ウェルネスフード・ワールド第133回|煽られる「背徳市場」への違和感

こんにちは、GNG武田です。

最近、各種メディアで「背徳市場」や「健康キャンセル」といった言葉を目にする機会が増えてきました。

サントリーの「ギルティ炭酸NOPE」のヒットや、ミツカンの「ヤミツキ麺のたれ」、ファミリーマートの大型スイーツなどを取り上げながら、
「健康志向の反動」
として説明する記事も見られます。

確かに、高カロリー、高糖質、濃厚な味わいを前面に出した商品が注目を集めていることは事実です。
また、「今日は好きなものを食べたい」「少し自分を甘やかしたい」といった心理が存在することも間違いないでしょう。
しかし私は、この現象を単純に
「健康志向の反動」
として説明することには、少し違和感を持っています。


先日、日経クロストレンド Collegeの「ギルティ消費」に関する解説資料を見る機会がありました。
その中で紹介されていたサントリーの「ギルティ炭酸NOPE」の商品コンセプトでは、「好きな時に好きなことでストレスを溶解したいニーズ」に着目し、
「現代人のストレスを溶かす、欲望のままに楽しむ“やみつき”ギルティ炭酸」
として商品が設計されていました。

また、ターゲットとして、
「普段は健康や人間関係を気にして生活しているが、時々あえて欲望に溺れることでストレスを解消している現代人」
が挙げられていました。
興味深いのは、ここで想定されている生活者が、健康を気にしない人ではなく、むしろ健康を意識している人であることです。

さらに、同資料では2019年から2024年にかけて、
・ヘルスケアフード市場 2.4兆円 → 2.8兆円(118%)
・ギルティフード市場 3.4兆円 → 4.1兆円(124%)
と、両市場がともに成長していることが紹介されていました。

ここから読み取れるのは、
「ギルティ市場が伸びている」
ことではありますが、
「健康市場の反動として伸びている」
ということではありません。

実際には、健康市場もギルティ市場も同時に成長しています。
もし本当に健康志向そのものが弱まっているのであれば、
・プロテイン市場
・機能性表示食品市場
・GLP-1関連市場
・Longevity市場
などが同時に拡大していることを、どのように説明すればよいのでしょうか。

少なくとも現時点では、
「健康を気にする人が減った」
というより、
「健康も気になるし、楽しみも欲しい」
と考える方が自然に見えます。

実際、欧米では以前から
Permission to Indulge
という考え方が語られてきました。
直訳すると「楽しみの許容」となりますが、その本質は「健康を捨てること」ではありません。
例えば、
・Halo Top
・Oreo Thins
・Catalina Crunch
などの成功事例を見ると、
「楽しみたい」
という欲求を否定せず、
同時に
「健康も気になる」
という心理も受け止めています。

つまり、
健康か楽しみか
ではなく、
健康と楽しみをどう両立するか
という発想です。


一方、最近語られる「健康キャンセル」という言葉は、少し違う方向を向いているように見えます。

健康管理そのものから距離を置くこと。
あるいは、
「健康に気を使うことに疲れた」
という感覚です。

もちろん、そのような人も存在するでしょう。
しかし、それを市場全体の動きとして捉えることには慎重であるべきだと思います。
また、NOPEのような商品も、欧米で語られてきたPermission to Indulgeと全く同じとは言えないように思います。

欧米の成功事例では、商品そのものが「楽しみの許容」を提供しています。
一方、NOPEは高カロリー食品やスイーツそのものではありません。
むしろ、ギルティフードを楽しむ時間や、ストレスを解放する時間を支援する飲料として設計されているように見えます。

その意味では、
「楽しみそのもの」
ではなく、
「楽しみを許容する時間」
を提供しているとも言えるかもしれません。

もう一つ興味深いのは、
完全栄養食
との対比です。

完全栄養食が目指しているのは、
健康の効率化
です。

必要な栄養を効率よく摂取し、手間を減らし、健康を最適化する。

これは、
楽しみの許容
とも、
健康キャンセルとも異なる考え方です。

整理すると、
・健康と楽しみの両立(Permission to Indulge)
・健康管理からの離脱(健康キャンセル)
・健康の効率化(完全栄養食)
は似ているようで、それぞれ異なる価値観を表しています。

しかし最近の議論では、それらが一緒に語られているようにも見えます。

私自身は、
背徳市場が伸びていることを否定したいわけではありません。
むしろ、
なぜ今そのような商品が支持されているのか
を考えることは非常に重要だと思っています。

ただ、それを
「健康志向の反動」
という一言で説明してしまうと、
生活者が本当に求めているものを見誤る可能性もあります。

健康か、背徳か。

そんな単純な二項対立ではなく、
生活者は自分なりのバランスを取りながら日々の選択をしているのではないでしょうか。

最近の「背徳市場」の記事を見ながら、そんなことを考えています。

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