こんにちは、GNG武田です。
今年最後のグローバルニュースをお届けします。
今号では、地中海食2.0の可能性についての記事が目を引きました。
ご存じの通り地中海食とは、1975年から開始された7か国研究において、地中海のクレタ島では、脂質摂取量が多いにも関わらず血性心疾患の発症率が低く、死亡率や癌発症率にも同様なことが当てはまったため注目されるようになりました。
地中海食(クレタ島の伝統的な食習慣)の特徴
●全粒穀物、季節の野菜・果物を豊富に摂る
●豆類、ナッツの摂取量が多い
●油の摂取量は少なくないが、オリーブオイルが主体 (飽和脂肪酸が少ない)
●牛肉や豚肉はあまり取らず、時々の肉も鶏肉がほとんど
●魚介類を習慣的に摂取する
●乳製品の摂取量は少ないか適量(主に羊のチーズで摂るが、自然の草食のため非常に低脂肪)
●卵の摂取量は、週4個未満
●加工食品の摂取は最小限
●昼食がメイン
この地中海食にプラントベースのポリフェノールが豊富な地中海食にすることで、通常の地中海食に比べて内臓脂肪減少に有益に働くことが示唆されました。
地中海食は、米国における高血圧対策の食事法であるDASH食のベースとなったり、更に、そのDASH食をベースに認知症対策としてマインド食が提唱されていて、とても興味深いのですが、更にメタボ対策にもなるとは大変興味深いことです。
また、アイルランドに拠点を持つKerry Groupが、各国の栄養プロファイリングに注目し、よりスコアが良くなるツールを開発し、公表しています。
日本にはまだ栄養プロファイリングは導入されていませんが、先行国の事例は大変参考になります。
最近のグローバルトレンドは、特定の成分より栄養バランスに、特定の製品より食事法への注目が高まっているようです。
これは来年の日本のトレンドを考える上でも役に立つのではと思います。
そして、トレンドと言えばNNB10キートレンドですが、NNB10キートレンド理解度アップセミナーを1月27日(金)に開催します。今のところ210分を考えていますが、それでも時間が足りないのではと今から心配しています。
また、サマリー編としては、東京ビッグサイトで開催されます食品開発展の中で、2月8日(水)に講演します。こちらは70分の予定です。
どちらもリアルでの開催となります。
皆さんと会場でお目に掛かれることを楽しみにしています。
武田 猛
この記事について
GNGでは、会員向けに世界各国の健康・食・栄養に関するニュースをセレクトし、日本語に要約したものを月に2回、ニューズレター「GNGグローバルニュース」として配信しています。
本日配信したグローバルニュースでは、CBD研究が盛り上がりを見せる、毎日のプロバイオティクス摂取が高齢女性の骨の健康を促進する可能性、緑茶、ウキクサの多い地中海式食事が内臓脂肪を減少する可能性、ケリー社、亀田製菓とコメ由来のポストバイオティクスを欧米で販売する契約を締結、など15の記事を取り上げています。
この記事では、その会員向けニューズレターの一部を抜粋してご紹介させていただきます。
……グローバルニュートリション研究会 会員企業様は、会員サイトにて、すべての記事をお読みいただけます。
■GNGグローバルニュース 2022年12月23日号 トピックス
Market News マーケット
●CBD研究が盛り上がりを見せる
●3Dフードプリンティング市場の成長をAPAC地域に期待
●代替卵、微細藻類、アップサイクルなどサステナブル技術が主流:FiE 2022
Science News サイエンス
●毎日のプロバイオティクス摂取が高齢女性の骨の健康を促進する可能性
●MiMeDB、gutMDisorderデータベースは微生物研究の未来を担う
●牧草の改良が家畜の持続可能性を向上
●母親のプロバイオティクス摂取は母乳を介して乳児の健康を促進
●高たんぱく・BCAA食が寝たきりの女性の筋肉維持をサポート
●緑茶、ウキクサの多い地中海式食事が内臓脂肪を減少する可能性
●プロバイオティクスの特性評価への統合的アプローチを研究者が提案
●良い面、悪い面、そして醜い面
Company News 企業情報
●ケリー社、亀田製菓とコメ由来のポストバイオティクスを欧米で販売する契約を締結
Regulatory News 法規制
