こんにちは、GNGの和泉です。
今号はバラエティに富んだニュースが盛りだくさんですが、その中で、栄養評価スコア「Nutri-Score」についての記事が取り上げられています。
2017年、PLOS Medicine誌に発表された研究では、Nutri-Scoreを利用して47万人以上の成人の食事を評価しました。
栄養スコアが低い食生活が続くと
運動習慣や喫煙などの要素を補正した後でも、食事のスコアが最も低い成人(いわゆるジャンクフードを最も多く食べている成人)は、複数の種類のガンにかかるリスクが非常に高いことが分かりました。
この研究では、脂肪、砂糖、ナトリウム、および加工食品を多く含む食事をたまに摂ることが死につながるわけではなく、問題はそのような食生活が習慣化することである、としています。
いまだに議論されているNutri-Score
Nutri-Scoreの目的は消費者に一目で簡単に比較できる情報を提供することですが、このシステムは単純化され過ぎているとも言われており、例えばオメガ3を多く含むスモークサーモンが 糖質30%の朝食シリアルと同レベルとされるため、いまだに議論されています(詳しくは2019年のNNB3月号をご覧ください)。
欧州ではこのままNutri-Scoreが広まっていくのでしょうか。気になるところです。
腸に障害を起こす原因の一つFODMAP
さらに今号ではFODMAPについての記事も取り上げられています。
記事にもありますが、FODMAPとは、腸で発酵しやすいオリゴ糖、2糖類、単糖類、ポリオールからなる、糖質の総称です。
FODMAPは腸管から吸収されにくい性質を持ち、腹痛や下痢を引き起こしやすくする要因となります。
さらに吸収されなかったFODMAPは大腸内で発酵し、過剰な発酵はガスの発生や膨満感、便秘の原因となります。
これらの不調は、過敏性腸症候群(IBS)と呼ばれ、日本人の10人に1人がこの疾患を持つといわれています。
FODMAPを多く含む「高FODMAP食品」の種類は多岐に渡るため、もし高FODMAP食品から安全にFODMAPを取り除くことが出来れば、IBSを持つ人たちにとってはこれからの生活が随分楽になりそうです。
ただ、高FODMAP食品を減らすことは腸内細菌のエサを減らすという事でもあり、もろ刃の剣でもあります。
食生活のバランスをとるということは非常に難しいですね。
(株)グローバルニュートリショングループ 和泉 美弥子
この記事について
GNGでは、会員向けに世界各国の健康・食・栄養に関するニュースをセレクトし、日本語に要約したものを月に2回、ニューズレター「GNGグローバルニュース」として配信しています。
本日配信したグローバルニュースでは、Nestle社、Danone社が欧州で「Nutri-Score」の導入を推奨、Lactobacillus属の名称が分類学的に変更、ビタミンD のサルコペニアや大腸ポリープなどに対する有益性など10の記事を取り上げています。
この記事では、その会員向けニューズレターの一部を抜粋してご紹介させていただきます。
■GNGグローバルニュース 2020年5月12日号 トピックス
●Nestle社、Danone社が栄養評価スコア「Nutri-Score」の導入を推奨
●COVID-19感染拡大で冷凍ピザ、アイスクリーム、蒸留酒が売上を伸ばす
●4月の食品・飲料産業、新商品がずらり。CBD商品も依然として目玉に
●Lactobacillus属の名称が分類学的に変更
●ライフスタイル要素は地理的要素に比べ腸内細菌叢に及ぼす影響が大きい
●酵素処理で食品からのFODMAP除去に成功
●サルコペニア、大腸ポリープなどに対するビタミンDの有益性
●コーヒー摂取は淹れ方次第で心臓発作の予防に有益
●Kerry社はIsoAge Technologies社とBiosecur Lab Inc社の買収で食品安全テクノロジを向上
●GNCが上場廃止の危機に、NYSEから警告
……グローバルニュートリション研究会 会員企業様は、会員サイトにて、すべての記事をお読みいただけます。
[今号のハイライト]
Nestle社、Danone社が栄養評価スコア「Nutri-Score」を欧州で導入
[2020/4/28] [foodnavigator.com]
食品・飲料企業の大手、Nestle社とDanone社は、欧州で広がりを見せる栄養評価スコア、「Nutri-Score」の導入を強く勧めている。
Nutri-Scoreとは、2017年、初めてフランスが正式に採用した栄養評価ラベルで、健康的で栄養価の高い方から、最高ランクの緑、黄緑、黄色、オレンジ、そして最低ランクの赤のどれかが表示される。
フランスが同スコアを採用してから、ベルギー、スペイン、ドイツ、オランダ、ルクセンブルク、スイスなどに広がったが、現在のEU規則では、Nutri-Score導入は任意であるため、導入にはEU内でばらつきがある。
しかし、欧州の成人の2人に1人が過体重または肥満であるという調査結果や、現在のCOVID-19感染拡大という状況の中で、公衆の健康・衛生への強い危機感が持ち上がった。
欧州ではなく米国の研究ではあるが、今年3月の1カ月間の統計で、感染による入院患者の基礎疾患は、最も多い高血圧の49.7%に続いて肥満(48.3%)が第2位だった。
消費者の健康的な食生活こそが社会の安全につながると考える企業、投資家などは、Nutri-Score導入を強制的なものにするよう求める書簡をEU健康安全委員長あてに提出した。
書簡の中で、「アンバランスな食事や栄養不足が爆発的感染に繋がっていく。COVID-19感染の深刻な影響の中で、公衆の健康の重要性はこれまで以上に大きい。そのために、一目で見分けられる明確な栄養情報を消費者に伝えることが必要である」と訴えた。
Nutri-Scoreは、「ヘルシー」な選択を行うために食品間で栄養価の質を比較する有益なツールであるというのが大方の意見だが、EU内では別の考え方をする加盟国もある。
例えば、イタリアでは、同スコアは「誤解を招きやすく、差別的」と受け止め、イタリア国産の商品を危機にさらすものと反発している。
Nutri-Scoreを支持するDanone社、Nestle社、Fleury Michon社などはいち早く、食品パッケージに同スコアを表示している。
Danone社は、オーストラリア、ベルギー、フランス、ドイツ、ルクセンブルク、スペイン、スロベニア、スイスで展開するEssential Dairy and Plant-based (EDP)商品にNutri-Scoreを表示した。同社は「その他のカテゴリーへの表記も検討中である」と発表している。
また、Nestle社も2019年、オーストラリア、ドイツ、フランス、スイスにおいてNutri-Scoreの導入を明らかにした。同社のプラントベース商品、Garden Gourmetブランド、朝食用シリアルのChocapic Bioなどで同スコアのラベル表示を開始した。2020年には、Cherriosブランドの朝食用シリアルやNestleデザートラインでも採用を検討している。
(会員向けニューズレター「GNGグローバルニュース2020年5月12日号」より抜粋)
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和泉 美弥子
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