こんにちは、GNGの本崎です。
9月のウェルネスフードワールドをお届けします。
今日はウェルビーイングという観点で、女性の更年期障害とウェルネス・フードの可能性、そして受け入れられるマーケティング・コミュニケーションの未来について考察します。
ウェルビーイングとは?
「ウェルビーイング」(well-being)とは、身体的・精神的・社会的に良好な状態にあることを意味する概念で、「幸福」と翻訳されることも多い言葉です。
世界保健機関(WHO)憲章の前文では、「健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態(well-being)にあることをいいます(日本WHO協会:訳)」とされています。
出典:世界保健機関(WHO)憲章とは|公益社団法人日本WHO協会
いくつになっても自分らしく、満たされた状態であるためには、日常的に感じる心身の変化を自覚し、不快な症状への適切な対処をとることが不可欠です。
GNGグローバルニュース2021年8月18日号 サイエンスニュースでも取り上げていますが、女性の健康ソリューションを提供する Bonafide 社は、最近「State of Menopause Study」という調査が行われました。
https://cdn.shopify.com/s/files/1/0011/8590/6751/files/Bonafide_State_of_Menopause.pdf
この調査は、米国の 40~65 歳の女性 1,039 人を対象に、更年期障害の症状、治療、一般的な傾向について調べたものです。
更年期障害とみなされる症状にはそれぞれ、ホットフラッシュ(ほてり)が 16%、体重増加は 15%、不眠 14%、寝汗 14%、膣乾燥 12%、尿意切迫や夜間頻尿といった膀胱のコントロール問題 11%、物忘れ 10%などがあり、また対象者の20%は、「更年期障害と診断される 1 年以上前から症状が出ていた」とのこと。
そうした女性の更年期障害に対する治療の選択は、ホルモン補充療法(HRT)からより自然由来の治療に移行していることが報告されました。
ほてりや寝汗のような症状はさらに年月が経つうち(平均 7.4 年)改善するものですが、膀胱にまつわる症状は加齢によって悪化し、QOL に大きな影響を与えます。膀胱コントロールがうまくいかないことは、高齢者の介護施設入居の理由の 3 位にランクされているそうです。
しかし、回答者の 73%が、「更年期障害の症状の特別な治療は行っていない」と答えています。
そして、症状への対処として 41%が、ビーガン対応、グルテンフリーなどの自然由来の商品を好んで使っているといいます。
治療の傾向として 1960 年代から 2000 年代初頭までは HRT が主流だったが、HRT は乳がん、心臓発作、卒中などのリスクを上昇させることが示唆されるようになってから HRT を選ぶ女性は減少し、症状を放置するか、更年期障害への効果を謳う自然由来の商品を選ぶ女性が増加しました。
Bonafide 社でも、更年期障害の症状を軽減するホルモンフリー商品の種類が増えています。例えば、美容部門では、皮膚のほてり、かゆみ、乾燥などの症状を軽減するヒアルロン酸系の商品が多く販売されています。
また、スウェーディッシュ・フラワー・ポーレーンを配合した商品の売れ行きも伸びているといいます。同商品は、乳がんリスクを高めるという女性ホルモンのエストロゲンを含まないもので、エストロゲン成分を避けたいと考えている女性を対象にしています。
GNGグローバルニュース2021年8月18日号 サイエンスニュースより
オリジナル記事:https://www.nutraingredients-usa.com/Article/2021/07/26/State-of-Menopause-Study-reveals-what-women-in-2021-are-experiencing
症状への対処として4割を超える女性たちが自然由来の商品を好むというこの調査結果から、この分野におけるウェルネス・フードの可能性を感じずにはいられません。
更年期症状は考えられているよりも早く始まっている?
また、北米更年期学会(NAMS)の学会誌メノポーズ(Menopause)に掲載された調査によると、女性を年代別に生殖期後期と閉経期移行期に分けて調べたところ、いわゆる更年期障害といわれる身体の症状や気分など精神的な状態にはどちらのグループにも共通点が多く見つかりました。
ほてり、発汗、睡眠障害、関節や筋肉の痛み、薄毛、肌のかゆみ、悲しい気持ちや憂鬱、落ち込み、物忘れなどメンタル面の不調にいたるまで共通していて、何らかの更年期症状を持っている調査回答者の半数(50%)は不安を感じると報告し、56%はいら立ちを感じる、また54%はなかなか集中できない、63%は物忘れが多いと報告しているとのこと。
更年期症状はこれまでに考えられていたよりも、かなり早い段階で始まっている可能性があり、比較的若い世代はそうした不調を訴えても、それを更年期障害というにはまだ早すぎる、とされ、適切なケアが受けられない可能性があるということです。
更年期の症状、閉経のずっと前に始まるとの新調査 2021/9/11
https://news.yahoo.co.jp/articles/669d36e383603a73f2563a5b0f75b63581128a81
こうした調査結果から、ウェルネス・フードによる更年期ケアを市場としてとらえると、一般的に更年期障害の対象となる50歳前後よりももっと若い世代にまで裾野を広げ、積極的にケアすれば不快な症状を未然に予防また緩和でき、アクティブライフを堪能できると訴求するマーケティング戦略が考案できるでしょう。
そのためには、対象となりうる女性に対し、こうした症状がより早い段階で起こりうるという啓発を与え、心の準備を促すことで、過剰な動揺や孤立を感じることなく適切な対処をして乗り越えていけると思われます。
一般常識として、女性に年齢をきくのは失礼だという概念が昔からありますが、近年、人の見かけ年齢と実年齢のギャップが広がり、男女問わずいわゆる「年齢不詳」な人が増えている実感はないでしょうか。
普段よく耳にするアラサー、アラフォーというキーワードがさらに上の年齢層へと発展し、アラフィフ(アラウンド50歳)、アラカン(アラウンド還暦、つまり60歳前後)といった更年期以降の年齢層の女性が「〇〇女子」などと自ら名乗り、まるで学生の頃のようにアクティブに趣味に興じたり、新しいチャレンジを始めたりする風潮がある昨今、自分の心身の不調がいわゆる「更年期障害」の一種なのだ、という認識を持つことは、自分が急に年をとり老け込んでしまうような悲観や落胆を与えかねません。
そこで、対象となる女性たちに対するマーケティング・コミュニケーションとしては、これからは更年期に代わる、ウェルビーイングに根ざした積極的な訴求表現の模索が求められるのではないかとも思います。
更年期と呼ぶか呼ばないかに関わらず、ウェルネス・フードの分野では自分の心身の変化に前向きに向き合えるようなムードづくりが今こそ求められているような気がします。
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