こんにちは、GNGの和泉です。
4月25日号のグローバルニュースをお届けいたします。
今号も、様々なマーケットニュースや最新の研究、規制に関する情報など、海外業界メディアによる最新記事を紹介しています。
今号では、長寿者の腸内細菌叢のタイプは若者と同じであるという研究結果に関する記事が紹介されています。
腸内細菌叢に対する発酵食品の有用性は多くの人に認知され、発酵食品を多く摂取することで腸内細菌叢の多様性が高まり炎症が抑制されることが研究でも示されています。
しかし日本と比べて発酵食品を食べる習慣が少ない米国では、腸の健康の維持・向上ため、プロバイオティクスサプリメントを摂取している人が多く存在します。米国のプロバイオティクスサプリメント市場は、数十億ドル規模と言われています。
ご存じの方も多いと思いますが、3月28日に配信された米国ニュースメディアのThe Washington Post(以下ワシントン・ポスト紙)で、健康な人の場合、プロバイオティクスサプリメントにはほとんど効果がない可能性があるとの記事が配信されました。
同紙は、「プロバイオティクスサプリメントが過敏性腸症候群や炎症性腸疾患の症状を軽減することが研究により判明し、下痢予防、抗生物質による副作用を軽減する効果もある」ことを認めていますが、数種類の細菌株を集中的に摂取すると、腸内の善玉菌と悪玉菌の割合がバランスを崩すdysbiosis(ディスバイオシス)と呼ばれる状態になる可能性があると述べています。
同紙によると、健康な成人を対象とした抗生物質とプロバイオティクスの併用に関する研究では、プロバイオティクス摂取群の腸内細菌叢は5カ月経っても正常な状態に戻らず、対照群や便の移植群に比べ腸内細菌叢の多様性が低いことも判明しました。また、他の研究では、プロバイオティクス摂取群のうち血糖値とインスリンレベルが悪化したグループが存在したことから、プロバイオティクスサプリメントが人によって全く異なる効果をもたらす可能性があると結論付けています。
そのためワシントン・ポスト紙は、プロバイオティクスサプリメントではなく、プレバイオティクスやポストバイオティクスも同時に摂取できるヨーグルト、ザワークラウト、キムチ、ケフィアなどの発酵食品を食べることを推奨するとしています。
この記事に対しInternational Probiotics Association(国際プロバイオティクス協会)は即座に反応し、同協会のHPに以下の反論を掲載しました;
●現在までにプロバイオティクスサプリメントが原因で健康人が死亡したという報告はなく、プロバイオティクス食品およびダイエタリーサプリメント市場は、世界中で様々な安全性、品質、製造手順が規制され、科学的根拠を基に確立されている。
●ワシントン・ポスト紙の記事は、科学的証拠ではなく「ソーシャルメディア」と思われるものを用いて 結論を導き出しており、プロバイオティクスが腸内細菌叢にダメージを与えるとする内容は科学的な裏付けがない。
●発酵食品に含まれる微生物はプロバイオティクスではなく有益な微生物と考えるべきであり、発酵食品の全てにプレバイオティクスやポストバイオティクスが含まれているわけではない、 また、加熱処理または低温殺菌されている場合、すべての発酵食品が生きた微生物を含むわけではない。
国際プロバイオティクス協会は、総括として「ワシントン・ポスト紙は消費者を恐怖に陥れるようなソーシャルメディアによるエビデンスに頼るのではなく、ポジティブな研究に注目すべきである」と述べています。
今回のケースのように、メディアが発信した記事に対し業界団体が素早く対応し、消費者自身で何が正しいのかを判断できる状況をつくりだすことが非常に重要であると感じました。
皆様のビジネスのお役に立てますと幸甚です。
和泉 美弥子
この記事について
GNGでは、会員向けに世界各国の健康・食・栄養に関するニュースをセレクトし、日本語に要約したものを月に2回、ニューズレター「GNGグローバルニュース」として配信しています。
本日配信したグローバルニュースでは、更年期市場の未開拓にチャンス、食品・飲料業界が参入へ、プロテインのイノベーションにより、50代以上の人々が注目される、赤唐辛子エキスを脳の健康に活用する可能性:肥満や老化に対する非薬物的介入、FTCが数百のブランドに対し、製品クレームの裏付けを取るよう通知、など13の記事を取り上げています。
