こんにちは、GNGの和泉です。
8月10日号のグローバルニュースをお届けいたします。
今号では、英国プラントミートメーカーのMeatless Farm社が経営破綻の危機、オメガ3脂肪酸が肥満やうつ症状に有益な影響を与える可能性、サステナブルな食生活が実は微量栄養素欠乏のリスクを助長している可能性、片頭痛に対するビタミンK2の影響を調査する臨床試験の開始、そして、ASEANハーモナイゼーションが延期されるなど、多岐に渡るニュースを取り上げています。是非ご確認ください。
ご存じの方も多いと存じますが、近年、アボカドオイルはオリーブオイルと同様に健康的で汎用性の高いオイルとして注目されています。
オリーブオイルは、一価不飽和脂肪酸であるオレイン酸を豊富に含み、オレイン酸には血液中の LDL コレステロールを低下させる効果があると言われていますが、アボカドオイルも同様にオレイン酸を豊富に含み、さらに、オリーブオイルの約2.5倍のビタミンEが含まれています。
同じく健康的とされている亜麻仁油やえごま油は酸化しやすいため加熱調理には向いていないといわれていますが、アボカドオイルは気化する温度が255℃と非常に高く、熱に強い酸化しにくい油として加熱調理に向いていることも人気が上昇している一因と言えます。
しかし近年、米国で販売されているアボカドオイルの大半が安価なオイルとブレンドされ、また、誤ったラベルが貼られていることが判明し、大きな問題となりました。
そして、2023年10月発行のFood Control誌に掲載予定の、米国カリフォルニア大学デービス校の研究者らが実施した調査結果でも、検査したプライベートブランドのアボカドオイルの70%近くが他のオイルとブレンドされていた、または腐っていたことが明らかになりました。
調査報告書によると、評価したのは米国とカナダの19店舗で購入された36種類のアボカドオイルで、純粋と判定されたのは31%、品質基準を満たしたのは36%のみだったそうです。
研究者によると、安価なオイルほど不純物の混入率が高かったとのことでした。
米国では、ある成分が意図的に省かれたり、取り除かれたり、あるいは食品の価値ある部分が代用されたりした場合、これを経済的動機による不純物混入(Economically motivated adulteration:EMA)、いわゆる食品詐欺とみなされますが、オリーブオイル業界ではすでに何十年もかけてオリーブオイルの高度な科学分析を含む検査方法を開発し、業界が長年自主的な努力を続けています。一方のアボカドオイルの検査はまだ始まったばかりであることも、問題が多発する大きな要因であると考えられます。
また、本物のアボカドオイルは高価であるため、業界で不正が蔓延していることで本物のアボカドオイル生産者が偽物の生産者と価格競争ができず、活動が非常に困難になっているそうです。
世界的にも、世界保健機関(WHO)とオーガニック食品協会(FAO)により設立された国際的規格開発機関Codex Alimentariusが、規格の制定を進めていますが、このプロセスには時間がかかり、精製アボカドオイルの規格はまだ確定していないのが現状です。
既にご覧になった方もいると思いますが、Netflixでは最近、米国の食中毒問題に焦点を当てたドキュメンタリー、「ポイズニング 食に潜む汚れた真実(英語名:Poisoned: The Dirty Truth About Your Food)」が公開されました。
いつの時代も、食の安全は大きな課題であると感じています。
皆様のビジネスのお役に立てますと幸甚です。
和泉 美弥子
この記事について
GNGでは、会員向けに世界各国の健康・食・栄養に関するニュースをセレクトし、日本語に要約したものを月に2回、ニューズレター「GNGグローバルニュース」として配信しています。
この記事では、その会員向けニューズレターの一部を抜粋してご紹介させていただきます。
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■GNGグローバルニュース 2023年8月10日号 トピックス
Market News マーケット
●英国プラントミートのMeatless Farm社が経営危機に直面:管理者選任意向通知を提出
●コメ生産量は2050年までに5%以上減少:AI洞察
Products News
●Philadelphiaがプラントベースのチーズスプレッドを全米展開
Science News サイエンス
●オメガ3の補給がうつ病、肥満の有効な補助的治療になる可能性
●特定のプロバイオティクス摂取がCOVID-19抗体反応を増強する可能性:RCT
●子供の3人に1人が貧血のリスク:マレーシア小児保健専門家が是正措置を呼び掛ける
●サステナブルな食生活は微量栄養素欠乏を生み出す恐れがある:英国の専門家が警鐘
●ゼラチンに代わる高たんぱく質のプラントベース代替品を発見:カナダ
●ビタミンK2と片頭痛の関連性を検証する臨床試験が開始される
