本日配信のGNGニューズレターでは、冒頭の巻頭言にて弊社代表・武田が、アルツハイマー病治療薬アデュカヌマブの革新性と、認知症の前段階であるMCIへの対策の重要性について取り上げています。
国内ニュースからは、ウェルネスフードアワード授賞式、グランプリはロート製薬の「ロートクリアビジョンジュニア」、ウェルネス総合研究所、ウェルネスライフジャパン2021にてリリースシンポジウムを開催、メタジェン、クロレラ摂取による腸内環境を介した有益効果を確認といった話題を取り上げています。
この記事では、その会員向けニューズレターの一部を抜粋してご紹介させていただきます。
こんにちは、GNG武田です。
米FDA(食品医薬品局)は6月7日、ADUHELM™(一般名:アデュカヌマブ)をアルツハイマー病の根本原因に対する初の治療薬として条件付きで承認しました(迅速承認)。アデュカヌマブは、アルツハイマー病患者の脳内に蓄積したアミロイドβを除去することで、疾患の悪化を抑制するとされています。
米バイオジェン社のプレスリリースでは、
「本迅速承認は、臨床的有用性(臨床症状の悪化抑制)の予測可能性が高いバイオマーカーであるアミロイドβプラークの減少に対するADUHELMの効果を実証した臨床試験のデータに基づくものです。なお、本迅速承認の要件として、今後検証試験による臨床的有用性の確認が必要となります。」
として、引き続き有効性の確認が必要なことを表明しています。
ADUHELMの有効性は、アミロイドの蓄積が確認されたADの初期段階(軽度認知障害および軽度認知症)の患者様を対象とした2つの臨床第Ⅲ相試験;EMERGE(試験1)、ENGAGE(試験2)で評価されました。また、ADUHELMの効果は、プラセボ対照無作為化二重盲検用量設定第Ⅰb相試験であるPRIME(試験3)においても評価されました。これらの試験において、ADUHELMは、一貫してアミロイドβプラークの減少に対する用量依存的かつ投与期間依存的な効果(ENGAGE試験では59%の減少[p<0.0001]、EMERGE試験では71%の減少[p<0.0001]、PRIME試験では61%の減少[p<0.0001])を示しました(同プレスリリースより)。
公益社団法人 認知症の人と家族の会は、HPで
「認知症の人と家族が、大きな期待を持って注目していたアルツハイマー病の疾患修飾薬(治療薬)としてアデュカヌマブが世界で初めて承認されたことは、根本的な治療法を長い間待ち望んでいた私たちにとって、大きな喜びであり、新たな扉を開く希望の光と言えます。」
とコメントを発表しています。
合わせて
「一方、この薬の効果は、早期アルツハイマー病で確認されており、治療対象が限定されています。また、研究開発に莫大なコストがかかっているため、非常に高価なものになると予測されています。アミロイドPETや髄液検査などの発症前の診断方法の健康保険適用とともに、わが国で誰もが希望すれば安心して治療が受けられるようになるまでには、多くの課題があると認識しています。」
と課題も表明しています。
アルツハイマー病では多くの場合、50代で脳内にアミロイドβの蓄積が始まります。そして、60代の後半から別の異常たんぱく質「タウ」が蓄積し、神経細胞が死滅し始めます。すると軽度な認知能力の低下が起きますが、社会生活に支障はありません。タウの蓄積が進むにつれて神経細胞が減っていき、ついにアルツハイマー病を発症します。一度減ってしまった神経細胞が増えることはありませんので、発症前にアミロイドβの蓄積を防ぐ必要があります。
つまり、将来の認知症リスクを下げたいなら、40代や50代といった若い世代から、対策に着手することが望ましいということです。
対策のポイントの一つが、脳の血管の老化を防ぐことと言われています。この分野はウェルネスフードの出番です。地中海式ダイエットが認知症予防に有効であるというエビデンスは数多く報告されています。オリーブオイル、魚介類、野菜・果物、ナッツなどを積極的に摂取する食事法は血管のウェルネスにも有効です(日本人は食塩摂取量に注意が必要なようです)。
