高齢者にとってダイエタリーサプリメントの自己負担額が重荷に、ほか|GNGグローバルニュース2025年5月12日号





こんにちは、GNG武田です。

「高齢者にとってダイエタリーサプリメントへの自己負担額が重荷に」という記事が目を引きました。
この記事の出典は、BMC Geriatrics誌に掲載された” Examining the Cost Burden of Dietary Supplements in Older Adults”という論文です。
BMC Geriatricsは、BioMed Central (BMC) が発行する、高齢者の健康と医療に関する研究論文を掲載する学術誌です。
この研究は、AAA Long ROAD(Longitudinal Research on Aging Drivers)研究のデータを用い、高齢ドライバー(65歳以上)におけるDSの使用状況と費用負担を5年間にわたり分析することを目的としたものです。
AAAとは、American Automobile Association財団の略名で、交通安全の向上と事故防止を目的として、非営利・非営政的に活動する研究・教育機関です。

論文の概要は以下の通りです。

方法(Methods)
対象者:米国5都市で運転免許を保有し運転している高齢者 2,990人(65歳以上)
期間:2015~2022年の5年間
調査方法:年1回の“ブラウンバッグレビュー”による薬剤調査
*「ブラウンバッグレビュー(brown bag review)」とは、医療や公衆衛生の分野でよく用いられる手法で、患者が自宅で使用しているすべての薬(処方薬・OTC薬・サプリメントなど)を実際に袋に入れて持参し、医療者がその場で中身を確認・記録・評価する方法です。
価格推定:NIHのデータベースと2022年のオンライン価格を使用(保守的な低価格で推計)

主な結果(Results)
DS使用率:70.4%(ベースライン)~82.7%(5年目)
DSの種類:160種類(うち142種類について費用分析)
平均月額コスト:
・全参加者:$10.23~$13.32(年間約$142)
・DS使用者のみ:$14.56~$16.45(年間約$186)
高額使用者は月額$174.80に達するケースも存在
より多く支出していたのは:女性、年齢が高い、非就業、白人非ヒスパニック、収入が高い人

考察(Discussion)
DS支出は保守的な推定でもかなりの金額に上り、過剰摂取や重複使用のリスクもある。
処方薬が高くて服薬できない人々がDSに費用をかけている状況は、医療費全体に大きな影響を与える可能性がある。

限界とバイアス(Limitations)
・対象が健康かつ所得水準が高めの高齢ドライバーに偏っている
・年1回のレビューを通年使用とみなしているため、DS使用量が過大推計されている可能性
・一部DSが費用分析から除外されており、費用は過小評価の可能性
・価格推定は2022年のオンライン価格に基づき、物価変動を考慮していない

結論(Conclusion)
高齢者にとってDSへの出費は無視できない負担であり、処方薬との関係や代替使用の懸念を踏まえたさらなる調査と政策が求められる。

この論文の対象者はすべて65歳以上の高齢者となっていますが、以下のように分類されています。
65–69歳   最も若い高齢層。支出額は少なめ。
70–74歳    使用率・支出額ともに中間レベル。
75–79歳    DS支出が高くなる傾向。
80歳以上  一部データは限られているが、支出額は最も高い層。

高齢者のDS使用率が「70.4%(ベースライン)~82.7%(5年目)」というのには、少々驚きました。
また、処方薬が高くて服薬できない人々がDSに費用をかけている、という事情も日本とはかなり異なる事情だと思います。
それにしても、米国では高齢でもドライバーとして活躍されている方が多いですね。
色々な意味で、考えさせられる研究結果です。

武田 猛

この記事について

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■GNGグローバルニュース 2025年5月12日号 トピックス

Products & technology News
●宇宙飛行士用食料の現地調達を目指した小型実験室を宇宙に打ち上げ

Science News
●ODSが早産予防としてオメガ3脂肪酸の重要性を認識
●Akkermansia muciniphila菌発酵チコリが抗肥満を示す可能性
●高齢者にとってダイエタリーサプリメントの自己負担額が重荷に
●抗酸化物質の摂取が子宮内膜症リスクを軽減する可能性
●ブロッコリーが糖尿病リスクを下げる可能性

