和洋女子大、魚介類の摂取量とうつ病リスクおよび不定愁訴の関係を確認、ほか|GNGニューズレター5月16日号





本日配信のGNGニューズレターでは、冒頭の巻頭言にて、2025年3月に『Nature Medicine』誌に掲載された「Optimal dietary patterns for healthy aging」の概要を紹介しています。

国内ニュースからは、三生医薬と京大、3Dプリンティングによる植物由来カプセル製造技術を発表、大塚製薬がベトナム初のポカリスエット工場を開設、アサヒグループ食品が帝人目黒研究所を買収、乳酸菌事業を強化へ、消費者庁、3.11通知GMP指針「自己点検表」を公表といった話題を取り上げています。

この記事では、その会員向けニューズレターの一部を抜粋してご紹介させていただきます。

こんにちは、GNG武田です。

和洋女子大学の研究者による大変興味深い論文、「Extent of Unidentified Complaints and Depression Is Inversely Associated with Fish and Shellfish Intake in Young Japanese Women」が国際栄養学雑誌『Nutrients』2025年4月上半期号(17巻7号)に掲載されました。
本研究は、若年日本人女性における魚介類の摂取と、未特定の身体的訴え(不定愁訴)および抑うつ症状との関連性を明らかにすることを目的とした横断的研究です。
未特定の身体的訴えとは、医学的検査で明確な異常が確認されないにもかかわらず、倦怠感、頭痛、めまい、胃の不快感などの自覚症状が継続的に現れる状態を指し、しばしば精神的ストレスと関連しています。
これらは一般的には「不定愁訴」とも呼ばれ、心身医学や東洋医学においても注目される現象です(日本では「不定愁訴」の方が一般的ですね)。

方法:
研究デザイン:横断的研究
対象者:若年日本人女性
評価項目:
– 未特定の身体的訴え(MDCQスコア)
– 抑うつ症状
– 食事調査(魚介類の摂取量、栄養素の摂取量)

主な結果:
・未特定の身体的訴えや抑うつ症状のスコアが高い参加者は、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、ビタミンD、ビタミンB₁₂の摂取量が低く、魚介類の摂取量も少ない傾向がありました。
・特に、未特定の身体的訴えと抑うつ症状の両方のスコアが高いグループでは、魚介類の摂取量が最も低く、低スコアグループの4分の1未満でした。

結論:
魚介類の摂取量が多い若年日本人女性ほど、未特定の身体的訴えや抑うつ症状のスコアが低い傾向が見られました。
これは、魚介類に含まれるオメガ3脂肪酸(EPAやDHA)やビタミンD、ビタミンB₁₂などの栄養素が、精神的健康に良い影響を与える可能性を示唆しています。
今後、食事指導や栄養教育を通じて、魚介類の摂取を促進することが、若年女性の精神的健康の改善に寄与する可能性があります。

本研究は横断研究ですので、この研究のみで因果関係を証明することはできませんが、過去の研究結果等と統合することで、より信頼性が増すと思います。

興味のある方は、是非、論文をご一読ください。
日本において、魚介類の摂取量の減少に歯止めがかかりませんが、足りない栄養成分はサプリメントで補うことで対応できると思います(魚介類の摂取量が1/4とは、驚きました)。

一方、3月に『Nature Medicine』誌に掲載された「Optimal dietary patterns for healthy aging」は、中年期の食生活が老年期の健康に与える影響を検証した、米国を中心とする国際的な前向きコホート研究です。
研究には、1986年から始まったNurses’ Health StudyおよびHealth Professionals Follow-up Studyに参加した、105,000人以上の医療従事者が対象となり、最大30年間にわたる長期的な追跡データを用いて分析が行われました。
大変興味深い内容でしたので、要約したものを載せておきました。
ボリュームのある論文を簡潔に要約しましたので、言葉足らずの面もあると思います。
興味のある方は、是非、論文をご一読ください。

武田 猛

GNGニューズレター(国内情報) 2025年5月16日 トピックス

<国内ニュース(要約)>

NEW PRODUCTS 新商品
●DHCがサプリメントゼリー3商品を新発売

MARKET NEWS マーケット
●完全栄養食に関する調査:認知率は7割強、直近1年間に利用した人は1割弱
●2025年3月のドラッグストア販売額、「健康食品」は前年同月比2.6%増加

