注目される睡眠の重要性|ウェルネスフード・ワールド第103回

こんにちは、GNGの和泉です。
7月のウェルネスフードワールドをお届けします。

COVID-19の世界的な流行下で、私たちの生活スタイルは多かれ少なかれ変化しています。

そんな中、睡眠不足により免疫力が低下し、風邪などの感染症にかかりやすくなることが世界中で大きく注目されるようになりました。

不規則な生活や運動不足、様々なストレスの増加で睡眠の質が低下し、十分に睡眠がとれていないと感じることがまたストレスにつながるという、悪循環に陥っている人も数多く存在しています。

■理想の睡眠時間

では、理想的な睡眠時間は?というと、十分な睡眠時間には個人差があり、年齢や体質などによって違うため、明確な基準はないとされています。

米国睡眠医学会(AASM)と睡眠研究協会(SRS)による共同声明によると、多くの健康な成人に最低限必要とされる1日の睡眠時間は、7時間だということです(ただし、若い成人や睡眠不足が続いている人などは9時間近く必要な場合もあるそうです)。
私自身、ここ数年で1日の睡眠時間が6時間を超えたことはほとんどありません。個人的にも耳の痛い話です。

増加する睡眠障害

様々なストレスによる睡眠障害も問題視されています。
コロナソムニア(Coronasomnia)というパンデミックに関連した睡眠課題を指す新しい造語が生まれ、COVID-19以前は睡眠に問題がなかった人々にも大きな影響を与えています。
AASMによると、2017年の時点で人口の30%から50%が一時的な不眠症を体験していると言われ、先進国における慢性不眠症の有病率は少なくとも5%~10%と推定されています。

急激に成長する米国メラトニン市場

米国メイヨークリニック心臓病研究所のNaima Covassin博士らにより執筆され、2022年に医学誌JAMAに掲載された研究によると、睡眠のためにメラトニンサプリメント使用している米国成人の数は1999年から2018年の間で約5倍(約600万人)に増加していることがわかりました。
この研究では、1999〜2000年および2017〜2018年の米国国民健康栄養調査(NHANES)における成人(計55,021人、平均年齢47.5歳)データが分析されました。

上記の数値は2018年までの調査に基づいたものですが、現在では、COVID-19の影響でメラトニン使用人口がさらに増加していることが容易に推測できます。

実際、Business Insiderに掲載されたNielsen社の調査結果によると、2020年の米国メラトニンサプリメント売上高は、前年比42.6%増の約8.26億USドルに達したそうです。

メラトニンとは

メラトニンは、自然な睡眠および覚醒サイクルに関与する「睡眠ホルモン」とも呼ばれる生体内ホルモンの一種で、主に脳の松果体から分泌されます。
摂取するタイプの外因性メラトニンも、体内で生成される内因性メラトニンと同様に作用します。

日本では、メラトニン(松果体ホルモン)は医薬品として分類され、食品原料として使用することが出来ません。購入する場合は個人輸入もしくは医師の処方が必要となります。

一方の米国では、メラトニンは睡眠サポートサプリメントとしてドラックストアなどで広く販売されています。種類によっては1ボトルあたり5ドル程度という安価で手に入るため、睡眠サポートカテゴリーでは最も人気が高い成分です。

しかしながら、Covassin博士は「メラトニンは睡眠促進剤ではない」と述べています。
AASMおよび米国内科学会(ACP)の診療ガイドラインによると、慢性不眠症に対するメラトニン補給の有効性や安全性について、その使用を推奨できるほどの強力なエビデンスは十分に揃っていないとされています。

ただし、メラトニンには概日リズム(サーカディアンリズムともいう)を調整する作用があることが分かっているため、AASMはメラトニンサプリメントの使用用途として、時差ボケや不規則なシフト勤務による睡眠障害など、睡眠のタイミングに起因する問題の改善を目的とした使用を推奨しています。
Covassin博士らの研究で、米国では近年メラトニンサプリメント使用者が増えているだけでなく、一般的に1回あたりの上限として推奨される5mgをはるかに超える高用量を摂取していることが判明しました。

これまでの研究で、高用量の摂取により、発作の悪化、心拍数や血圧の変化、耐糖能の低下、発作性疾患治療薬や抗うつ剤、血液希釈剤を服用している人への薬物相互作用の可能性など、重大な副作用が起こる可能性があることがわかっています。

