こんにちは、GNG武田です。
先週、台湾・台北で開催された「BIO Asia Taiwan」を視察しました。
会場を歩いていて、印象に残ったことの一つが、ブランド付き原料の存在感です。
海外のブランド付き原料を取り扱うディストリビューターのブースでは、数多くのブランドロゴが前面に掲げられていました。
一つの企業が複数のブランド付き原料を取り扱い、それぞれのロゴを来場者に分かりやすく見せています。日本の食品素材の展示会では、
これほど多くの原料ブランドが前面に出される光景は、まだあまり見られません。
ただし、これは台湾だけに見られる特殊な現象ではありません。米国や欧州では、健康食品やサプリメントの原料をブランド化することは、
以前から重要な事業戦略となっています。台湾の展示会で目にした光景は、ブランド付き原料が世界市場で定着していることを、
あらためて実感させるものでした。
1.なぜ原料をブランド化するのか
ブランド付き原料の役割として、まず挙げられるのが差別化です。
同じ成分名で販売される原料であっても、製造方法、品質規格、含有成分、安定性、安全性、科学的根拠などは必ずしも同じではありません。
しかし、成分の一般名称だけで流通していれば、それぞれの違いは市場から見えにくくなります。価格だけで比較され、より安価な原料へ置き換えられる
可能性も高まります。
原料に固有のブランド名を付けることで、特定の製法や品質規格、研究成果を、他の原料と区別して伝えられるようになります。
ブランドは、原料企業が長年かけて築いてきた差異を、市場が認識するための手段でもあります。
台湾の展示会で話を聞いた大手原料サプライヤーは、ブランド化の理由として「模倣防止」を挙げていました。健康食品市場では、注目を集めた原料や製品が短期間で模倣されることがあります。成分名や配合コンセプトは模倣できても、その企業が蓄積してきた研究、品質管理、知的財産、供給体制まで簡単に再現できるわけではありません。
ブランド名を明確に示すことは、正規の原料と模倣品を区別し、その原料に投資してきた企業の価値を守ることにつながります。
2.ブランド付き原料には企業姿勢が現れる
ブランド付き原料を考える際、ロゴや商標だけを見ても、その本質は分かりません。
ブランドを長期的に維持するためには、企業による継続的な投資が必要です。
どのような品質基準を設定するのか。安全性をどこまで確認するのか。どのような研究を行い、科学的根拠を蓄積するのか。
採用企業に対して、どこまで正確な情報を提供するのか。市場に問題が起きたとき、どのように責任を果たすのか。
こうした一つ一つの判断に、原料企業の姿勢が現れます。
ブランド付き原料は、単に原料に名前を付けたものではありません。品質、研究、情報提供、安定供給などに対する企業の取り組みを、継続的に市場へ示す仕組みです。ブランドを掲げることは、その原料に対して企業が責任を持つという意思表示でもあります。
これまで健康食品市場では、最終製品メーカーの企業姿勢が主に問われてきました。しかし、最終製品の品質や価値は、採用される原料にも左右されます。生活者が最終製品だけでなく、その製品を構成する原料や原料企業にも関心を向けるようになれば、原料企業も市場から直接評価される存在になります。
3.生活者の支持が採用を動かす
ブランド付き原料は、原料企業と最終製品メーカーの間だけで完結するものではありません。
その先にいる生活者に認知され、支持されることで、ブランドとしての価値が高まります。
台湾で話を聞いたサプライヤーからは、生活者の体感に基づく口コミにもブランド名が必要だという説明がありました。生活者がある製品を摂取して
良い体験をしたとしても、その原料を識別できなければ、別の製品を選ぶ際に同じ原料を探すことはできません。
固有のブランド名があれば、生活者はその名称を記憶し、検索し、他の人に伝えることができます。
米国の消費者調査でも、製品を選ぶ際にブランド付き原料を重視する人が増えていることが報告されています。これは、生活者が成分名だけでなく、
誰がどのような姿勢でその原料を提供しているのかにも関心を持ち始めていることの表れと考えられます。
最終製品のブランドオーナーにとっても、生活者に支持される原料を採用することは自然な選択です。認知されたブランド原料を採用することで、
製品の特徴を伝えやすくなり、類似製品との差別化にもつながります。
原料企業が生活者から支持されれば、最終製品メーカーによる採用が増え、採用製品が増えることで、さらに生活者との接点が広がります。
ブランド付き原料は、原料企業、ブランドオーナー、生活者の三者によって育てられていくものです。
4.日本も原料をブランド化する段階へ
日本では長い間、最終製品のブランドが前面に出る一方で、使用されている原料の供給企業やブランド名は、生活者から見えにくい状態が続いてきました。
原料は製品の裏側に置かれ、最終製品メーカーがどの企業の原料を採用しているのかを積極的に示さないケースも少なくありません。
原料サプライヤーや輸入商社が、供給元の情報を競合企業に知られたくないと考えることもあります。
しかし、成分や機能だけでは製品を差別化しにくくなっています。同じような機能を訴求する製品が増えるほど、どのような原料を選び、どのような根拠と品質に基づいて製品化したのかが、ブランドオーナーの姿勢として問われます。
日本でも、原料の品質や科学的根拠に投資し、それを固有のブランドとして育てようとする企業が増え始めています。海外のブランド付き原料を導入する
だけでなく、日本発の原料を世界市場でブランド化する動きも、今後さらに重要になるでしょう。
日本の原料企業は、高い製造技術や品質管理能力、長年にわたる研究成果を持っています。一方で、それらを市場が識別できる形にまとめ、継続的に伝えていくことについては、まだ取り組む余地があります。優れた原料を持っていることと、その原料が市場から選ばれることは同じではありません。
5.AI時代に高まるブランド原料の価値
今後は、生活者が検索エンジンだけでなく、生成AIに製品や原料について質問する機会も増えていきます。
AIがブランド名だけを理由に原料を評価するわけではありません。しかし、特定のブランド名に研究論文、安全性情報、品質規格、製造企業、採用実績などが継続的に紐づいていれば、その原料に関する情報は識別されやすくなります。
反対に、優れた原料であっても、情報が断片的で、誰が供給し、どの研究がその原料に該当するのかが分からなければ、
生活者にもAIにも正しく評価されにくくなります。
ブランド付き原料は、ロゴを付けることが目的ではありません。企業が蓄積してきた品質、研究、信頼、情報を、一つの名称のもとに結び付け、
市場から評価される状態をつくることに意味があります。
台湾の展示会で目にした数多くのブランドロゴは、単なるブース装飾ではありませんでした。原料企業自身が市場に向き合い、自社の原料に責任を持ち、
採用企業と生活者から選ばれようとする姿勢の表れでした。
欧米では、ブランド付き原料は差別化のための前提になっています。台湾でも、その流れが明確に可視化されていました。
日本もいよいよ、最終製品だけでなく、価値の源泉となる原料をブランドとして育てる段階に入り始めていることを実感した展示会でした。
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■ トレンドではなく、構造で考える
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世界で起きている変化を読み解き、日本市場における意思決定の質を高めるための「思考基盤」です。
食品・サプリメント業界は今、制度・科学・市場・消費者のすべてが同時に変化する転換点にあります。
この環境において求められるのは、トレンドを追うことではなく、「構造を理解し、設計できる力」です。
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『The Global Nutrition Insight Letter』
『ヘルスベネフィット解体新書』
『トランスペアレンシーマーケティング』
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『The Global Nutrition Insight Letter』では「世界を構造化」します。
『ヘルスベネフィット解体新書』では「前提を問い直し」ます。
『トランスペアレンシーマーケティング』では「価値を実装」します。
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