サプリメントの定義、存在意義は?|ウェルネスフード・ワールド第115回

こんにちは、GNGの武田です。

「紅麹」事件をきっかけに「サプリメント法」の必要性に対する議論も増えてきました。

サプリメントの定義

「機能性表示食品を巡る検討会」報告書では、「食品業界の実態を十分に踏まえる必要があるものの、サプリメント形状の加工食品に関する規制の在り方についても今後の検討課題とすべきとの意見があった。」と記載されています。
また、食品安全委員会からは「サプリメント食品に係る消費者問題に関する意見」が出されました。その中で、「サプリメント形状の加工食品とは、「本制度の運用上、天然由来の抽出物であって分画、精製、化学的反応等により本来天然に存在するものと成分割合が異なっているもの又は化学的合成品を原材料とする錠剤、カプセル剤、粉末剤、液剤等の形状である食品を指す」とされている。」と説明されています。

そして、「我が国には、サプリメント食品に関する、健康被害情報の収集・活用、有効性・安全性の実効的な確保、表示・広告規制等についてサプリメント食品を包括的に規律するための法制度がなく、一定の監視は行われているものの、サプリメント全般への監視・執行(販売停止や製品回収等)を担う組織が明確でない。そのため、サプリメント食品を規律するための制度整備や、サプリメント食品に係る消費者保護の取組を担う組織の在り方について検討が必要である。」と提案されています。

これまでも「サプリメント法」の必要性について意見はありましたが、本格的な議論はされてきませんでした。この機会に、日本において「サプリメント法」についての議論が深まることは、とても良いことだと思います。

議論を始めるにあたって、大切なことはその定義だと思います。

「錠剤、カプセル剤等食品の製造管理及び品質管理(GMP)に関する指針(ガイドライン)」(3.11通知)では、対象食品を「天然物、若しくは天然由来の抽出物を用いて分画、精製、濃縮、乾燥、化学的反応等により本来天然に存在するものと成分割合が異なっているもの又は化学的合成品(以下「天然抽出物等」という。)を原材料とする錠剤、カプセル剤等食品を対象とする。」と書かれています。

確かに、化学的、物理的な定義はされていますが、諸外国の定義と比べると言葉足らずではないかと思います。

諸外国のサプリメントの定義

米国:ダイエタリーサプリメント

ビタミン、ミネラル、ハーブまたはその他植物、アミノ酸、その他食用成分、これらの成分の濃縮物、代謝物、構成成分、抽出物、混合物を摂取するために加工された製品(錠剤、カプセル、粉末等)であり、一般的な食品、または単独で食事として用いられるものではない。

EU:フードサプリメント

通常の食事を補足する目的で、栄養学的或いは生理学的効果のある単独または複数の栄養素或いはその他の食品成分を濃縮した形で含有したカプセル、錠剤、ピル、粉末パック、液アンプル、滴下型もしくは同様な形態のもので、少量摂取できるようになったもの。

ASEAN:ヘルスサプリメント

食事を補完し、ヒトの健康的な身体機能を維持、強化、または向上させることを目的とした製品、また、以下の成分一つか一つ以上、または組み合わせた製品を指す:

 a.ビタミン、ミネラル、アミノ酸、脂肪酸、酵素、プロバイオティクス、その他の生理活性物質。
 b.
動物、鉱物、植物由来を含む天然由来成分の抽出物、単離成分、濃縮物、代謝産物。
 c.
合成品由来の(a)、(b)で示した成分については、安全性が証明されたもののみが使用可。

 注:ASEANハーモナイゼーションにおける定義であり、まだ実施されていません。

いかがでしょうか?共通するのは、その成分や形状だけではなく、「食事を補完する」というその位置づけではないでしょうか?

近年、特に米国ではサプリメントの非ピル化という現象が進んでいます。従来のカプセル、錠剤タイプのサプリメントからグミやチュー、ショットなどの非ピル形状のサプリメントに消費者の嗜好が変わってきています。しかし、抽出物、濃縮物は使用されており、カプセル等と違って美味しいので過剰摂取のリスクがむしろ高まっています。しかし、これらはサプリメントに該当するため、GMP等、品質管理等の規制があり、サプリメント形状の食品と同等の安全性の担保が、一般食品よりも厳格に行われています。

機能性表示食品もサプリメント形状の加工食品以外の商品が約半数有り、抽出物、濃縮物が添加されているものも少なくありません。このような現状で、サプリメント形状の加工食品のみを対象に規制をかけるのは、いささか時代遅れかも知れません(いえ、これまでかけていなかったことが時代遅れですね)。

