HSRの利用、目標に達しない場合は義務化も(ニュージーランド)、ほか|GNGグローバルニュース2024年7月10日号

こんにちは、GNG武田です。
欧州のNutri-Score制度と同じように、FSANZで導入されている栄養プロファイル制度にHealth Star Rating Systemがあります。
Health Star Rating System(HSR)は、下記の3つの観点から、オーストラリアで開発された独自のアルゴリズムに基づいた計算方法(Health Star Rating Calculator)を活用し、加工食品に含まれる栄養プロファイルを総合的に計算、分析、評価し、星の数で評価しています。

1.カロリー(キロジュールKJ)
2.リスクのある栄養素の含有量:飽和脂肪酸、食塩、砂糖の含有量
3.健康的な栄養素の含有量:食物繊維、プロテイン、フルーツ、野菜、ナッツ、豆

HSRは、企業が、加工食品のパッケージの前面に星の数で評価した栄養プロファイルを表示できる任意の制度です。2014年にオーストラリア&ニュージーランドで開始され、星の数が多いほど栄養価高い食品であると評価されます(星の数は、0.5から最高5までで評価されます)。消費者は、パッケージの星の数を見ることで、簡単に健康的な食品を選択することができる仕組みです。

HSRが導入された背景は、オーストラリアでは肥満が社会問題となっており、成人の63%、子供の1/4が肥満もしくは過体重であり、健康的な食生活の必要性が指摘されていました。
加工食品には、栄養成分表示が義務づけられていましたが、多忙な消費者が食品を購入する際、栄養成分表示を読んで、健康的な食品を選択することは難しく、星の数であれば、お店で健康的な食品を選びやすい、という観点から導入されました。

New Nutrition Businessは、欧州のNutri-Score制度についてしばしば取り上げてきました。NNB6月号では、事実上失敗である、と分析しています。スイス最大のスーパーマーケット・チェーンであるMigros社は、自社の製品からこの表示を削除することにした、と報告しています。

HSRについてどうかと言いますと、制度導入10年目の今年11月14日までに60%の製品に導入されるという目標に対して、今年初めの調査結果では、採用率は3割程度にとどまっていることが分かりました。オーストラリア、ニュージーランドの業界からは、制度の評価に対する不満があるようで、これはNutri-Score制度と同じようです。2025年11月15日までの達成目標が70%のようですが、目標に達さない場合、政府はこの制度を義務化に踏み切る意向を示しているようです。

日本でも栄養プロファイル制度に対する議論は進んでいるようですが、導入に対しては諸外国の事例から学ぶことが多そうです。

武田 猛

この記事について

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■GNGグローバルニュース 2024年7月10日号 トピックス

Market News マーケット
●Vitamin Shoppe、「Health & Wellness Trends Report」を発表

Products & Technology News プロダクツ&テクノロジー
●プラントベースシーフードメーカー、イノベーションで巻き返しを図る
●Rothamsted Research社、オメガ3生産技術のライセンスをYield10社に付与
●Nutrition From Water社、微細藻類ベースホエイの生産規模を拡大

Science News サイエンス
●生きた微生物摂取はサルコペニアリスクを低減する可能性
●キムチに含まれるnF1は免疫細胞を活性化する可能性
●ビート摂取はアスリートの運動後炎症を低減する可能性
●食物繊維に耐え、適応する腸内微生物とは

Company News 企業情報
●Danone社、精密発酵への取り組みを強化するプロジェクトの構築へ

Regulatory News 法規制
●HoA、人気ハーブを手当たり次第に規制か?
●HSRの利用、目標に達しない場合は義務化も(ニュージーランド)
●デンマーク、家畜に炭素税を導入 牛1頭100ドルの負担

[今号のハイライト]HSRの利用、目標に達しない場合は義務化も(ニュージーランド)

[2024/6/19] [nutraingredients-asia.com]

オーストラリアやニュージーランドにおいて、任意ベースで採用されている評価システム、「Health Star Rating System」(HSR)だが、この先、利用率が目標に達さない場合、政府はこのシステムの義務化に踏み切る意向を示している。

HSRは2014年にラベル表示に導入されたもので、5つまでの星の数によって食品の評価を行い、数が多いほど健康的な選択肢であることを表す。2019年から5年間の見直しが行われ、ラベル表示のパーセンテージに関する目標が決められた。2023年11月14日までに50%、2024年11月14日までに60%、2025年11月15日までに70%の商品にラベル表示をするという目標だ。
だが、2024年初めに行われた利用度調査では、利用率がニュージーランドの商品の30%、オーストラリアでは32%にとどまっているのだという。

ニュージーランドの政府機関は「消費者の83%は、初めての食品を購買する際、HSRを見ると回答し、また61%は買い物時の半分ほど、22%は時々参考にすると答えている。また、消費者の80%から、同評価システムを信用するという回答を得ている」と、システムの導入に自信を示し、最終目標に達しない場合、システムの義務化を話し合う機会を設けると断言した。

だが、同システムに対する業界の人気は低く、業界内でHSR利用度調査を行ったところ、以前、導入していた企業でも、84社は商品全体ですでにHSRの利用を止め、再開する予定もないという。その主な理由として、商品のラベルにスペースがない、商品に対する評価に疑問があり、誤解される恐れがある、さらに、商品が低く評価されている、といった意見が挙げられている。

利用度調査では、多くの回答者から、HSRの評価は不公平だと感じる回答が寄せられており、例えば、「自然」食品より人工甘味料など添加物を含有した商品のほうが高い評価を得たケースもあるという。また、低い評価をラベルに掲載すれば、売上にネガティブな影響を及ぼすという意見もみられた。

(会員向けニューズレター「GNGグローバルニュース2024年7月10日号」より抜粋)

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18年間の実務経験と20年間のコンサル経験を積み、38年間一貫して健康食品ビジネスに携わる。国内外750以上のプロジェクトを実施。「世界全体の中で日本を位置付け、自らのビジネスを正確に位置付ける」という「グローバルセンス」のもとに先行する欧米トレンドを取り入れたコンセプトメイキングに定評がある。世界各地にネットワークを築き上げ、情報活用サービス「グローバルニュートリション研究会」主宰。食品会社、化粧品会社、製薬会社の健康食品部門に対して、商品開発・マーケティング・海外進出などのコンサルティングを行っている。人が幸せに生きるためには健康が第一である。健康食品産業は「幸せ創造産業」である、という信念のもと、クライアントの成功を通じ、消費者に支持される業界を目指し、業界で働く人すべてが自分の仕事に誇りと自信をもてるようにしたいという想いから、業界健全化活動にも取り組んでいる。

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