こんにちは、GNG武田です。
最近、UPF(超加工食品)に関するWebニュースやSNSでの投稿が増えています。
批判的な内容が多いですが、そもそもUPFの定義が定かではありません。
そして、最も重要なことは「加工の程度」と「栄養の質」は必ずしも一致しないということではないかと思います。
NOVA分類は加工手法ベースであり、栄養構成を十分に反映していないとの批判もあります。
UPFを一律に否定すべきでない理由として、以下のことが考えられると思います。
1. 栄養機能を持つUPFもある
2. 利便性・価格の観点
3. 分類の科学的妥当性への疑問
4. イノベーションの阻害
1、2については改めて説明の必要は無いかと思います。
3につきましても皆さんご承知の通り、NOVA分類は加工手法ベースであり、栄養構成を十分に反映していません。
4について、過度な規制がイノベーションの妨げになる可能性もあります。
そして現在は、単なる「加工度の是非」を超えた、食環境設計や公衆衛生政策全体に関わる議論に発展しつつあると思います。
今後の課題は次の点が考えられます。
1. 科学的な評価基準の確立:
加工度と栄養の質を分離し、健康影響に基づいた基準を策定する必要がある。
2. 消費者への情報提供:
フロントパッケージ表示(FOP表示、包装前面栄養表示)や栄養成分表示など、直感的かつ正確な判断材料を普及させる。
(栄養素プロファイル表示はまだ発展途上ですが)
3. 社会的公正の確保:
所得格差や食料アクセス格差に配慮した政策設計が不可欠。
では、私たちニュートリション業界に身を置くものとしてどう対応すれば良いでしょうか?
私は次のように考えています。
1. 透明性の高い製品設計:
使用原料や加工方法を明示し、「何を使っていないか」も含めた情報開示が信頼につながる。
2. 栄養価と味の両立:
栄養強化と嗜好性のバランスを取り、健康を意識しながらも美味しさを犠牲にしない商品設計。
3. 段階的な改善と選択肢の提供:
急激な全面改革よりも、段階的なレシピ改良や「Better-for-you」製品ラインの展開が有効。
4. 教育的アプローチの導入:消費者がUPFに関する正確な知識を持てるよう、自社サイトやパッケージでの情報提供を積極的に行う。
5. 政策動向への柔軟な対応:
規制強化や表示制度の変化を見据え、製品設計・ラベリング戦略を事前に検討しておく。
UPFをめぐる議論には、科学的エビデンス、経済的実情、社会的公正、文化的背景を総合的に考慮したバランスある判断が必要だと思います。
極端な規制や単純な二項対立ではなく、包括的な食環境の改善の中で位置づけることが望ましいとも思います。
武田 猛
この記事について
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この記事では、その会員向けニューズレターの一部を抜粋してご紹介させていただきます。
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■GNGグローバルニュース 2025年4月25日号 トピックス
Market News
●健康的な食品としてアボカドオイルの人気が上昇中
●プラントベースチーズの欠点を補うハイブリッドチーズ
●NPA、NY消費者保護局の「警告」を批判、修正、撤回を求める
●GLP-1トレンドは関連商品に成長機会を提供
●クレアチンの女性の健康に対する有益性を強調:クレアチン会議
Products & technology News
●Novo Nordisk財団の新プロジェクトに対しNova分類提唱者が抗議
●Zoe社、独自のUPFリスク評価スケールアプリを開発
●Muhdo社、長寿やDNAの健康を目指すアンチエイジングサプリ「Mudohub」を発売
●Vow社、細胞培養うずら肉でFSANZから販売認可を獲得
Science News
●ポストバイオティクスはプラントベース食摂取後のアミノ酸濃度を増す
●AHEIが最も健康的加齢を達成する食事パターン
●キムチ由来プロバイオティクスが体脂肪を低減する可能性
●パーソナライズ、AI主導栄養管理は腸内細菌叢の健康を改善する可能性
●ドラゴンヘッドエキスはコラーゲンの産生を促進し皮膚の健康を改善する可能性
Regulatory News
●多用な機能性飲料の需要が急増
●ビーガン輸入食品に向けた新しいガイドライン修正案:インド
●タイFDA、GDAラベルの表示改正案に対する苦情で修正案を提示
●業界団体がFDAに要請:GRAS制度は維持しつつ、有害成分への対応を最優先に
●2025年のFDA:食品・ダイエタリーサプリメント調査の変化にどう対応するか
[今号のハイライト]Novo Nordisk財団の新プロジェクトに対しNova分類提唱者が抗議、ほか|GNGグローバルニュース2025年4月25日号
[2025/3/24][foodnavigator.com]
「次世代のNova分類」を作ろうというNovo Nordisk財団のプロジェクトに対し、Nova分類の提唱者、Carlos A. Monteiro教授や専門家らから抗議書簡が提示された。
Nova分類は、最小の加工から超加工まで、食品の加工レベルを4つに分類するシステムである。同教授らは、ノボノルディスク財団のプロジェクトはNova分類と関連付けることで混乱を招き、もともとのNova分類の信用が失墜したと思わせるリスクがあると主張している。財団は「Nova」という名称の使用許可を得ておらず、使用すれば混乱が生じると強調した。
財団がUniversity of Copenhagenと協同して展開するプロジェクトは、栄養成分と食品加工を視野に入れた新しい食品分類システムの開発を目的とするもので、さまざまな加工方法と添加物が健康に及ぼす影響に焦点を当てる。同プロジェクトに対する非難の一つが利益相反である。例えば、肥満健康同盟のKatherine Jenner氏は、抗肥満薬で利益を上げているNovo Nordisk社と関係する財団がプロジェクトを推し進めていることを挙げている。Monteiro教授も、「食生活に関連する疾患と金銭的利害のある人々によって栄養ガイドラインが作成されるべきではない」と批判した。Novo Nordisk社は、これに対し、利益相反はないと回答し、食品と健康に関する知識を提供し、消費者が健康的な選択を行えるよう支援する公的研究プロジェクトであること、また、資金は財団が提供するが、プロジェクト自体は大学の独立した研究者が実行すると主張した。財団は抗議を受け入れ、Nova分類およびUPFに関する言及を削除したが、プロジェクト自体は進行している。
(会員向けニューズレター「GNGグローバルニュース2025年4月25日号」より抜粋)
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