SCIENCE NEWS サイエンス
●和洋女子大、魚介類の摂取量とうつ病リスクおよび不定愁訴の関係を確認
●シンバイオティクスヨーグルトが心の健康度や労働パフォーマンスを改善する可能性、森永乳業とメタジェンが発表
●三生医薬と京大、3Dプリンティングによる植物由来カプセル製造技術を発表
●グリコ、ネムノキが老化細胞を取り除くことを実証、特許取得

COMPANY NEWS 企業情報
●大塚製薬がベトナム初のポカリスエット工場を開設、健康ニーズに応える
●伊藤忠商事、スーパー大麦の日本・台湾における商標権・独占販売権取得
●味の素AGFがサブスクでコーヒー配達、ココロの健康をサポート
●サントリーグローバルイノベーションセンターと東北大が共同研究、水と健康がテーマ
●アサヒグループ食品が帝人目黒研究所を買収、乳酸菌事業を強化へ

REGULATORY NEWS 法規制
●消費者庁、食用赤色3号の食品への使用に自主点検求める通知
●消費者庁、3.11通知GMP指針「自己点検表」を公表

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[今号のハイライト]
和洋女子大、魚介類の摂取量とうつ病リスクおよび不定愁訴の関係を確認

[引用元:和洋女子大学 健康栄養学科 学科ニュース一覧]

和洋女子大学家政学部健康栄養学科の鈴木敏和教授、同大健康栄養学科卒業生の吉澤結生氏、同大元助手の高野栞氏らが、魚介類の摂取とうつ病リスクの間には緩やかな逆相関が認められ、魚介類の摂取が不明瞭な愁訴の発生に関与していることを示唆する研究結果を発表した。本研究は国際栄養学雑誌「Nutrients」の4月上半期号に掲載された。
栄養素や食品摂取が不定愁訴(病気の原因を特定できないが、身体の不調を感じる状態。精神的な疾患に隠れている場合もある)と関連することが、過去50年間の研究より指摘されてきたが、特定の栄養素や症状との関連性を体系的に検証した研究は無かった。鈴木教授らは、日本人の若い女性(和洋女子大学に所属する学部生(18~27歳)86名)を対象として、質問票を用いた横断研究を2023年6月から12月にかけて実施した。不定愁訴、抑うつ度、またはその両方のスコアが高い参加者は、スコアが低い参加者と比較して、エイコサペンタエン酸 (EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、ビタミンD、ビタミンB12の摂取量が低く、魚介類の摂取量も減少していた。抑うつ度と不定愁訴スコアがともに高い群は、スコアがともに低い健康と思われる群と比較して、魚介類の摂取量が1/4だった。
鈴木教授は「近年は魚介類の摂取量が、特に若い世代で急減しています。良好な人間関係や適度な身体活動に加えて、魚介類の摂取も取り入れたバランスの良い食事も不定愁訴の予防や良好な心身の健康状態維持に関わっていることが示唆されます。」と述べている。

(会員向けニューズレター「GNGニューズレター2025年5月16日号」より抜粋)

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18年間の実務経験と21年間のコンサル経験を積み、39年間一貫して健康食品ビジネスに携わる。国内外800以上のプロジェクトを実施。「世界全体の中で日本を位置付け、自らのビジネスを正確に位置付ける」という「グローバルセンス」のもとに先行する欧米トレンドを取り入れたコンセプトメイキングに定評がある。世界各地にネットワークを築き上げ、情報活用サービス「グローバルニュートリション研究会」主宰。食品会社、化粧品会社、製薬会社の健康食品部門に対して、商品開発・マーケティング・海外進出などのコンサルティングを行っている。人が幸せに生きるためには健康が第一である。健康食品産業は「幸せ創造産業」である、という信念のもと、クライアントの成功を通じ、消費者に支持される業界を目指し、業界で働く人すべてが自分の仕事に誇りと自信をもてるようにしたいという想いから、業界健全化活動にも取り組んでいる。

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