Company News
●Kingswood Capital ManagementとPIPがVitamin Shoppeの買収へ
●iHerb、高品質な医療グレードブランドを取扱店舗に追加

Regulatory News
●FDAによる警告書の傾向をダイエタリーサプリメント業者に発信:コンサルタント
●政府決定による自然療法への保険払い戻復活を補完医療業界は称賛

[今号のハイライト]高齢者にとってダイエタリーサプリメントの自己負担額が重荷に、ほか|GNGグローバルニュース2025年5月12日号

[2025/4/21][nutraingredients.com]

  高齢者にとってダイエタリーサプリメントへの自己負担は経済的重荷になるが、高価な処方箋薬よりサプリメントに頼る傾向がみられることが米国の研究で示唆された。
多くの高齢者は健康を維持する、あるいは改善するためダイエタリーサプリメントを利用しており、過去数十年、この傾向が続いている。2017~2018年の全国国民健康栄養調査(NHANES)によると、60歳以上の74%が、調査前30日以内にダイエタリーサプリメントを摂取したという。多くの高齢者の収入は年金などの固定収入であり、処方薬による負担に耐え切れず、服用を中断することもあるという。
一方、ダイエタリーサプリメントの経済的データは少なく、負担額などははっきりしていない。メディケアなどの医療保険は、殆どがサプリメントを適用範囲から外しているため、自己負担となっている。こうした現状から、研究者は高齢者のダイエタリーサプリメント負担を正確に定量化する必要があると考え、多施設協同前向きコホート研究、LongROADを実施した。University of California San Diego研究チームは、ミシガン、コロラド、ニューヨーク、メリーランド、カリフォルニア州に住む65歳以上の高齢者2,990人を対象に2015年7月から2017年3月まで、対面インタビュー3回、電話インタビュー3回を行い、被験者が服用した処方薬、市販薬、ダイエタリーサプリメントを記録し、さらにその後5年間追跡した。対象となったダイエタリーサプリメントは単一成分サプリメント、マルチビタミン、ビタミンB複合、眼科用ビタミン、プロバイオティクス、消化酵素、ミネラル、アミノ酸などで、外用薬や大麻系商品も評価に含まれた。研究チームは、2022年夏、人気のオンラインマーケットプレイスで手に入る最も安い価格の商品を探しコストを推定した。被験者一人当たりの負担額は、摂取頻度と1錠あたりの値段を決定して計測した。
これによると、ダイエタリーサプリメントの推定月額は最低0.73ドル、最高は174.80ドルで、最も高価なダイエタリーサプリメントはオメガ3+ターメリックの月額49.30ドル、最も安価なダイエタリーサプリメントは亜鉛の0.73ドルであった。また、年間の推定費用負担は平均186ドルであった。
人口統計学的には、64~69歳の層は、それより高齢の層と比べ毎月の費用は少なく、調査全体では男性より女性の方が支出が多かった。同研究はBMC Geriatricsに掲載されている。

 (会員向けニューズレター「GNGグローバルニュース2025年5月12日号」より抜粋)

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18年間の実務経験と21年間のコンサル経験を積み、39年間一貫して健康食品ビジネスに携わる。国内外800以上のプロジェクトを実施。「世界全体の中で日本を位置付け、自らのビジネスを正確に位置付ける」という「グローバルセンス」のもとに先行する欧米トレンドを取り入れたコンセプトメイキングに定評がある。世界各地にネットワークを築き上げ、情報活用サービス「グローバルニュートリション研究会」主宰。食品会社、化粧品会社、製薬会社の健康食品部門に対して、商品開発・マーケティング・海外進出などのコンサルティングを行っている。人が幸せに生きるためには健康が第一である。健康食品産業は「幸せ創造産業」である、という信念のもと、クライアントの成功を通じ、消費者に支持される業界を目指し、業界で働く人すべてが自分の仕事に誇りと自信をもてるようにしたいという想いから、業界健全化活動にも取り組んでいる。

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