こんにちは、GNGの和泉です。
7月26日号のグローバルニュースをお届けいたします。
今号もバラエティに富んだ海外の最新ニュースを取り上げています。ぜひご覧ください。
世界的なインフレが進んでいますが、6月の英国のインフレ率は9.4%と40年ぶりの高水準となり、食品価格では前年比で9.8%上昇し、様々なニュースメディアで大きく取り上げられています。
英国では食品の盗難が相次ぎ、大手スーパーマーケットでは、高価なワインだけでなく、肉やチーズ、バター、コーヒーなどの一般的な食品にまでセキュリティタグを取り付けるようになったそうです。
現地アナリストによると、スーパーマーケットでのこのようなセキュリティ強化は、英国だけでなく、欧州全体に広がる可能性が高いということです。
実際、欧州委員会の統計部門であるEurostatによると、6月のバター価格はEU全体で前年比28.3%増、ドイツにおいては46%増と高い値を記録しています。
食料価格が高騰した理由はいくつかありますが、皆様もご存じの通り、まずCOVID-19パンデミックによる物流や労働力の混乱が挙げられます。
エネルギー価格の上昇、穀物価格の上昇、干ばつの影響もあり、仕入れ価格は2021年からすでに世界的に高騰していました。
エネルギー価格の上昇により、乳製品に関連する肥料や飼料も高騰し、さらに多くの粉ミルク工場が天然ガスに大きく依存していることで大きな影響を受けています。
欧州では今後、日常的に消費する食品にセキュリティタグを付けることが当たり前になってしまうかもしれません。
和泉 美弥子
この記事について
GNGでは、会員向けに世界各国の健康・食・栄養に関するニュースをセレクトし、日本語に要約したものを月に2回、ニューズレター「GNGグローバルニュース」として配信しています。
本日配信したグローバルニュースでは、プラントベースチョコレート市場拡大、サプリメント産業が直面する10の課題と現状、食品マイレージの環境への影響、想定の7倍、肥満児を対象とした研究でシンバイオティクスのウェイトマネジメント効果示唆 、など17の記事を取り上げています。
この記事では、その会員向けニューズレターの一部を抜粋してご紹介させていただきます。
……グローバルニュートリション研究会 会員企業様は、会員サイトにて、すべての記事をお読みいただけます。
■GNGグローバルニュース 2022年7月26日号 トピックス
MARKET NEWS マーケット
●プラントベースチョコレート市場拡大
●ADM、腸内細菌叢の主要トレンドを特定
●サプリメント産業が直面する10の課題と現状
●ASEANのKombucha市場、健康志向の高まりで拡大の機が熟す
●再生農業が新しいプラントベースミルクの重要な要素に
●EUの消費者のほとんどがラベルを確認し、サプリメントを安全に摂取している
Science News サイエンス
●食品マイレージの環境への影響、想定の7倍
●アーモンドの摂取で肥満に関連する疾病リスク低下の可能性
●食前のホエイたんぱく質摂取が食後の血糖値上昇を抑えるとの研究
●レスベラトロールとビタミンD3がCovid-19外来患者の入院率を低下させる可能性
●肥満児を対象とした研究でシンバイオティクスのウェイトマネジメント効果示唆
●ラクトバチルス属乳酸菌の2株が腸内環境を整え肥満の緩和に効果がある可能性
●クルクミンとピペリンの相乗効果でCOVID-19患者の衰弱軽減の可能性
●母親のマイクロバイオームが胎児の発育に影響を与えることを示す新たな研究
●赤身肉とプラントベースミート、より優れたたんぱく質源は?
