こんにちは、GNGの和泉です。
米国が、CBD製品の規制の制定に向けてようやく動き始めました。
今月4日、ヘンプ由来CBDサプリメント製品がすべての法的要件に準拠している場合、合法的に販売することを可能とする法案が議会へ提出されました。
これがCBD業界にとって大きな一歩になることは間違いありません。今後の動きに注目していきたいと思います(詳しくは今号Regulatory News記事をご覧ください)。
さて、そのCBD市場の現状ですが、ここ最近のグローバルニュースで海外、特に米国では、CBDに関する法規制が取り残され、市場だけがどんどん拡大していることがお分かりいただけるかと思います。
特に食品、飲料としてのCBD製品(飲料、キャンディー、グミ、チョコレート、さらにはペットのおやつまで)の需要が急速に高まっています。
食品科学者で食品研究開発会社Corvus Blue LLC代表のKantha Shelke博士によると、CBDの食品への添加は、加工段階で有効成分の性質を変化させる可能性があるため、慎重に検討する必要があると言います。温度、水分量、pH等すべてがカンナビノイドの化学的作用に影響を与えます。
例えばチョコレートとグミでは、大きな違いがあるといいます。
カンナビノイドは水溶性ではなく脂溶性物質のため、他の脂質と一緒に摂取することでカンナビノイドのバイオアベイラビリティ(生体利用効率)が高くなります。脂質ベースのチョコレートだと体が効率的にCBDを吸収できるのだそうです。
脂質が多く含まれる焼き菓子製品もほぼ同様だといえます。カンナビノイドの沸点は比較的高いため、ベーキングの温度が低ければ低いほど、揮発によるカンナビノイドの損失は防げるそうです。
一方、脂質を含まないグミは、カンナビノイドを組み込むことは非常に難しいため工夫が必要なのだそうです。
飲料に関しても、前述のとおりCBDは脂溶性のため、分離しないようにすることが最大の課題であるといえます。
当然ながら、CBD原料サプライヤーが高品質の材料を提供していることを確認し、製品の分析証明書を注意深く検討する必要があります。
上述のようにCBD市場がひとり歩きしている理由として、現時点でFDAはCBDの食品、飲料、サプリメントへの使用を許可していないが、州ごとでは許可されている、という米国の複雑な法の仕組みも一因かと思われます。
既に米国の21の州で、食品、飲料におけるカンナビジオール(CBD)の使用が合法とされていますが、米国法律事務所Amin Talati Wassermanのパートナー弁護士、Ashish Talati氏によると、QRコードを含む独自のラベル表示要件がある州、CBDグミ製品は長方形または立方体でなければならない州など、規制内容が州ごとに違うそうです。
CBD製品企業は州ごとの規制に精通する必要があり、さらにFDAと州の矛盾した規制が混乱をもたらしているようです。
今回提出された法案を足掛かりに、食品、飲料においても少しでも早い規制の統一が望まれます。
(株)グローバルニュートリショングループ 和泉 美弥子
この記事について
GNGでは、会員向けに世界各国の健康・食・栄養に関するニュースをセレクトし、日本語に要約したものを月に2回、ニューズレター「GNGグローバルニュース」として配信しています。
本日配信したグローバルニュースでは、米国議会、ヘンプCBDダイエタリーサプリメント法案を導入、
仏食品環境労働衛生安全庁ANSES、食用藻類のカドミウム含有量について懸念を提議、など12の記事を取り上げています。
この記事では、その会員向けニューズレターの一部を抜粋してご紹介させていただきます。
■GNGグローバルニュース 2020年9月10日号 トピックス
●英国の健康的な食事に関するガイドラインは、早期死亡と温室効果ガス排出のリスクを削減すると判明:研究
●英国食肉加工協会が食肉の有益性を訴えるホームページを開設
●原材料の過剰供給問題はあるがヘンプ/CBD市場は大きく成長すると予測
●CRN と Ipsos、COVID-19禍におけるサプリメント使用傾向を分析
●CBDとエルダーベリー、主流マルチチャネルで3桁の成長
●低炭水化物、高脂肪食は高齢者の肥満改善に有益である可能性
●生後3ヶ月の乳児の30%以上が不十分なビタミンDレベルであると判明:ノルウェー
●オメガ3脂肪酸DHAの濃度が高いほど間質性肺疾患リスクが低下する可能性
●米連邦取引委員会(FTC)、「Made in USA」ラベル表示に関する規則案を発表
●米業界団体、食品とサプリメントの新しいラベル規制要件を満たすための期間延長を要求
●仏食品環境労働衛生安全庁ANSES、食用藻類のカドミウム含有量について懸念を提議
●米国議会、ヘンプCBDダイエタリーサプリメント法案を導入
……グローバルニュートリション研究会 会員企業様は、会員サイトにて、すべての記事をお読みいただけます。
[今号のハイライト]
米国議会、ヘンプCBDダイエタリーサプリメント法案を導入
[2020/9/4] [fda.gov]
9月4日、米国下院議員のKurt Schrader氏とMorgan
Griffith氏により、ヘンプおよびヘンプ由来CBD消費者保護および市場安定化法2020(Hemp and Hemp-Derived CBD Consumer Protection and Market Stabilization Act of 2020)が導入された。
同法案は現行の規定に例外を設けるもので、CBDとヘンプ由来の他の成分は、製品が新規栄養成分(NDI)の現在の法的要件、および連邦法に基づくダイエタリーサプリメントに適用される他のすべての要件に準拠している場合、法律が施行されてから90日後にサプリメントとして合法的に販売することが許可される。ただし、この法案はダイエタリーサプリメントにのみ適用され、食品や飲料には適用されない。
同法案はまた、米国食品医薬品局(FDA)に対し、ヘンプとヘンプ由来CBDに関する明確な規制枠組みを制定し、消費者保護を保証するよう指示している。
業界団体である、AHPA(American Herbal Products Association)、CHPA(Consumer Healthcare Products Association)、CRN(Council for Responsible Nutrition)、およびUNPA(United Natural Products Alliance)は、共同プレスリリースによりこの法案の導入を歓迎している。しかしながら、業界内で安全性の確保やDSHEA改革の必要性など、懸念を示す声も上がっている。
ヘンプCBD業界団体US Hemp Roundtableの法務顧問であるJonathan Miller氏は、この法案は今年中に可決される可能性があり、今後、食品と飲料についても追加される可能性を示唆している。
(会員向けニューズレター「GNGグローバルニュース2020年9月10日号」より抜粋)
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和泉 美弥子
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