の可能性を調査することを計画している、というニュースが入ってきました。

これは、2020年に米国CRN(the Council for Responsible Nutrition)が実施した“Health Care Cost Savings from the Targeted Use of Dietary Supplements”(ダイエタリーサプリメント使用による医療費削減効果)という調査を、ASEANでも実施することを計画しているということです。素晴らしいことだと思います。

CRNの調査結果では、2020年のダイエタリーサプリメント利用によるNET Benefitsが以下の通り試算されています($=150円で計算)。
①オメガ 3 脂肪酸と冠動脈疾患:$3,699M(約5,549億円)
②マグネシウムと冠動脈疾患:$1,917M(約2,876億円)
③水溶性繊維と冠動脈疾患:$1,214M(約1,821億円)
④ビタミン K2 と冠動脈疾患:$7,866M(約1兆1,799億円)
⑤カルシウム & ビタミンDと骨粗しょう症:$16,854M(約2兆5,281億円)
⑥ルテインとゼアキサンチンと加齢黄斑変性:$103M(約155億円)
⑦ビタミンB群と認知機能低下:$10,493M(約1兆5,740億円)
⑧プロバイオティクス、過敏性腸症候群、生産性向上:$11,100M(約1兆6,650億円)
⑨コリンと小児期の認知発達障害:$113M(約170億円)

そして、2022年~2030年の累計NET Benefitsが以下の通り試算されています。
①オメガ 3 脂肪酸と冠動脈疾患:$40.20B(約6兆300億円)
②マグネシウムと冠動脈疾患:$20.86B(約3兆1,290億円)
③水溶性繊維と冠動脈疾患:$13.23B(約1兆9,845億円)
④ビタミン K2 と冠動脈疾患:$85.30B(約12兆7,950億円)
⑤カルシウム & ビタミンDと骨粗しょう症:$179.32B(約26兆8,980億円)
⑥ルテインとゼアキサンチンと加齢黄斑変性$959.2M(約1,439億円)
⑦ビタミンB群と認知機能低下:$109.93B(約16兆4,895億円)
⑧プロバイオティクス、過敏性腸症候群、生産性向上:$110.22B(約16兆5,330億円)
⑨コリンと小児期の認知発達障害:$1.077B(約1,616億円)

AAHSAのエグゼクティブ・ディレクター、Daniel Quek氏は、「同計画により、持続可能なヘルスケアシステムの一部として、ヘルスサプリメントを含めることが可能であるということを示すことで、ASEAN全域において、国民へのヘルスサプリメントの助成が検討され、医療費負担が軽減されるだろう。」と語っています。

現在、日本では機能性表示食品だけでなく、健康食品そのものへの信用が失墜しつつありますが、米国ダイエタリーサプリメント産業も過去に様々な問題がありました。特に、2002年から表面化してきたエフェドラによる健康被害では死亡例も報告されました。そして、2003年、カリフォルニア州でEphedra heart-safety labeling lawが施行され、他の州もそれに追随しました。
その後、業界は信用を回復すべく努力を続け、2007年にはLewin slidesと呼ばれるダイエタリーサプリメント使用による医療費削減効果を試算する研究が行われ、結果が公表されました。
この研究では、疾病発症の高リスク集団(高齢者と妊娠期の女性)が適切なダイエタリーサプリメントを摂取することにより、今後5 年間でアメリカの国家としてのヘルスケア費用を240億ドル(約3 兆6,000円弱)削減できることを示しました。この研究が取り上げたサプリメントはカルシウムとビタミンD、葉酸、ω-3 脂肪酸、ルテインとゼアキサンチンでした。このニュースに触れた時、私はとても感動しました。
サプリメント(健康食品)が健康維持に役立つことは知られていましたが、このように経済効果として示し、サプリメントの存在意義を示したことは、とても大きな意味を持つと思いました。

その後、米国CRNは2013年に最初の”Health Care Cost Savings Resulting from the Targeted Use of Dietary Supplements”を実施しました。
その主な結果は以下の通りです。

