こんにちは、GNGの和泉です。1月25日号のグローバルニュースをお届けいたします。
今号では、ニュージーランドの自然健康食品市場の洞察、プロバイオティクスが肝機能を改善する可能性や歯肉炎の回復をサポートする可能性、クルミが心血管疾患リスクを低下させる可能性、L-カルニチンとシンバイオティクスの組み合わせが女性の肥満対策に役立つ可能性、そしてオーストラリアを拠点とする培養肉企業が2025年の消費者向け製品としての商業化を目指す等、様々なニュースを取り上げています。また、規制関連では、業界メディアのNutraingredients-asiaで2023年に最も読まれた10の規制関連ニュースを紹介しています。是非ご覧ください。
培養肉のニュースが取り上げられていますが、2023年9月、環境サステナビリティおよびヴィーガン分野に特化したメディアgreen queenで、「培養肉に関する規制:資金調達から政策まで最も強力的な10カ国」という記事が掲載されました。培養肉は気候変動と戦うための重要な食料解決策の 1 つとされ、現在、世界中で 100 社を超えるスタートアップ企業がこのテクノロジーに取り組んでいます。
培養肉分野の成長で重要となるのが政府の支援であり、green queenでは培養肉事業のサポートに積極的とされる代表的な10カ国を紹介しています。ここでは代表して以下の3カ国を紹介します。
・シンガポール:2020年12月にEat Just社のチキンナゲットに対し、世界で初めて培養肉の販売を承認した国として有名です。それ以来、多くのフードテック製品を承認し、細胞培養技術を使用した食品製造のための食品加工ライセンスをEsco社に付与しています。培養肉製品はシンガポール食品庁(SFA)によってケースバイケースで承認され、生産者は安全性評価を提出し、市販前承認を得る必要があります。
・イスラエル:シンガポールと並ぶ培養肉産業の世界的リーダー。政府機関のInnovation Authority(イノベーション・オーソリティ)は、国内の14の企業と10の大学・研究機関で構成される培養肉コンソーシアムに1,800万ドルを投入しています。研究資金以外でも、政府はスタートアップ企業や異種たんぱく質産業全体のインフラ整備に1,300万ドル以上を投じています。
・米国:培養肉の販売と消費の承認に向けて動き出しています。米農務省は2021年、タフツ大学に対し、史上初の政府資金による研究プロジェクトとなる新しい国立細胞農業研究所の創設資金として1,000万ドルの助成金を提供しています。
その他、EU、オランダ・ノルウェー、英国、オーストラリア、ニュージーランド、そして日本、中国が紹介されていました。
日本でも、培養肉および代替肉の規制の制定を検討していることが報じられ、厚生労働省は2022年12月より、食品衛生に関する専門家部会で培養肉などの議論を開始しました。資金面では、政府は日本のスタートアップ企業であるインテグリカルチャー社の商業用バイオリアクター建設に対し、2020年に2.4億円(220万米ドル)の助成金を授与するなどしています。
皆様のビジネスのお役に立てますと幸甚です。
和泉 美弥子
この記事について
GNGでは、会員向けに世界各国の健康・食・栄養に関するニュースをセレクトし、日本語に要約したものを月に2回、ニューズレター「GNGグローバルニュース」として配信しています。
この記事では、その会員向けニューズレターの一部を抜粋してご紹介させていただきます。
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■GNGグローバルニュース 2024年1月25日号 トピックス
Market News マーケット
●NZの自然健康食品・機能性食品市場に関するレポート
Products News 商品情報
●「ビーガンコラーゲン」VeCollal:肌へのベネフィットを示す研究結果
Science News サイエンス
●低用量の加熱殺菌処理TWK10が運動パフォーマンスを向上させる可能性
●プロバイオティクスによる腸内細菌叢のバランス維持が肝硬変患者の肝機能を改善する可能性
●プロバイオティクスが歯肉炎の回復を促進する可能性
●クルミとマイクロバイオームの相互作用が心血管系の保護に有効な可能性
●L-カルニチンとシンバイオティクスの併用が女性の肥満対策に役立つ可能性
Company News 企業情報
●ImperialOel社のオメガ3市場におけるイノベーション
●Danone社、米国のオーガニック乳製品部門をPlatinum Equity社に売却へ
●培養肉企業のMagic Valley社、パートナーシップ構築と生産の拡大へ
Regulatory News 法規制
●2023年にNutraingredients-asiaで読まれた記事 TOP10
●FDAによるサプリメント製造施設の海外査察が倍増
●EFSA、動物実験削減を目指した新規ツール「TKPlate」を導入
[今号のハイライト]2023年にNutraingredients-asiaで読まれた記事 TOP10
[2023/12/19] [nutraingredients-asia.com]
Nutraingredients-asiaが、2023年に掲載され最も多く読まれた記事のトップ10を発表した。
中国のNMNサプライヤー、米国のNMN規制に「それほど悲観的な状況ではない」
アンチエイジング成分として話題のNMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)は、米国で一度はサプリメント成分として認可されたが、2022年後半、FDAはNMNが新薬としての研究が認可されていたことを確認後、NDI(新規食品成分)から除外した。但し、上海を拠点するNMN原料会社は、米国での申請およびビジネスチャンスに希望はある、と述べている。
韓国、ヘンプシードオイル商品に「CBD」と「THC」の用語使用を禁止する意向
「CBD」はカンナビジオールを、「THC」はテトラヒドロカンナビノールを示し、韓国ではどちらも麻薬成分として分類されている。食品医薬品安全処(MFDS)は、この2つの用語は欺瞞的商品広告として問題が生じる恐れがあるとして、「CBD高含有」や「CBD ○○mg」などの使用を禁止したいとしている。
中国の規制の厳格化により乳幼児用粉ミルク市場で生き残れるのは国内大手ブランドと多国籍企業のみ?