この記事では、その会員向けニューズレターの一部を抜粋してご紹介させていただきます。
……グローバルニュートリション研究会 会員企業様は、会員サイトにて、すべての記事をお読みいただけます。
■GNGグローバルニュース 2023年4月25日号 トピックス
Market News マーケット
●更年期市場の未開拓にチャンス、食品・飲料業界が参入へ
●主要なCBDブランド、年間売上高が急減し、大幅なダウンサイジングを発表
Products News 商品情報
●プロテインのイノベーションにより、50代以上の人々が注目される
●PMSサプリメントの台頭:「不快な症状を軽減する」
Science News サイエンス
●赤唐辛子エキスを脳の健康に活用する可能性:肥満や老化に対する非薬物的介入
●プラネタリーヘルスダイエット、微量栄養素不足への対応として動物性食品の増加を提唱
●パレオダイエットが地中海食、DASH食、プラントベース食よりも健康的であることを示す新研究 -プレスリリース
●BCAAサプリメントが認知機能低下を遅らせる可能性を示唆する研究結果
●長寿者の腸内細菌叢のタイプは若者と同じ
Regulatory News 法規制
●カナダ政府は、高オレイン酸藻類油(HOAOs)を食品に使用することを承認
●ドイツの菓子会社、誤解を招くNutri-Scoreの使用で1万ユーロの罰金が科される
●豪Magic Valley社、培養肉のニュージーランド展開を目指す
●FTCが数百のブランドに対し、製品クレームの裏付けを取るよう通知
[今号のハイライト]
FTCが数百のブランドに対し、製品クレームの裏付けを取るよう通知
[2023/4/14] [nutraingredients.com]
米連邦取引委員会(FTC)は、広告主に対して、客観的な製品クレームを裏付ける合理的な根拠を持つことが法的に求められていることを喚起し、今後、欺瞞的なクレームを行うことを抑止するために、罰金の権限を行使する。FTCは、4月13日に、一般用医薬品、ホメオパシー製品、サプリメント、機能性食品の販売に携わる約670社に対し、過去の行政命令においてFTC法に違反していると判断した行為の種類を通知し、企業が自社製品のヘルスクレームを適切に立証しなかった場合、多額の罰金が科される可能性があるとの通知を送付した。立証責任は広告主にあり、製品やサービスの健康、安全、効果、性能に関するヘルスクレームが対象に含まれる。あまり知られていないブランドから、Amazon、GNC、Vitamin Shoppe、Walmartなどの大規模小売店まで、多岐にわたり通知が送付された。また、GlaxoSmithKline社、Johnson & Johnson社、Merck社、Pfizer社など、複数の製薬会社にも送られた。この通知は、FTCがその企業が法律に違反したと考えていることを示すものではなく、これらの企業が製品のクレームを十分に立証できなかった場合、多額の罰金が課される可能性があることを知らせるものである。これは、FTCがさまざまな広告キャンペーンを検証した結果、クレームの信憑性に懸念が生じたことから出されたものである。同意命令以外の過去の行政命令で違法とされたことを知りながら、裏付けできないヘルスクレームを行った企業に対して、民事罰(1回の違反につき最高50,120ドル)を求めることができる。FTCは、虚偽または誤解を招くような広告宣伝を行った企業に対し、法的措置を講じる権限を有しており、近年、特に健康食品に関連する欺瞞的な広告行為を取り締まっている。本通知は、企業に対して、広告の主張が真実であり、信頼できる証拠に裏打ちされたものであることを確認するための注意喚起となる。また、広告における透明性と誠実さの重要性を強調するものである。
(会員向けニューズレター「GNGグローバルニュース2023年4月25日号」より抜粋)
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和泉 美弥子
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