こんにちは、GNG武田です。
最近、「UPF(Ultra-Processed Foods:超加工食品)」という言葉を目にする機会が急速に増えています。
海外(特に米国)では既に、肥満や糖尿病、心血管疾患との関連が議論されるだけでなく、食品政策や食品産業そのものを左右するテーマとして扱われるようになっています。
一方で、日本ではまだ「加工食品は悪いのか」「添加物の問題なのか」といった断片的な議論が中心です。
そこで今回は、現在のUPFを巡る議論について、何が分かっていて、何が分かっていないのかを整理してみたいと思います。
1.そもそもUPFとは何か
UPFは一般的に、ブラジルの研究者らが提唱したNOVA分類に基づいて定義されています。
食品を加工度によって分類し、その中で最も加工度の高い食品群をUPFと呼びます。
典型例としては、
• 清涼飲料
• スナック菓子
• 菓子パン
• インスタント食品
• 冷凍食品
• プロテインバー
などが挙げられます。
ただし重要なのは、世界的に統一された公的定義はまだ存在していないという点です。
実際、米国では2025年にHHS、FDA、USDAが共同で「連邦政府としての統一定義」を策定するための意見募集を開始しました。
行政が正式な定義づくりに乗り出したこと自体が、UPFが単なる研究テーマから政策課題へ移行したことを示しています。
2.健康への悪影響は証明されたのか
UPFに関する最大規模のレビューとして、2024年にBMJで発表されたアンブレラレビューがあります。
約1,000万人を対象とした45のメタ解析を統合した結果、UPF摂取量の増加は、
• 心血管疾患
• 2型糖尿病
• 肥満
• うつ
• 不安
• 全死亡
などと関連することが報告されました。
この論文はUPF研究の大きな転換点となりました。
しかし、ここで誤解してはならない点があります。
このレビューが示しているのは、
「関連性」
であり、
「因果関係」
ではありません。
さらに著者自身も、多くのエビデンスの質は低~中程度であり、観察研究に依存していることを認めています。
つまり、
「UPFを食べると病気になる」
ことが証明されたわけではなく、
「UPFを多く食べる人は病気になりやすい」
ことが示された段階と言えます。
3.最近はRCTが増え始めている
これまでUPF研究の最大の弱点は、観察研究ばかりであったことでした。
しかし近年、この状況が変わりつつあります。
2019年にはNIHのKevin Hall博士らが、栄養組成を揃えた条件下でUPF食と非UPF食を比較するRCTを実施し、UPF食の方がエネルギー摂取量が増加し、体重増加につながることを報告しました。
さらに2025年には英国で、英国政府の食事ガイドラインに適合する条件下でも、最小加工食品群の方がより大きな体重減少を示したというRCTが発表されました。
これらの研究は、
「問題は糖質や脂質だけなのか」
それとも
「加工度そのものに意味があるのか」
という議論を大きく前進させています。
4.それでもなお残る疑問
一方で、依然として多くの研究者が慎重な姿勢を崩していません。
その理由は、
「何が悪いのか」がまだ分からない
からです。
例えば、
• 糖質が多いからなのか
• 脂質が多いからなのか
• 塩分が多いからなのか
• 食品添加物なのか
• 食品構造の変化なのか
• 食べる速度なのか
• 満腹感への影響なのか
まだ結論は出ていません。
UPFという言葉は広く使われていますが、その健康影響の作用機序については現在も研究途上です。
5.いま本当に起きていること
私が最も注目しているのは、個々の研究結果ではありません。
むしろ、
食品評価の軸が変わり始めている
ことです。
これまで食品は、
• カロリー
• 脂質
• 糖質
• 食物繊維
• ビタミン
といった栄養成分で評価されてきました。
ところがUPFの登場によって、
「何が入っているか」
だけでなく、
「どのように作られたか」
が評価対象になり始めています。
これは非常に大きな変化です。
サプリメント業界で言えば、
ヘルスベネフィットから作用機序へ関心が移っている現象に近いものがあります。
評価対象そのものが変わり始めているのです。
6.まとめ
現時点で言えることは三つあります。
第一に、UPF摂取量の増加と様々な健康リスクとの関連を示すエビデンスは急速に蓄積しています。
第二に、その因果関係や作用機序については、まだ十分に解明されていません。
第三に、UPFはもはや栄養学だけの問題ではなく、食品政策や食品産業全体の方向性を左右するテーマになりつつあります。米国政府が統一定義づくりに乗り出したことは、その象徴と言えるでしょう。
今後の焦点は、
「UPFは悪いのか」
ではなく、
「加工度という新しい評価軸を、社会はどのように扱うのか」
になるのかもしれません。
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