中国では、乳幼児用粉ミルクの新しい国家基準(GB)を設定した。これにより、メーカーはカロリー、炭水化物、たんぱく質、微量栄養素の新しい設定含有量に基づき、商品の再配合を余儀なくされる。例えばビタミンE、K1、B1などの微量栄養素には上限が設けられた。
東南アジア市場へセンシンレン、ターメリック、ブラックジンジャーの輸出を促進:タイ
タイ政府は、センシンレン(Andrographis)、ターメリック、ブラックジンジャーの、近隣東南アジア市場への輸出強化を発表した。この3原料は、汎用性、使用に関する入手可能な情報量、国内外市場における使用の可能性に基づいて選定された。タイ伝統代替医療(DTAM)によると、これらのハーブは、2023~2027年の「ハーブチャンピオン」と称されている。
中国、乳幼児用粉ミルク商品のラベル表示規制が厳しく
中国では、2023年10月から、乳幼児用粉ミルク商品のラベルに「輸入原料」や「輸入乳供給源」などの表示を禁止した。商品ラベル表示の他、商品登録、現場検査でも規制が強化される。例えば、中国市場監督管理局(SAMR)は、上記2つ以外にも「海外原産」や「汚染していない乳供給源」といった『不明瞭な』表示も禁止する意向を示している。
パーム油由来トコトリエノールのヘルスクレームを許可:マレーシア
マレーシア保健省は、特定の用量のパーム油由来トコトリエノール(Palm TRF:パームTRF)を含む製品について、「認知機能の健康」と「抗酸化作用」に関連するヘルスクレームを承認した。パームTRFまたはパームトコトリエノール/トコフェロール複合体として知られる成分を含む食品・飲料、サプリメントは、「TRFは認知機能を改善する可能性がある」や「TRFは抗酸化剤であり酸化ストレスの軽減に役立つ」といった表示が可能となる。
保健食品向けの新しい機能表示の承認に向けたガイドライン:中国
中国では、企業や個人による保健食品の機能表示申請を支援する技術ガイドラインが導入され、新たな機能表示が期待されている。試験的プログラムでは、新しい機能表示は1)食事の栄養素を補う、2)体の健康状態を維持または改善3)疾病発症リスクの危険因子の低減、という3つの条件を満たす必要がある。
栄養失調を防ぐための主食への栄養強化に着手:中国
中国は、公衆衛生の強化および栄養失調対策として、主食における栄養強化の義務化を検討している。国家食品安全リスク評価(CFSA)の発表によると、乳製品、コメ、小麦粉、植物油などさまざまな食品への栄養強化を義務付ける。例えば、低温殺菌乳製品や発酵食品にはビタミンAやD、コメや小麦粉にはビタミンB1、B2、葉酸の強化などが考えられている。
機能性表示食品(FFC)制度は小規模企業の参入を奨励:日本
新しいデータによると、日本のFFCは小規模ビジネスの業界参入を奨励している。学術誌Nutrientsに掲載された調査データに基づくと、調査対象169社のうち121社(71.6%)が、FFCを介した新規参入企業だった。FFCは特定保健用食品(FOSHU)に比べ、ヒト臨床試験を必要としないため参入障壁が低いと考えられている。
台湾、ユーカリの葉および抽出物の食品原料としての使用を制限
台湾当局は、ユーカリ(Eucalyptus globulus)の葉および抽出物を、食品香料以外の食品原料としては使用できなくなると発表した。これらは、安全性や医学的特性を再審査した後に決定された。ただし、ユーカリの葉およびその抽出物、葉のエッセンシャルオイルを食品香料として使用したのど飴やチューインガムは引き続き市場で販売することが可能であり、規制変更の影響は受けない。
(会員向けニューズレター「GNGグローバルニュース2024年1月25日号」より抜粋)
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