・オメガ3、ビタミンB群、植物ステロール、サイリウム等サプリメントを摂取することで、冠動脈性心疾患のリスクは3.3%~11.5%減少し、28~265億ドル節約することが可能である。
・ピコリン酸クロムサプリメントの摂取により、糖尿病のリスクを10.2%減少し、最大78億ドル節約することが可能である。
・ルテイン、ゼアキサンチンサプリメント摂取により、加齢黄斑変性のリスクは23%減少し、白内障のリスクは15.3%減少し、合計74億ドル節約することが可能である。
・カルシウム&ビタミンD、マグネシウムのサプリメントの摂取により、骨粗しょう症のリスクは6~18.6%減少し、42~86億ドル節約することが可能である。

このように、米国ダイエタリーサプリメント業界は、自らの信用を取り戻すべく、そして自らの存在価値を示すべく、継続的な努力を続けてきました。そして今、ASEANも同様の取り組みを始めようとしています。米国もASEANも、国ではなく業界主導で自ら行動を起こしています。日本の業界も、見習うことが多いのではないかと思います。

武田 猛

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■GNGグローバルニュース 2024年4月10日号 トピックス

Market News マーケット
●インドのニュートラシューティカル市場、美容、ダイエット分野が急成長
●プラントベース食品に対する、好き嫌い
●Expo West 2024のトレンドは商品の小型化?
●ASEANの業界団体、サプリメントによる医療費削減を調査

Products & Technology News プロダクツ&テクノロジー
●拍車がかかるアニマルフリーのコラーゲン開発

Science News サイエンス
●認知機能への栄養素の影響は男女で違いがある可能性
●UPFに分類されるプラントベースバーガーは果たしてヘルシーなのか
●サルコペニア患者はNAD+の前駆体、トリゴネリンが低い可能性
●腸内微生物叢の形成に影響するのはP/F

Company News 企業情報
●パーソナライズドニュートリションプラットフォームを立ち上げサプリメントやアドバイスを提供:Alyve
●オランダのThe Protein Brewery社、シンガポールで「Fermotein」の認可取得

Regulatory News 法規制
●FDA、サプリメント製品登録の義務付けを改めて要求:2025年度予算案
●SOE最終規則が3月19日に発効:USDA

[今号のハイライト]ASEANの業界団体、サプリメントによる医療費削減を調査

[2024/3/25] [nutraingredients-asia.com]

ASEANヘルスサプリメント業界団体連合(AAHSA)は、オメガ3、ビタミンD、プロバイオティクス、マグネシウムなど、特定のサプリメントの使用による医療費削減の可能性を調査することを計画している。同計画は、米国で実施された”Supplements to Savings: Health Care Cost Savings from the Targeted Use of Dietary Supplements 2022-2030(ダイエタリーサプリメントの使用による医療費削減2022-2023)” に基づいている。

“Supplements to Savings”は、米国栄養評議会(CRN)財団が資金提供し、Frost & Sullivan社が実施した。2022年に発表された報告書によるとダイエタリーサプリメントは特定の病状に関連する医療費を削減できることを示唆している。

調査対象となったサプリメントは、カルシウム、ビタミンD、ビタミンB、水溶性食物繊維、オメガ3、ビタミンK2、マグネシウム、プロバイオティクス、ルテインとゼアキサンチン、コリンである。冠動脈疾患(CAD)、骨粗鬆症、加齢黄斑変性症(AMD)、認知機能低下、過敏性腸症候群、小児期の認知発達障害を持つ人を対象として、その費用削減の可能性が検討された。その結果、50歳以上の骨粗鬆症の場合、カルシウムを1,000mg、ビタミンDを15mg摂取することで、1,550億米ドルの潜在的なコストの削減が可能であることが示された。また、成人の過敏性腸症候群に対するプロバイオティクスの摂取は、950億米ドルのコスト削減をもたらす可能性があり、水溶性食物繊維の摂取は、年間平均14億7000万米ドルのコスト削減につながる可能性があることが明らかとなった。 

AAHSAのエグゼクティブ・ディレクター、Daniel Quek氏は、「同計画により、持続可能なヘルスケアシステムの一部として、ヘルスサプリメントを含めることが可能であるということを示すことで、ASEAN全域において、国民へのヘルスサプリメントの助成が検討され、医療費負担が軽減されるだろう。」と語った。

(会員向けニューズレター「GNGグローバルニュース2024年4月10日号」より抜粋)

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