とうとう、というより遂に消費者団体から機能性表示食品制度の現状について公式に意見書が提出されました。
5月26日、全国消費者団体連絡会が消費者庁に意見書を提出、その後記者会見を開きました。
また、事業者に向けての意見書も公表されました。
意見書には「機能性表示食品全体に不信感を抱かざるを得ません」と非常に重い意見が書かれていました。
また、事業者に向けた意見書には「機能性についてエビデンスの弱い製品、安全性に疑義を抱かれるような製品の届出は止めてください」という、企業姿勢を問われる深刻な内容が示されていました。
機能性表示食品の可能な機能性表示の範囲はとても幅広く具体的で、大変魅力的です。
消費者に商品の機能性やメカニズムを具体的に伝えることが出来ます。
しかし、その分、その表示を裏付ける科学的根拠には一定のレベルが要求されます。
表示の自由度が高い分、その責任は重くなって当然です。
責任のない自由など、この地球上には存在していません。
また、安全性についても、消費者に不安を与えたり、不満を持たれる様な内容を届出る企業自身に責任があると、真摯に受け止めるべきです。
1.企業には説明責任がある
疑義が生じた際の説明責任だけではなく、届出情報全てに対して説明責任があると考えるべきだと思います。
届出情報に疑義が出た時点ですでに、その企業は説明責任を果たしていない事になります。
届出る企業は、届出情報は丁寧に説明し、疑義が出ないよう最善を尽くす義務があると思います。
2.届出情報のレベル
GNGでは、届出情報の科学的根拠のレベルは、海外でも通用するレベル、具体的には、安全性であればNDIとしてFDAの審査をパスし受理されるレベル、機能性の科学的根拠は、構造/機能表示の科学的根拠として米国弁護士がOKを出す質の高い論文(当然ヒト試験は必須です)がある事、を一つの目安にしています(SRが必須ではない米国でも、論文1報だけでは訴訟のリスクはあります。)。
また機能性表示と科学的根拠の関係についてはEFSAの指針を参考にすることを推奨しています。
3.消費者目線
販売前情報公開制度は、機能性表示食品制度が世界最先端の透明性を持つ、誇るべき制度ですが、消費者が読んで分からない情報を公開しても意味がありません。
その為、消費者庁は専門的な情報は詳細に、消費者に向けた情報は解り易く、を目指したはずです。
企業は一般向け情報に対しては、噛み砕いて優しく書くべきです。
私は「自分の親や祖父母が読んで理解できるような説明をしてください」とクライアントにはお願いしています。
消費者と企業、双方向の信用が成立しない限り、機能性表示食品制度は正常に機能しないと思います。
企業サイドは消費者の信用を得るために、誠意を持って届出情報を作り込む必要があると思います。
透明性の高いこの制度は、企業姿勢が一目でわかります。
短期的にはいざ知らず、中長期的には誠実に説明責任を果たす企業が消費者の信用を得、支持されることは間違いないと信じています。
届出情報は、当然ながら自社の社員も見ることが出来ます。
自分の会社が誠実な会社かどうか、社員からもチェックされることを忘れないで頂きたいと思います。
社員が誇りを持って働けない企業を、お客様が支持してくださる事はないと思います。
機能性表示は手段であって、目的ではありません。
目的を見失ったとたん、機能性表示さえできれば良い、という近視眼的な発想になり、本来の責任の重さに鈍感になってしまいます。
健康食品ビジネスは、お客様との長い関係性があって初めて成立します。
今一度、原点に立ち返って頂きたいと思います。
「消費者運動はマーケティングの恥である」
「消費者運動が企業に要求しているものがマーケティングである」
どちらもドラッカーの言葉です(先週もお伝えしましたが…)。
一時的な成功ではなく、成功し続けるためにも真摯に受け止めるべき言葉だと思います。
現状を変える事が出来るのは、我々事業者サイドの誠実な行動のみだと思います。
具体的には、消費者の支持を得るために機能性表示食品制度の健全化を目指すために、自らも痛みを伴う覚悟を持った、志の高い企業が中心となって、既存の業界団体の枠組みを超えて、立ち上がる必要があります。
例:機能性表示食品制度健全化団体(仮)
主な活動:
・会員のガイドライン遵守、届出情報水準の維持を義務付け
・広告自主規制
・アウトサイダーの監視、警告
・消費者教育支援
・学識経験者、法律家との意見交換
・行政、消費者団体、マスメディアとの情報交流、など
ミッション:
自らを律すると共に、真面目に取り組む企業が馬鹿を見ない状況を早急に作り上げることで機能性表示食品制度の健全化を図り、消費者、アカデミア、行政からの信頼回復を目指す。
各企業が全5段広告1回分の資金を持ちあえば十分に実現可能だと思います。
米国では、リーダーシップを持った1部の企業が業界全体をリードしています。
「総論賛成、各論反対」ではなく、「各論実行」をすることが可能な、機動力を持った執行体制が必要だと思います。
機能性表示食品制度を健全化することで、消費者にとっても企業やその社員にとっても、関わる人全てがハッピーになれる、そんな社会の実現は不可能ではないと思います。
今はまさに、私たち業界人が試されている時だと思います。
最後までお読みいただきまして、ありがとうございます。
さて、
【本日のGNGニューズレター】
です。
今後はトクホと機能性表示食品の両方が存在する事になりますが、今号では特に、茶系飲料市場、ノンアルコールビール市場についてマーケット情報を基に考えてみました。
そこは、単にトクホvs機能性表示食品という構造ではない事が窺えます。
また、「ゼロ系」「トクホ」により市場全体が活性化したコーラ飲料市場も振り返ってみて機能性表示食品の可能性について考えてみました。
また、これまで受理された届出情報から、機能性表示食品の機能性表示の範囲を整理してみました。
お知らせ:EFSA「健康表示の科学的根拠に関する指針」日本語版、近日配布開始します。
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■GNGニューズレター 2015年6月1日号トピック
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●クリニコ、リハビリテーションサポートゼリー飲料「リハたいむゼリー」発売
●アサヒビール、清涼飲料の機能性表示食品「アサヒスタイルバランス」3品発売
●キユーピー、ヒアルロン酸配合の機能性表示食品「ヒアロモイスチャー240」発売
●雪印メグミルク、「ミルクセラミドMC-5」の脳機能への作用で新たな知見発表など
●明治、はっ酵乳とオリゴ糖の摂取が胃酸分泌低下による骨強度低下を予防確認など
●ハウステンボス、健康をテーマにした総合施設「健康と美の王国」をプレオープン
●消費者庁、「機能性表示食品」の届出出情報公開-現時点で13社26品
●日本広告審査機構(JARO)、広告研究セミナー開催 など