Company News 企業情報
●Nestlé社、酵素技術で麦芽、牛乳、フルーツジュースなどの原材料に含まれる糖質をカット
Regulatory News 法規制
●北欧の新栄養勧告はプラントベース食を重視
●オランダが培養肉および魚介類の試食を承認
●FDA、NMNに関する公聴会開催の意思はないことを表明
●カナダのサプリメントに対する新たな規制措置が米国のブランドサプライヤーを危険にさらす
●ASEANハーモナイゼーションは延期されたが専門家は基準への準拠を勧告
[今号のハイライト]
ASEANハーモナイゼーションは延期されたが専門家は基準への準拠を勧告
[2023/8/2] [nutraingredients-asia.com]
東南アジア諸国連合(ASEAN)の加盟10カ国は、2004年より伝統医薬品とヘルスサプリメントの技術基準のハーモナイゼーションに取り組んできた。
ハーモナイゼーションの核となる10の附属書または技術的要件の承認は完了しており、今月のASEAN経済閣僚会議(AEM)で加盟国の貿易担当大臣が協定書に署名する予定だった。
しかし、ASEANの伝統的医薬品およびヘルスサプリメントの規格と品質に関する協議委員会(ACCSQ TMHS PWG)は7月にマニラで開催された最新の会議で、調印は予定通り行われない見解を示した。
署名は来年のAEM中に行われる見込みである。ただし、Wong SJ Asia社の主任規制コンサルタントであるWai Mun Poon氏は、ASEAN加盟国で製品の販売を計画している企業に対して基準への準拠を開始するよう助言している。
ASEANでは協議とコンセンサスというアプローチがとられているため、意思決定プロセスに長い時間がかかっている。しかし、すでにいくつかの加盟国がハーモナイゼーションの技術要件の一部を実施し始めている。
例えば、シンガポール、マレーシア、インドネシア、ブルネイ、タイ、ミャンマーは、附属書1の「Guiding principles for inclusion into or exclusion from the negative list of substances for health supplements(ヘルスサプリメント用物質のネガティブリストへの掲載または除外に関する指針)」に、ミャンマーとブルネイは附属書8の「GMP基準」にすでに従っており、ASEAN加盟国がハーモナイゼーションの取り組みに熱心であることを示している。
2016年、ACCSQ TMHS PWGはハーモナイゼーションの中核となる10の附属書または技術的要件を制定した。これらの附属書は国際的なCODEX規格にほぼ沿ったもので、表示、製品の品質と安全性に関する規格で構成されており、2021年に最終決定され承認された。
各加盟国は現在、国家全権文書(National Instrument of Full Power:IFP)の取得を進めている。IFPとは、外務大臣が貿易担当大臣に対し、協定書に署名する権限を与える文書である。
調印後、加盟国はハーモナイゼーションの技術要件に適合するために自国の法律や規制を変更する必要がある。技術要件は既存製品と新製品の両方に適用される。
Poon氏によると、10の付属書に記載されている技術基準の一部は、7年前の2016年に策定されているため、現在の国際基準に合致せず改訂が必要になる可能性があるという。その一例が、ヘルスサプリメントにおける伝達性海綿状脳症(TSE)のリスク最小化に関するガイドラインである。ただし同氏は、その更新は協定調印後に行われる可能性が高いと述べている。
ハーモナイゼーション基準の完全実施は、2027年になると予想される。協定調印後、ACCSQ TMHS PWGは解散し、ASEAN伝統医学・ヘルスサプリメント委員会(ASEAN Traditional Medicine and Health Supplement Committee:ATMHSC)が設立される。
ATMHSCの役割は、協定実施における調整、レビュー、監視である。また、附属書や技術要件、協定の見直しや更新も担当する。
Poon氏は、ヘルスサプリメント業界へ新規参入する食品企業は、附属書5に明記されている安定性試験ガイドラインの遵守が困難で高コストだと感じる可能性を指摘した。安定性試験は通常約2年かかり、成分の分析試験にかかるコストは、1成分につきシンガポールドルで5桁の数字になる可能性がある。さらに、ヘルスクレームの立証に関する附属書7では、ガイドラインは「一般原則」を提示しているにすぎず、特定の詳細については国ごとに要求事項が異なる可能性がある、と述べている。
(会員向けニューズレター「GNGグローバルニュース2023年8月10日号」より抜粋)
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和泉 美弥子
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