こんにちは、GNG武田です。
代替プロテインビジネスについては多くの方が関心を持ち、ビジネスに取り組んでこられたと思います。しかし、関心の高さとは裏腹に、そのビジネスはなかなか難しい、というのが現状かと思います。
そのような状況で、デンマークのスタートアップ企業であるPlanetDairy社の大変興味深い取り組みが、今号のNNBでイノベーションケーススタディとして取り上げられています。PlanetDairy社という社名の通り、同社は乳とプラントベースミルクのハイブリッド製品を開発、販売しています。
多くの企業が「プラントベースプロテインのパラドクス」に取り込まれ、第1世代(GEN1)の製品が消費者に支持されない、という状況でした。第2世代(GEN2)への戦略シフトが求められている中、PlanetDairy社は一つの方向性を示してくれていると思います。
GEN2戦略とは、
・競争上の優位性への道
・標準レベル以下のG1製品で溢れかえる市場で、差別化を図る方法
・競合他社より前に、自社ブランドがやるべきこと
であると、NNBは10キートレンド2022の中で提言していました。
PlanetDairy社は、世界最大の乳業グループのひとつであるArla社の元幹部のJesper Colding氏が、元同僚のJakob Skovgaard氏とPaul Cornillon氏とともに設立したデンマークのスタートアップ企業です。同社は昨年8月、ブレンドチーズAuduシリーズを発売しました。これまでのプラントベースチーズと比べ、栄養成分が大幅に改善されています。
これまで多くの企業が植物と乳製品をブレンドした製品で失敗してきましたが、これはColding氏が「ハイブリッドの罠」と呼ぶものに大きく依存していたからとのことです。
同氏は「「ハイブリッドの罠」とは、プラントベース食品を食べる人と動物性食品を食べる人の両方に同時にアピールしようとすることだ。だがそのメッセージが中途半端になり、最終的に誰にも響かなくなるのだ。」と言います。
「これまで企業は、植物にこだわるか、乳製品にこだわるかのどちらかだった。消費者はただ、手頃な値段でおいしく、自分の希望に沿った製品を求めている。それができれば、植物性か動物性かはそれほど重要ではない」と続けます。
PlanetDairy社は、「未来の精密発酵たんぱく質の研究を実際に開始し、今からそれらを使って製品を作ってみる。そうすることで、しかるべき時が来た時に、すでにポートフォリオが手元にある状態になる」と将来を見据えています。
論説5では、European Institute of Innovation and Technology (EIT)が発表した調査結果について解説しています。その中で、ビーガンチキンやビーガンチーズは消費者の3分の1がUPF(Ultra-Processed Foods 超加工食品)と判断し、アニマルベースよりUPFと見ていました(34%と36%に対し12%と16%)。加工度の高さを理由にプラントベース代替品を避けると半数が回答しています。
その他、血糖管理に関する記事やシニアマーケティングに関するケーススタディも掲載されています。ご多忙の中、是非お時間を取ってお読みいただければと思います。
近年、NNBの内容が非常にボリューミーになってきました。その為、日本語要約版もPPTで40ページを超えるボリュームになっています。何とか簡素化し、短時間でお読みいただける方法を検討中です。ご希望等がございましたら、お気軽にお知らせください。
武田 猛
この記事について
GNGでは、会員向けに英国発信の食品・栄養・健康分野の業界専門誌【NNBマガジン(New Nutrition Business)】を日本語に要約し、定期的にお届けしています(月1回)。
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この記事では、その会員向けマガジンの一部を抜粋してご紹介させていただきます。
■NNB(New Nutrition Business)5月号 トピックス
今回、会員向けにお届けしたNNB日本語要約版のタイトルは以下の通りです:
●乳製品と植物のブレンドチーズは消費者の行動を変えられるか?
●今号のブランド:新カテゴリーの創造はイノベーションの最良のタイプか?
●血糖値トレンドが勢いを増す
●「乳製品好きのためのプラントベース」は期待外れ
●プラントベースの壊滅的状況はさらに悪化
●食品産業をたたく棒にはなりえないUPF
●高齢者の栄養に新たなカテゴリーを創造した森永乳業
●Hank’sナッツバターブランドが誇る乳製品による脳のベネフィット
●消費者は血糖管理に着目しGood Idea 炭酸水の人気が高まる
●アイスクリームの消費者は完全な贅沢に回帰
●DTCから食料品店へ ナッツ企業の巧みな転換
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[今号のハイライト]
乳製品と植物のブレンドチーズは消費者の行動を変えられるか?
世界最大の乳製品グループのひとつであるArla社の元幹部3人は、消費者がより二酸化炭素(CO2)排出量の少ない乳製品に簡単に移行できるよう手を組んだ。それを実現する方法は、乳製品と植物をブレンドした製品を提供することだ。味、栄養、価格、機能性の点で非常によく似た製品ポートフォリオを作り、シームレスな移行を目指している。同社は母国デンマークで順調なスタートを切った。
(会員向けニューズレター「NNBマンスリーレポート2024年5月号」日本語要約版より抜粋)
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