こんにちは、GNG武田です。
10月2日、東京ビッグサイトで開催された健康博覧会で、
「Longevityは健康食品市場を変えるのか―Anti-AgingからHealthspanへ、次世代ウェルネス市場の構造変化を読み解く」と題して講演しました。
今号から3回にわたり、この講演内容をウェルネスフードワールド向けに再編集し、Longevityとは何を意味するのか、科学はHealthspanまで到達しているのか、健康食品市場はどう変わるのか、という順にお届けします。
最近、海外の食品・サプリメント市場で「Longevity」という言葉を目にする機会が増えています。
日本語では「長寿」や「健康長寿」と訳されることがありますが、その訳し方によって、対象者やベネフィット、市場の範囲は大きく変わります。単に長く生きることを意味するのであれば、高齢者や寿命延伸の市場に限定されます。一方、健康な状態を長く維持するための科学、商品、サービスまで含めると、睡眠、筋力、認知、代謝、腸、免疫など、既存のウェルネス市場全体に関係してきます。
エイジングをめぐっては、Anti-Aging、Active Aging、Healthy Aging、Healthspanなど、複数の言葉が使われています。どれも年齢を重ねることに関係していますが、示しているものは同じではありません。
Anti-Agingには、国際的に統一された公的定義を確認できません。一般には、老化の徴候や影響を遅らせ、抑えることを価値として提示する市場概念として使われています。老化に「対抗する」という考え方が中心にあり、美容や若々しさの維持とも結びついてきました。
Active Agingは、WHOが2002年に示した概念です。
年齢を重ねても生活の質を高められるように、健康、参加、安全の機会を最適化する過程とされています。身体の状態だけではなく、社会参加や生活環境も含む考え方です。
Healthy AgingについてWHOは、高齢期のウェルビーイングを可能にする「機能的能力」を発達させ、維持する過程と定義しています。病気がないことだけを求めるのではなく、本人の内在的能力と生活環境との関係を通じて、何ができるかを重視しています。
Healthspanは、一般に健康で機能的に生活できる人生の期間を示します。ただし、単一の国際的な統一定義があるわけではありません。日本で使われる
「健康寿命」は、集団の健康状態を表す指標として算出されることが多いため、研究や市場で使われるHealthspanと常に同じ意味になるわけではありません。
では、Longevityはどこに位置づくのでしょうか。
本連載では、より長く健康で機能的に生きるという目標の下で、老化研究、健康機能、介入、商品、サービスを束ねる包括的な市場概念として整理します。日本語へ無理に置き換えず、Longevityと表記するのは、「長寿」や「健康寿命」という訳によって市場の範囲を限定しないためです。
市場の見方も変化しています。
McKinseyが2025年に中国、ドイツ、英国、米国の9,000人を超える消費者を対象に行った調査では、米国のZ世代とミレニアル世代は成人の36%である一方、年間ウェルネス支出の41%超を占めていました。若い世代は、老後への対策としてではなく、現在の身体機能や将来の状態を維持する手段としてウェルネスに関わっています。Longevityを高齢者向け市場としてだけ捉えると、この変化を見落とす可能性があります。
一方、海外の業界関係者からは異なる見方も聞かれます。Longevityは、スポーツニュートリション、アクティブライフスタイル、Healthy Aging、疾患リスク管理などを包み込む新しい市場の傘になり得るという期待があります。
その反対に、従来のHealthy Agingを新しい言葉で装い直しただけであり、食品がLongevityやHealthspanを向上させたと証明することは難しいという問題提起もあります。
この二つの見方は、どちらか一方だけが正しいという関係ではありません。Longevityは新しい機能やベネフィットではなく、既存の機能を別の目的の下で捉え直す文脈だからです。新しい言葉が市場を生むのではなく、その言葉によって既存の科学、商品、サービスをどのように再編集するかが問われています。
本連載におけるLongevityの中心的な整理は、次の一文です。
「Longevityは一つの機能やベネフィットではなく、健康な状態を長く維持するための共通の文脈である」
次号は、老化メカニズム、Cellular Health、NAD+、Aging Clockを取り上げ、科学がHealthspanのどこまで到達しているのかを考えます。
【参考情報】
・WHO, Ageing
https://www.who.int/health-topics/ageing
・McKinsey & Company, The Future of Wellness trends survey 2025
https://www.mckinsey.com/industries/consumer-packaged-goods/our-insights/future-of-wellness-trends
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■ トレンドではなく、構造で考える
GNGが発信するコンテンツは、単なる情報提供ではありません。
世界で起きている変化を読み解き、日本市場における意思決定の質を高めるための「思考基盤」です。
食品・サプリメント業界は今、制度・科学・市場・消費者のすべてが同時に変化する転換点にあります。
この環境において求められるのは、トレンドを追うことではなく、「構造を理解し、設計できる力」です。
GNGは、この課題に対して三つの視点から体系的にアプローチしています。
『The Global Nutrition Insight Letter』
『ヘルスベネフィット解体新書』
『トランスペアレンシーマーケティング』
これらは個別のコンテンツではなく、GNGの思考体系そのものです。
『The Global Nutrition Insight Letter』では「世界を構造化」します。
『ヘルスベネフィット解体新書』では「前提を問い直し」ます。
『トランスペアレンシーマーケティング』では「価値を実装」します。
これらは独立したものではなく、理解し、解体し、設計するという一連の思考プロセスです。
GNGは、情報を提供するのではなく、意思決定の質を高めるための「思考法」を提供しています。
そしてこれこそが、日本発“世界商品”を生み出すための出発点であると考えています。
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