こんにちは、GNGの和泉です。
3月25日号のグローバルニュースをお届けいたします。
今号では寿命や健康的な加齢に言及した記事が掲載されています。
皆様もご存知の通り、昨年12月に厚生労働省が公表した、2019年の日本人の健康寿命(介護を受けたり寝たきりになったりせずに日常生活を送れる期間)は、男性72.68歳、女性75.38歳でした。前回調査の2016年(男性72.14歳、女性74.79歳)から、男性は0.54歳、女性は0.59歳延びたそうです。
米国の国立老化研究所(NIH:National Institute on Aging)もつい先月、ウェブサイトで健康的な老化のためのアドバイスを掲載しています。
健康的な老化に効果的な食事法としてNIHは、地中海食、減塩食でもあるDASH(Dietary Approaches to Stop Hypertension)食、さらに地中海食とDASH食を組み合わせたMIND食を挙げています。ご存知の方も多いと思いますが、上記の食事法は数多くの研究が進められています。
NIHのウェブサイトでは以下の研究が紹介されていました。
- 21,000人以上の参加者の食事パターンを分析した2021年の研究では、地中海食パターンに忠実に従う人は、心臓突然死のリスクが有意に低いことが判明しています。
- DASH食は血圧を下げ、体重を減らし、2型糖尿病と心臓病リスクを下げることが研究で明らかにされています。
- MIND食も、健康的な加齢をサポートする食事法として注目されています。MIND食を実践している人は、他の食事スタイルの人と比べて、思考力、学習能力、記憶力などの総合的な認知力が高いことが研究で明らかにされています。
今号では、栄養価の高い食生活が寿命を10年以上伸ばす可能性を示唆した研究や、北欧食のヘルスベネフィットに関する研究記事が掲載されています。
今後、健康的な食習慣としてさらに多種多様な食事法が認知されていくかもしれません。
また、NIHでは睡眠についても言及しています。8,000人近いデータを調査した2021年の研究で、夜の睡眠時間が6時間以下の50代と60代の人々は、7時間の人々と比較して後年に認知症を発症するリスクが高いことが示されました。
これは、睡眠不足がアルツハイマー病に関与するタンパク質であるベータアミロイドの蓄積に関連しているためである可能性があるとのことです。
昨年5月、オンラインメディアのITmediaビジネスに掲載されていましたが、フランスのヘルスケアデバイス企業Withingsが同社製品のユーザーデータを集計した14カ国の睡眠データを公表しました。それによると、日本は2020年の平均睡眠時間が世界で最も短く、6時間22分19秒、さらに平均睡眠時間が6時間を下回ったユーザーの割合は32.13%に上ったそうです。
一方、睡眠時間の長さがトップ3の国は、1位ベルギー(7時間24分14秒)、その後に英国、フランスが続きました。日本とベルギーでは1日の平均睡眠時間が1時間以上も差があります。
日本の平均寿命、健康寿命はともに世界のトップクラスを誇り、さらに年々伸長しています。しかし平均寿命との差を縮めるためには、今よりもさらに睡眠に注目していく必要があるかもしれません。
和泉 美弥子
この記事について
GNGでは、会員向けに世界各国の健康・食・栄養に関するニュースをセレクトし、日本語に要約したものを月に2回、ニューズレター「GNGグローバルニュース」として配信しています。
本日配信したグローバルニュースでは、栄養価の高い食生活の持続は寿命を10年以上伸ばす可能性、オメガ3脂肪酸サプリメント補給が高齢者の転倒リスクを低下させる可能性、地中海食以上?研究は北欧食の利点を示唆、など16の記事を取り上げています。
この記事では、その会員向けニューズレターの一部を抜粋してご紹介させていただきます。
……グローバルニュートリション研究会 会員企業様は、会員サイトにて、すべての記事をお読みいただけます。
■GNGグローバルニュース 2022年3月25日号 トピックス
MARKET NEWS マーケット
●欧州のInProveプロジェクト:廃棄野菜から高食物繊維の原料を開発
●新投資会社Better Bite Venture社がAPAC地域のフードテック企業に続々投資
●米国の消費者は依然として肉好き:IRI調査
●CBD高額商品と低額商品に3,561%の差:監視機関Leafreportレポート
PRODUCT NEWS 商品情報
●Perfect Day社、betterland foodsブランドからアニマルフリーの精密発酵ミルクを今夏販売
●Mikuna社、高山植物chocho由来スーパーフード「chocho superfood protein powder」を発売
●NotCo社、プラントベース代替肉バーガー「NotBurgur」で米市場参入へ
●水に溶けにくい脂溶性の栄養成分をコーヒーカプセルに組み込んだCapsoil Foodtechの技術
●Alt Farms社、3Dプリントによる和牛ステーキの試作品完成へ
SCIENCE NEWS サイエンス
●生野菜の摂取とCVDリスク低下を関連付ける研究:専門家はエビデンスを再評価する必要性を示唆
●栄養価の高い食生活の持続は寿命を10年以上伸ばす可能性
●オメガ3脂肪酸サプリメント補給が高齢者の転倒リスクを低下させる可能性
●「スポーツニュートリション研究は市場の変化を反映すべき」:専門家の意見
●地中海食以上?研究は北欧食の利点を示唆
COMPANY NEWS 企業情報
●Good Cultureが培養食品プラットフォーム拡大のため64百万ドルを調達
REGULATORY NEWS 法規制
●FTC、BASF社販売のフィッシュオイルサプリメントを購入した消費者に返金
[今号のハイライト]
オメガ3脂肪酸サプリメント補給が高齢者の転倒リスクを低下させる可能性
[2022/3/7] [nutraingredients-usa.com]
オメガ3脂肪酸サプリメント摂取は、高齢者の転倒リスクを低下する可能性が、University Hospital Zurichの研究者が率いるDO-HEALTH Research Groupの研究で示唆された。二重盲検ランダム化比較試験であるDO-HEALTH研究では、スイス、ドイツ、オーストリア、フランス、ポルトガルの70歳以上の在宅高齢者2,157人を対象に、オメガ3脂肪酸(EPA、DHA)、ビタミンD、在宅運動プログラムが転倒リスクに及ぼす影響を検証した。
被験者は次の8つの群に無作為に割り当てられた;
(1)ビタミンD(2000 IU/日)+EPA・DHA(1g)+在宅運動プログラム(SHEP)、(2)ビタミンD+オメガ3、(3)ビタミンD+SHEP、(4)オメガ3+SHEP、(5)ビタミンDのみ、(6)オメガ3のみ、(7)SHEPのみ、(8)プラセボ。
3年間にわたる同研究で、1,900人が完了し、3,333件の転倒が発生した。
分析の結果、ビタミンDおよびSHEPについては転倒への影響が認められなかった。オメガ3脂肪酸摂取群は、オメガ3を含まない群に比べ、転倒リスクが10%減少した。研究者は、「オメガ3の抗炎症および筋肉維持の働き、また、mTORシグナル伝達の活性化による筋肉への直接的な同化作用により転倒リスクが低下したと考えられる」と説明した。本研究はAmerican Journal of Clinical Nutritionに掲載されている。
(会員向けニューズレター「GNGグローバルニュース2022年3月25日号」より抜粋)
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和泉 美弥子
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