大切なことは、「通常の食事とは異なる」「食事を補完するもの」「単独で食事として用いられるものではない」という、その使われ方ではないかと思います。

サプリメントの存在意義

そこで重要になることは、なぜ、わざわざ食事以外にサプリメントを補給する必要があるのかという、その存在意義ではないかと思います。

世界に先駆けてダイエタリーサプリメントを法制化した米国ですが、ダイエタリーサプリメント健康教育法(DSHEA)制定時には、その必要性が議論されていました。

DSHEA法案通過時の米国連邦議会の付帯事項の要旨(1994年)
米国連邦会で下記15項目の所見が挙げられた

1.米国民の健康状態の改善が合衆国連邦政府の最優先課題
2.
健康増進・疾病予防に、栄養とダイエタリーサプリメントの有効性を示す科学論文が増加
3.
ある種の栄養成分とダイエタリーサプリメントの摂取は、癌、心臓病、及び骨粗鬆症等の成人病の予防に関連。慢性疾患の幾つかは、野菜、植物由来の食品を中心とした食事で予防可能。健康的な食事例として、脂肪、飽和脂肪酸、コレステロール、塩分を低減した食事が挙げられる
4.
健康的な食事は、バイパス手術などの高額医療費を要する手術リスクを低減
5.
セルフメディケーション、健康に対する知識の向上、十分な栄養摂取、ダイエタリーサプリメントの適切な使用等は、慢性疾患の発症率の低減、介護費削減に貢献
6.
A) 健康的なライフスタイルは、寿命を延ばすだけではなく、医療費を削減
  
B) 医療費削減は、米国の将来にとって最重要課題で、経済的発展の基礎
7.
長期的な健康状態と栄養との関連性の情報を広めることが、益々重要である
8.
ダイエタリーサプリメントの健康に対する有効性を示す科学研究の情報を知らせ、その知識に基づき消費者が予防的健康管理対策を選択できるようにするべき
9.
国民調査によれば、国民の50%、2億6千万人がビタミン、ミネラル、ハーブ等のダイエタリーサプリメントを自己の栄養状態改善手段として常用
10.
国民調査によれば、消費者は高費用の医療サービスを回避して、食生活の改善を含む包 括的な新たな健康管理サービスに依存する傾向
11.
合衆国の1994年の健康管理費用はGNPの12%に相当する1兆ドル以上。この総額とパーセンテージは努力抑制しない限り増加傾向。
12.
A) ダイエタリーサプリメント産業は合衆国経済の一翼を担う。
   
B) 貿易収支は一貫して黒字。
   
C) 600社のメーカーと4,000種の製品、最低40億ドル/年の販 売額。
13.
連邦政府は製品の安全性を欠く/品質不良製品には迅速な処置が求められるが、同時に 不合理な制約で、消費者への安全な製品や正確な情報を制約、遅延させてはならない。
14.
ダイエタリーサプリメントは摂取量の安全域が広く、安全性問題は比較的に稀にしか発生していない。
15.
A) 健康増進には、消費者の安全なダイエタリーサプリメント選択の権利を守る法的措置が必要。
   
B) ダイエタリーサプリメントに対する現在の一時しのぎのつぎはぎの規制策に代わり、連邦政府として合理的制度確立が必要。

この基本的な精神があるからこそ、米国DSHEAは、色々なことがありながらも30年間続いてきたのだと思います。

せっかく「サプリメント法」制定の機運が盛り上がってきました。まずは原点に返って、サプリメント(健康食品)の存在価値を真剣に議論すべき時だと思います。サプリメント(健康食品)の社会的意義を発信する、千載一遇のチャンスだと思います。

(株)グローバルニュートリショングループ 武田 猛

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18年間の実務経験と20年間のコンサル経験を積み、38年間一貫して健康食品ビジネスに携わる。国内外750以上のプロジェクトを実施。「世界全体の中で日本を位置付け、自らのビジネスを正確に位置付ける」という「グローバルセンス」のもとに先行する欧米トレンドを取り入れたコンセプトメイキングに定評がある。世界各地にネットワークを築き上げ、情報活用サービス「グローバルニュートリション研究会」主宰。食品会社、化粧品会社、製薬会社の健康食品部門に対して、商品開発・マーケティング・海外進出などのコンサルティングを行っている。人が幸せに生きるためには健康が第一である。健康食品産業は「幸せ創造産業」である、という信念のもと、クライアントの成功を通じ、消費者に支持される業界を目指し、業界で働く人すべてが自分の仕事に誇りと自信をもてるようにしたいという想いから、業界健全化活動にも取り組んでいる。

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