こんにちは、GNGの和泉です。
5月10日号のグローバルニュースをお届けいたします。
今号も、さまざまな国や地域の規制に関する情報をお届けしていますが、その他にも最近、地域の食文化を反映した規制に関する動きがありました。既にご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、個人的に興味を惹かれましたので一部ご紹介します。
チリは肉の消費量が多い国として知られています。OECDのデータによると、2021年の時点で世界第5位の肉(牛・豚・鶏・羊)の消費国です。そのチリの議会で先月17日、「肉」の概念の分類を規制する法案が議論を経ず大筋で可決されました (bulletin 12599)。
この法案は、動物由来でない食用製品を「肉」と表示することを禁止するもので、「肉」という用語は、牛、羊、豚、馬、山羊、ラクダ科など、食用に適した動物の筋肉の可食部分を指すものと定められます。さらに加工食品への使用も制限する表示が採択され、ハンバーグ、チョリソー、ソーセージ、ジャーキーなどの用語は、肉よりも植物由来原料の割合が高い製品に使用することができなくなるということです。
この法案は、「最終的に、食肉産業を保護するためにプラントベース製品へのアクセスと消費を減らすこと」を目的としています。
当然ながらプラントベース業界から反発を受け、ラテンアメリカでプラントベース食を促進する国際組織Vegetarianos Hoyが中心となり、プラントベース業界団体やブランドと合同で声明が発表され、署名活動も開始されています。しかし上記のような法案が「議論を経ずに」可決されるとは、肉の消費大国ならではだと考えさせられました。
そして同じく先月21日、欧州委員会は、青果物、果汁・ジャム、蜂蜜、鶏肉、卵などの農産食品に関する販売基準を改正する指令案を発表しました。これらは、いわゆる「朝食指令(Breakfast Directives)」と呼ばれています。一般に朝食で消費される農産物や食品の説明、定義、特性、表示に関する規則を定める複数の指令のため、この名称が付けられました。
今回の改正が提案されているのは、蜂蜜に関する指令、フルーツジュースおよびヒトの消費を目的とする特定の類似製品に関する指令、ヒトの消費を目的とするフルーツジャム、ゼリー、マーマレードおよび甘栗ピュレに関する指令、ヒトの消費を目的とする特定の一部または全部の脱水保存乳に関する指令です。
例として、蜂蜜は現行の指令では原産国が複数にわたる場合、原産国を表示せずに「EUのはちみつブレンド」、「EU以外のはちみつブレンド」、「EUとEU以外のはちみつブレンド」と表示が可能ですが、今回の改正案では、原産国(加盟国および第三国)ごとの表示義務が課せられることになります。フルーツジュースに関しても、「低糖フルーツジュース(類似商品と比較して30%減)」、「砂糖無添加のフルーツネクター(商品ラベルには「自然に含まれる糖質を含む」という文言を記載する必要がある)」という新しいカテゴリーを設けています。
上述のような農産食品に関連した指令を一括りにしたネーミングを「朝食指令」とするところに、欧州らしさを感じました。
皆様のビジネスのお役に立てますと幸甚です。
和泉 美弥子
この記事について
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この記事では、その会員向けニューズレターの一部を抜粋してご紹介させていただきます。
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■GNGグローバルニュース 2023年5月10日号 トピックス
Market News マーケット
●乳製品メーカーは高齢者向け粉ミルクに関心を示す:中国
●ChatGPTは恐れるべきか
●2022年に最も検索される健康食品は「オメガ3」「ビタミンD」「ビオチン」-韓国・NAVER社
●妊娠出産、消化器、骨など女性の健康に特化したサプリメントが話題
●サプリメントは価格が最も重要、次はブランド名
●Whole Foods Market社、リストラで数百人を削減
Science News サイエンス
●カロリー制限食は、減量だけでなく、老化を遅らせ死亡リスクを低減させる可能性
●研究:妊婦向けサプリメントが必要な栄養素を満たしていないことが判明
●グラスフェッド牛は本当にカーボンニュートラルになり得るのか
●食品・飲料業界が取り組むサステナビリティ
●妊婦のビタミンD欠乏はパンデミック中のロックダウンの影響
Company News 企業情報
●NOW社、Amazonで販売されている偽造サプリメントについて注意喚起
Regulatory News 法規制
●欧州のニュートラシューティカルに関する規制の最新情報
●インドネシア、一般加工食品の微生物含有量の厳しい基準を導入
●女性の健康をサポートするサプリメントに対する規制と許容されるヘルスクレーム
[今号のハイライト]女性の健康をサポートするサプリメントに対する規制と許容されるヘルスクレーム
[2023/4/27] [nutraingredients-usa.com]
女性の健康をサポートするダイエタリーサプリメントが増える中、PMSの緩和、更年期症状、生殖に関する健康などについてのヘルスクレームについて、マーケターがどのようなクレームをすることができるか、できないかを理解する必要がある。出産前後のサプリメント、更年期障害、骨粗鬆症、生殖に関する健康のサプリメントなど、女性の特定のニーズに焦点を当てて増加している。
FDAは、ダイエタリーサプリメントに関するクレームを監視しており、女性向けのヘルスサプリメントがFDAから警告を受けた事例もある。
例えば、2020年にジョージアの企業が「更年期症候群の症状を緩和する」というクレームを出したため、「未承認医薬品クレーム」の警告書を受け取った。FDAは、自然な体の状態や経年の変化に伴う、一般的で軽度な異常(たとえば、更年期のホットフラッシュ、月経周期に関連する一般的な症状、妊娠に伴う軽度のつわり、加齢に伴う軽度の記憶障害、加齢に伴う脱毛や非嚢胞性のにきびなど)は、疾病と見なされないことを定めている。
しかしながら、異常または深刻な状態に対する主張は病気とみなされ、FDAの警告を受ける可能性がある。例えば、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)や不妊に関する主張は、過剰であるとみなされる可能性がある。企業は、ダイエタリーサプリメントのヘルスクレームに関して、法的規制に遵守するために適切な言葉を選択することが重要である。
(会員向けニューズレター「GNGグローバルニュース2023年5月10日号」より抜粋)
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和泉 美弥子
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