●栄養プロファイリング:ケリー社、「シンプルで見やすく使いやすい」栄養スコアツールを発表
●食品・飲料へのCBD含有に対するFDAの強固な姿勢
●商品のヘルスクレーム承認を得るには「研究の量より質」:FiEでのプレゼンテーション
[今号のハイライト]
緑茶、ウキクサの多い地中海式食事が内臓脂肪を減少する可能性
[2022/12/9] [nutraingredients.com]
プラントベースのポリフェノールが豊富な地中海式食事は、通常の地中海食事や健康的な食事法に比べ、内臓脂肪(VAT)の減少に有益に働くことがイスラエルや米国の研究で示唆された。
German Research Foundation や Israel Ministries ofHealth などの援助を受けて行われた今回の研究は、DIRECTPLUS 研究の一環として、Ben-Gurion University of the Negevや Harvard School of Public Health、University of Leipzig の研究チームが主導して行った。
通常の地中海式食事法にウキクサと緑茶などを加えたグリーン地中海式食事(グリーン MED)は、ポリフェノールやプラントベースのたんぱく質が豊富で、赤身の肉を排除している。グリーンMED は 2020 年から始まったコンセプトであり、当初、DIRECT-PLUS 研究チームが、心臓代謝リスクに対する影響を調べるために取り上げられ、LDL コレステロールや拡張期血圧、インスリン抵抗性などの改善が確認されている。
この時、研究者は、カロリーの摂取量ではなく食事の質が重要であることを認識し、ポリフェノールのプラスの役割に注目したという。グリーン MD は、赤身肉を完全に排除し、緑茶やくるみ、ウキクサを導入するものだが、ウキクサは、ポリフェノールと高質なたんぱく質を豊富に含む水生植物であり、食後や空腹時の血糖コントロールに有益で、必須アミノ酸、鉄分、ビタミン B12 を提供すると言われる。特にマンカイウキクサは、エラグ酸、安息香酸、ナリンゲニン、ルテオリン、ケルセチン、P-クマル酸、コーヒー酸といったフェノール代謝物が豊富であることが確認されている。
研究チームは、Shimon Peres Negev Nuclear Research Center(イスラエル)の従業員の中で、腹部肥満あるいは脂質異常症を有する 294 人(年齢;51 歳、男性 88%、BMI;31.2kg/m2 、VAT;29%)を、健康な食事ガイドラインに沿った食事群(HDG;対照群)、従来の地中海食事群(MED)、グリーン MED 群のどれかに割り付け、どの群にも身体的活動を組み合わせた。
MED とグリーン MED 群の摂取カロリーは制限され(男性が 1,500~1,800 kca/日、女性は1,200~1,400 kca/日)、どちらもウォルナッツを 28g/日加えた。グリーン MED 群のみ、緑茶を 3~4 杯/日、肉たんぱく質の代替としてウキクサの冷凍キューブ(100g)をシェイクしたものを摂取してもらった。これによると、体重は MED 群が 2.7%、グリーン MED 群は 3.9%、腹囲は MED群が 4.7%、グリーン MED 群 5.7%、内臓脂肪が HDG 群 4.2%、MED 群 6.0%、グリーン MED群 14.1%減少するという結果が出た。
緑茶やウォルナッツ、ウキクサを高摂取した群ほど、血漿の総ポリフェノール(主に馬尿酸)、尿中のウロリチン A ポリフェノールが上昇しており、内臓脂肪減少との有意な関連が示唆された。
ウォルナッツやウキクサ摂取によるウロリチン A 値の上昇は、腸内細菌によるエラギタンニンの代謝物に由来し、内臓脂肪減少との相関が観察される。また、ウキクサに含まれるグリシンとベンゾイン酸の代謝物が組み合わさった馬尿酸も、内臓脂肪減少に関連するとみられた。
研究者はこの結果を受けて、「グリーンMEDは、内臓脂肪の後退の重要な戦略となり得る」と結論付けた。
本研究は BMC Med に掲載されている。
(会員向けニューズレター「GNGグローバルニュース2022年12月23日号」より抜粋)
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