こんにちは、GNG武田です。Natural Products Expo West 2024が、いよいよ来週、開催されます。今からワクワクしています。
今年は、展示会の会場でインフォーママーケッツジャパンさん主催の視察ツアーの参加者の皆さんに、最新サプリメント市場動向や展示会の見どころなどをお話しする機会を頂きました。参加者の皆さんに、展示会や店舗でご覧になったことのご理解が深まるように、トレンドと関連付けてお話しさせて頂く予定です。その際、とても役に立つのが10 Key Trendsを含めたNew Nutrition Business(NNB)のケーススタディです。
「現象には必ず理由がある」
これは、福山雅治さん主演ドラマ「ガリレオ」の中で、主人公の湯川(福山さん)が使う有名なセリフです。湯川は物理学者ですので科学的に物事を考えるのでこのような言葉が出てきますが、マーケティングもサイエンスです。サイエンスには、再現性が求められます。ケーススタディを深く理解することで、再現性のある施策が生み出されます。
NNBのケーススタディを読む際に重要なことは、ターゲットコンシューマーを意識することです。ターゲットコンシューマーとは、ロジャースのイノベーションの普及理論の応用版で、消費者を次の3つに分けて分析します。
1.テクノロジーコンシューマー (10%)
健康に高い関心を持つ消費者層であり、健康に良いとされる新製品が発売したら真っ先に試すグループ。また、自家栽培で無農薬野菜等を作ったり、比較的深刻な健康への悩みを持っており、心臓発作などの健康障害をきっかけに健康への関心が高まった人、アレルギーを持つ子供の母親等もこのグループに含まれる。一度彼らの信頼を得るとロイヤルカスタマーとして継続して製品を購入してくれる。
2.ライフスタイルコンシューマー (30%)
新しい製品に敏感であり、それらを彼らのへルシーなライフスタイルに取り入れる傾向がある消費者層のこと。比較的高額な商品の購入もいとわず、典型的な例としては米国のwhole Foods等の健康に特化したナチュラルフードスーパーで買い物をする健康意識の高い消費者で ある。ブランドがメジャーであるかどうかには興味はなく、新奇性や製品イメージにフォーカスする。
3.マス・マーケットコンシューマー (60%)
実利的、一般的な消費者で、新しいものにあえてチャレンジするリスクを負うことをしない。製品購入の際、「必要である」という事実が購入動機になり、製品の斬新な見た目等は購入意欲にならない。メジャーブランドであると安心して購入するので、認知されていないブランドに手を出すことは稀である。
NNBのケーススタディを読む際は、その事例がどのマーケットに向けた事例なのかを理解をしたうえで読むことが重要です。
今号のトレンドケーススタディは、10 Key Trendsと結び付けて考察していますが、取り上げられた商品は「スーパーマーケット売上データ」で選ばれている商品です。つまり、マス・マーケットコンシューマーに向けた事例である点に注意して下さい。
ウェルネスフードは、導入時(発売時)は、テクノロジーコンシューマー(高付加価値の商品、メディカルなど機能性を重視する消費者層)をターゲットに低ボリューム、プレミアム価格で販売されます。その後、時間とともに多くの消費者層にアピールできるようになり、販売数量が増え、価格が下がり、ライフスタイルコンシューマー(ウェルネス、疾病予防に対する関心が高い。新ブランドを取り入れ、プレミアム価格で購入する)に移行し、最終的にマスマーケット(ブランドの知名度、信頼性を最も重視する。スタンダードな商品を購入する価格志向の消費者層)に移っていきます。
米国で店舗視察をする際も、この店の主要顧客はどのターゲットコンシューマーなのかを意識しながら商品を観察することが大切です。そして、Expo Westに出展される商品の多くは、テクノロジーコンシューマー、ライフスタイルコンシューマーに向けた商品です。
この視点と10 Key Trendsを意識して「現象」を分析して頂くと「理由」が明らかになると思います。
今号のNestle社の戦略ケーススタディは、同社がサプリメント事業に力を入れている背景が分析されています。この点も、当日のセミナーで事例をあげてお話しする予定です。
武田 猛
この記事について
GNGでは、会員向けに英国発信の食品・栄養・健康分野の業界専門誌【NNBマガジン(New Nutrition Business)】を日本語に要約し、定期的にお届けしています(月1回)。
毎月、最新情報を「定点観測」することで、ブランド戦略、マーケット分析、法規制、新技術に関する世界の動向を素早くつかむことができます。
この記事では、その会員向けマガジンの一部を抜粋してご紹介させていただきます。
■NNB(New Nutrition Business)2月号 トピックス
今回、会員向けにお届けしたNNB日本語要約版のタイトルは以下の通りです:
●乳糖フリー乳の成長が低迷するプラントミルクビジネスを上回る
●マスマーケットで真の成功を収めるための黄金ルール
●主流メディアはもはや食品と健康に関する信頼できる情報源ではない
●ムード&マインドバーがマスマーケットに進出
●冷蔵グラノーラバーはより新鮮なスナックへの需要に応えるだろうか?
●多様な食の志向に対応する嗜好品ブランド
●より多くのたんぱく質、より少ない糖質、そして美味しさがスポーツブランドを成長させる
●消費者トレンドとの強い結びつきが長期的な成功の原動力に
●トレンドに連動する新興ブランドに追い抜かれた市場リーダー
●サプリメントと機能性飲料におけるNestlé社の大きな野心
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[今号のハイライト]
乳糖フリー乳の成長が低迷するプラントミルクビジネスを上回る
33年の歴史をもつ米国のプラントミルクカテゴリーにおいて、プラントミルクの売上が数量ベースで初めて減少した2022年の6.8%減に続き、2023年も6.5%減となった。対照的に乳糖フリー乳は、数量ベースで6.2%増、金額ベースで10%増となった。乳糖フリー乳はいまやあらゆる種類のプラントミルクの売上を上回り、販売量はオーツミルクの4倍である。この差はさらに広がるだろう。
(会員向けニューズレター「NNBマンスリーレポート2024年2月号」日本語要約版より抜粋)
【NNB(New Nutrition Business)】とは
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