Products News 商品情報
●アムウェイ韓国、パーソナライズされたプロバイオティクス製品開発
Regulatory News 法規制
●英国Food Standards Agency(FSA)、CBD製品認証申請の受付停止
[今号のハイライト]
サプリメント産業が直面する10の課題と現状
[2022/7/7] [naturalproductsinsider.com]
Covid-19パンデミック、インフレ、原料供給不足など、ダイエタリーサプリメント産業は現在、さまざまな試練、壁に直面している。そうした課題を次にまとめた。
1.Amazon
オンライン販売の巨大企業であるアマゾンは、「品質の番人」として、多くのポリシー採用を開始した。サプリメント販売についてアマゾンは、小売業者に分析検査証明書(CoA)、原材料表示などの全ラベル表示を含む商品画像、米食品医薬品局(FDA)規制である適正製造基準(GMP)認証の3つの提出を義務付けた。この動きは、サプリメント全体の品質基準を向上する推進力になると期待されている。
2.FDAのNAC攻撃
FDAはN-アセチル-L-システイン(NAC)含有サプリメントは販売に適さないとして、執行裁量方針を示したガイダンス草案を発表した。販売については継続できるが、NACは50年近く販売されている人気のサプリメント成分なだけに驚きは大きい。問題は、FDAが「執行裁量」を宣言するガイダンス草案を出した今、Amazonが同社のプラットフォームでの販売を許可する前に、FDAからの最終ガイダンスが必要になるかどうかである。
3, 製品リストへの掲載義務化(MPL)
FDAのガイダンスに盛り込まれたサプリメント商品の製品リストへの掲載義務化(MPL)を巡って、サプリメント業界では賛否がわかれている。MPLではメーカーに対し、全てのサプリメントの商品名、成分、ラベル画像などの全情報の提出を義務付ける。これに対して業界では、米栄養評議会(CRN)が賛成を、自然製品協会(NPA)が反対の立場を主張し、論争が繰り広げられている。NPAは、メーカーの負担の増大や、メーカーの製造、事業に関わる機密情報が公開されることなどを懸念しており、FDAに提出する情報をラベル表示される項目に限定すること、FDAがリストをサプリメントの市販前承認のツールとして用いないことを求めている。
4.サプライチェーン
サプリメント産業は成長と同時に、様々な困難に見舞われている。一つ目の問題はCovid-19パンデミックで、Now Health Group社のJim Emme氏は、「商品の充足率は75~82%で、その大半は中国のロックダウンによる原料不足によるもの」と説明した。二つ目の問題はロシアによるウクライナ侵攻で、これも原料不足により事業運営に支障をきたしている。同氏は、「サンフラワー商品の85%はウクライナからのもの。大豆などの代替品はあるが、アレルゲン問題が壁になる。さらに、原料輸送が課題で、昨年はコンテナさえ入手できなかった。今は入手できても、2,500ドルしたものが10,000~15,000ドルに高騰している」と嘆いた。
5.インフレ
食品価格が9%上昇しているなか、サプリメント産業にとっても2022年は困難な年である。例えば、Rainbow LightやNeoCellなどのブランドをもつClorox社は、第一四半期のビタミン・ミネラルサプリメント売上が落ち込んだことを報告した。賃貸料や燃料費、人件費、輸送費などの上昇は、小売業に重くのしかかる。
6.ヘンプCBD
FDA Safety and Landmark Advancements Act(FDASLA)が米国上院で懸案されるなか、悲観的な見方をすると、これによってCBD産業が一掃されるのではないかという心配が出てくる。ヘンプ産業が処罰の心配なく金融機関からサービスを受けられるというBanking Actも、上院で棚上げされている。ただ、CBD関連での明るい話題は、ペット市場でデルタ-8THCを非合法化する州が増えていることである。
7.免疫
Covid-19パンデミック以降、免疫サポート商品市場が急激に拡大している。「消化と免疫」、「ストレスと免疫」、「睡眠と免疫」など、免疫を加味した商品の売上が急上昇した。亜鉛やビタミンCなどこれまでの免疫サポート成分に加え、新しいプロバイオティクスや、ニンジンの搾り粕から生産した「BeniCaros®」のようなアップサイクル原料などが業界を賑わせている。
8.プロバイオティクス
プロバイオティクス市場は年々10%の成長をみせているが、サプリメントでの同分野は下降気味である。それは、サプリメントからキムチやコンブチャのような発酵食品や飲料へシフトしているためと考えられる。しかし、微生物が生命に欠かせないことは間違いなく、精密発酵分野は活気づいている。最近は、プロバイオティクス、プレバイオティクスに加え、ポストバイオティクスへの注目も増している。
9.意識の高い消費
一人ひとりの健康だけでなく、地球環境の健康への意識は年々高まっている。特定の食生活、アレルゲンフリー、機能性の追加、オーガニック、非GMO、アップサイクル、再生、動物福祉、さらにフェアトレードなど、社会の在り方にまで消費者の目が向くようになった。米国人の43%が特定の食生活を実践しており、その58%はミレニアル世代である。
10.信頼
近年、ヘルスケアシステムが信頼を失いつつある。その原因としては、どの施設においてもその政治化が進んだことが一端だと考えられる。サプリメント業界も品質の低下が噂になるなどしており、「新しい顧客をとらえても、彼らの信頼を得られなければすぐに離れていくだろう」とNow Health Group社のEmme氏は述べる。1で述べたAmazonのポリシーは、信頼失墜を食い止めるものとして、FDAもその役割を認めている。
(会員向けニューズレター「GNGグローバルニュース2022年7月26日号」より抜粋)
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和泉 美弥子
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