そのため、Covassin博士らは「高用量は必ずしもより効果的ではなく、実際には逆効果になる可能性がある」と注意を促しています。

需要の急増による品質への懸念

米国におけるメラトニン需要の急激な増加により、AASMは市販されているサプリメントの品質について懸念を表明しています。

米国の場合、米国食品医薬品局(FDA)はサプリメント製品が市場に出た後で消費者やサプリメントメーカー等から報告される副作用などの追跡調査を行います。
サプリメントに対する規制は処方薬や市販薬に対する規制より緩いため、製品パッケージに表示されているメラトニン含有量と実際の含有量に相違がある可能性があります。さらに、表示されていない有害な添加物が含まれている可能性もあるのです。

医学誌Journal of Clinical Sleep Medicineに掲載された2017年の研究では、調査したサプリメント製品のうち71%以上の製品で、パッケージに表示されているメラトニン含有量と実際の含有量に10%の範囲で差異があることが判明しました。製品によっては、パッケージ表示と実際の含有量が-87%から+478%と、非常に大きな差異があったということです。

また、同研究で調査したメラトニンサプリメントの26%に、パッケージには記載されていないセロトニンが含まれていたことも判明しました。研究者らは、メラトニンとセロトニンの相互作用による潜在的な健康被害を懸念しています。

独立非営利団体のConsumer Reportは、使用を考えている製品が安全な含有量かどうか、潜在的に危険な成分が含まれていなかどうかを確認するため、購入前に第三者機関(ConsumerLab.com、NSF International、U.S. Pharmacopeia (USP))によって検証された製品を購入することを提案しています。

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2020年、日本でもノーベルファーマ株式会社の『メラトベル®顆粒小児用(0.2%)』(小児期の神経発達症に伴う入眠困難に対するメラトニン受容体作動性入眠改善剤)が、処方箋医薬品として承認され、発売されました。

この先も睡眠に関する課題はますます増加していくことが予想されます。
健康な成人の良質な睡眠において最も効果的なのは、サプリメントだけに頼らず、朝は日の光を浴びる、日中はなるべく体を動かし、夜更かしをせずになるべく早めに就寝することを心掛けることです。

現代の忙しい生活スタイルでは、上記を実行することは多くの人にとって難しいと思われますが、睡眠の質の向上にとって一番の近道であることは間違いありません。

最後に、多くの自治体や企業で採用されている【睡眠障害対処12の指針】を以下にご紹介します。すでにご存じの方も多いとは存じますが、まだお読みになったことのない方は、よろしければご一読ください。

【睡眠障害対処 12 の指針】
1.睡眠時間は人それぞれ、日中の眠気で困らなければ十分
2.就床前はカフェインやタバコなどの刺激物を避け、自分なりのリラックス法を
3.眠たくなってから床に就く、就床時刻にこだわると寝付きを悪くする
4.同じ時刻に毎日起床、早起きが早寝に通じる
5.朝の日光を浴びて睡眠改善、夕方以降は部屋の明かりを控えめに
6.規則正しい 3 度の食事、夜食は軽く。運動習慣は熟睡を促進
7.昼寝をするなら、15時前の 20~30分
8.眠りが浅いときは、むしろ積極的に遅寝・早起きに
9.激しいイビキ・呼吸停止や足のぴくつき・むずむず感は早めに主治医へ
10.十分眠っても日中の眠気が強い時は主治医に相談
11.睡眠薬代わりの寝酒は不眠を悪化
12.睡眠薬は一定時刻に服用し就床。アルコールと一緒に使わない。主治医の指示で正しく使えば安全

(厚生労働省 精神・神経疾患研究委託費「睡眠障害の診断・治療ガイドライン作成とその実証的研究班」平成13年度研究報告書より」)

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(株)グローバルニュートリショングループ 和泉 美弥子

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18年間の実務経験と17年間のコンサル経験を積み、35年間一貫して健康食品ビジネスに携わる。国内外600以上のプロジェクトを実施。「世界全体の中で日本を位置付け、自らのビジネスを正確に位置付ける」という「グローバルセンス」のもとに先行する欧米トレンドを取り入れたコンセプトメイキングに定評がある。世界各地にネットワークを築き上げ、情報活用サービス「グローバルニュートリション研究会」主宰。食品会社、化粧品会社、製薬会社の健康食品部門に対して、商品開発・マーケティング・海外進出などのコンサルティングを行っている。人が幸せに生きるためには健康が第一である。健康食品産業は「幸せ創造産業」である、という信念のもと、クライアントの成功を通じ、消費者に支持される業界を目指し、業界で働く人すべてが自分の仕事に誇りと自信をもてるようにしたいという想いから、業界健全化活動にも取り組んでいる。

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