また、異常たんぱく質が蓄積する原因は、分解が進まないためだといわれています。体内のたんぱく質は、合成と分解のバランスによって適切な量に保たれています。この分野の研究は日本の「お家芸」で、大隅良典東京工業大学栄誉教授をはじめ多くの日本人研究者が研究してきた「オートファジー」にも繋がります。オートファジーを活性化させる食品成分は、豆類や発酵食品に多く含まれるポリアミンの一種である「スペルミジン」、レスベラトロール、アスタキサンチン、カテキンなどが挙げられます(『LIFE SCIENCE』吉森保、日経BP)。
今号では、アデュカヌマブの革新性と、認知症の前段階であるMCIへの対策の重要性にも触れたいと思います。
(株)グローバルニュートリショングループ 武田 猛
GNGニューズレター(国内情報) 2021年6月16日 トピックス
<国内ニュース(要約)>
●キユーサイ、睡眠とストレスのW機能の機能性表示食品『おやすみメンテ』を新発売
●アサヒグループ食品、『ビオマイン』を機能性表示食品としてリニューアル発売開始
●雪印メグミルク、『記憶ケアヨーグルトβラクトフェリン』を6月8日(火)より新発売
●キユーピー、原材料がほとんど植物由来のスクランブルエッグ風商品「HOBOTAMA」を業務用市場向けに発売
●2021年4月のドラッグストア販売額、「健康食品」は前年同月比 9.6%の増加
●2021年4月の通販売上高、「健康食品」は対前年同期比13.1%増加
●ナッツに関する消費者調査、アーモンドがビタミンEや肌や髪への効果期待でスナックとして食べるナッツの中でトップに
●家計調査、4月のサプリメントの支出額は前月同月比より3.6%の減少
●キユーピー、令和3年度イノベーション創出強化研究推進事業に採択決定、鶏卵の認知機能改善効果を明らかにする方針
●不二製油グループ本社、責任ある大豆、大豆製品の調達方針を策定
●フレッシュストック™魚の消費拡大、共同プロジェクトが始動、キユーピー
●ウェルネスフードアワード授賞式、グランプリはロート製薬の「ロートクリアビジョンジュニア」
●ウェルネス総合研究所、ウェルネスライフジャパン2021にてリリースシンポジウムを開催
●メタジェン、クロレラ摂取による腸内環境を介した有益効果を確認
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[今号のハイライト]
キユーピー、令和3年度イノベーション創出強化研究推進事業に採択決定、鶏卵の認知機能改善効果を明らかにする方針
[原文:kewpie.com]
キユーピー株式会社は、生物系特定産業技術研究支援センターが公募する、「令和3年度 イノベーション創出強化研究推進事業」に応募し、「鶏卵市場拡大に向けた卵の認知機能改善研究と付加価値鶏卵の開発」のテーマで採択された。
同研究では、鶏卵の摂取による「認知機能改善効果」を明らかにするとともに、改善に関与する成分を特定し、その効果をヒト試験で確認することを目的としている。また、機能性成分を高含有する付加価値卵の開発にもつなげていく。
具体的には、2021(令和3)年度から2023(令和5)年度までの3年間にわたり、1)ヒト試験で、鶏卵の認知機能改善効果を世界で初めて調査・確認、2)鶏卵に含まれる認知機能改善効果の成分を同定し、ヒト試験で効果を確認、3)認知機能に関わる機能性成分を高含有する付加価値鶏卵を開発するという流れで行う予定だ。
「平成29年版高齢社会白書」(内閣府)によると、認知症高齢者数が2025年には約5人に1人になると推計されているが、現在のところ認知症に対する効果的な治療法は存在していない。鶏卵およびその関与成分の摂取による認知症の予防を明らかにすることができれば、膨れ上がる医療費の低減に寄与するだけでなく、農林水産業・食品産業の発展につながることが期待される。
(会員向けニューズレター「GNGニューズレター2021年6月16日号」より抜粋)
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