米国新食事ガイドライン2025–2030発表:現場が感じる「リアルな影響」と変化、ほか|GNGグローバルニュース2026年1月15日号






こんにちは、GNG武田です。

今週のGNGグローバルニュースでは、米国で策定が進められている次期食事ガイドライン(Dietary Guidelines for Americans 2025–2030)をめぐる記事を取り上げています。
※現時点では専門家委員会(Advisory Committee)による科学報告書が公表されており、これを基に米農務省(USDA)および厚生省(HHS)が最終版を策定している段階にあります。

次期食事ガイドラインの策定をめぐる議論では、添加糖については、従来の「総カロリーの10%未満」という基準に加え、1食当たり10g以下といった、より具体的な行動指標を求める議論や提言が注目されています。また、専門家委員会では、超加工食品(UPF)と健康リスクの関係について議論が続けられていますが、現段階では定義の曖昧さなどから、公式な制限基準として明確に位置づけることについては慎重な検討が行われています。一部のメディアでは強い表現が用いられていますが、現時点では議論の途上にあるテーマと捉えるのが適切でしょう。

その他、高齢者等に向けたたんぱく質摂取の重要性や、健康的な食事パターンにおける発酵食品の位置づけなど、科学報告書ではこれまで以上に明確なメッセージが打ち出されています。その一方で、これらの推奨案をめぐっては、米国内のさまざまな立場から賛否両論の声が上がっています。

自然食品・ナチュラルプロダクト系の業界団体からは、報告書で示された「加工度の低い食品」への回帰という方向性に対し、概ね前向きな反応が示されています。
Natural Products Association(NPA)は、リアルフードを中心とした食事への回帰や、添加糖・加工食品の削減という方向性を歓迎し、消費者教育や公的栄養施策において重要な一歩になるとの見解を示しています。Whole Foods Magazineなど業界メディアも、今回のガイドラインを「自然食品・クリーンラベル志向を後押しする内容」として紹介しています。

一方、農業・食品産業全体では、評価はより慎重です。
報告書において肉・乳製品・卵など動物性たんぱく質の位置づけが相対的に強まった点については歓迎する声があるものの、油脂や脂肪酸の扱い、また「超加工食品」という概念の定義や運用の曖昧さについては、今後の制度や調達基準への影響を懸念する意見も見られます。一般メディアでは、食品・飲料企業の株価が即座に反応したことも報じられ、市場へのインパクトという観点から注目が集まりました。これに対し、アカデミアや公衆衛生系の団体からは、報告書の内容が科学的知見に十分基づいていないとして、より批判的なコメントも出ています。

「米国公益科学センター(Center for Science in the Public Interest:CSPI)」は、動物性食品や全脂肪乳製品を前面に出したメッセージが、長年蓄積されてきた心血管疾患リスクに関する科学的知見を弱めかねないと指摘しています。また、「責任ある医療を求める医師会(Physicians Committee for Responsible Medicine:PCRM)」も、植物性食品中心の食事パターンからの後退であるとして、ガイドラインの方向性に強い懸念を示しています。

個々の研究者からもさまざまな見解が示されており、ニューヨーク大学の栄養学者Marion Nestle氏は、「超加工食品を避けるという勧告は重要」と評価しつつも、全体としては矛盾やイデオロギー色が強く、生活者にとって混乱を招く可能性があると述べています。

このように、新しい米国食事ガイドラインに対する反応は、業界団体、一般メディア、アカデミアそれぞれで大きく異なっています。しかし共通しているのは、今回のガイドラインが単なる栄養学的助言にとどまらず、医療費、産業構造、消費者行動にまで影響を及ぼす「政策メッセージ」として受け止められている点です。

さらに視野を広げてみると、米国の今回の動きは決して孤立したものではありません。
ブラジルでは「超加工食品(UPF)」を公式に避ける食事ガイドがすでに採用され、イタリアを中心とする地中海食モデルでは、食品の質や食行動そのものが重視されています。フランスや北欧諸国でも、栄養素の足し算ではなく、加工度、食文化、サステナビリティを含めた包括的な食事ガイドへと進化してきました。多くの国で、従来型のフードピラミッドは姿を消しつつあり、象徴的な図解よりも、「どのような食品を、どのように選び、どのような場面で食べるか」という行動指針が前面に出る傾向が強まっています。

こうした国際的な流れと対比すると、日本の「食事摂取基準」や「食事バランスガイド」は、制度としては非常に精緻である一方で、その基準が実際にどの程度達成されているのか、また日々の食事の場面で生活者に想起され、選択や行動の変化につながっているのかという点については、必ずしも十分に検証・議論されてきたとは言えません。

このような背景を踏まえると、今回の米国での一連の議論は、私たちニュートリション業界に対して重要な示唆を与えています。それは、単に基準や数値の正しさを語るだけでなく、生活者が実際の食事や買い物の場面で「どう選べばよいか」という具体的な行動指針を提示できているか、という問いかけです。
今回、米国食生活指針の策定プロセスで見られた「どのような食品を、どのように選び、どのような場面で食べるか」という議論を、日本にとっても「基準をいかに実生活の中で生きた指針として機能させるか」を問い直す良い契機とすべきではないでしょうか。

その他、興味深い記事も多数、ピックアップしています。

 

この記事について

GNGでは、会員向けに世界各国の健康・食・栄養に関するニュースをセレクトし、日本語に要約したものを月に4回、ニューズレター「GNGグローバルニュース」として配信しています。

この記事では、その会員向けニューズレターの一部を抜粋してご紹介させていただきます。

……グローバルニュートリション研究会 会員企業様は、会員サイトにて、すべての記事をお読みいただけます。

会員の方はこちら お問合せはこちら

■GNGグローバルニュース 2026年1月15日号 トピックス

Market News
● 欧州市場での原料透明性が自然由来健康食品の成功の鍵に
● 2026年に向けてヨーロッパでGLP-1減量薬の利用が拡大し、食品・飲料市場にも影響か
● 「Everyday Athletes(日常のアクティブ層)」の台頭でパフォーマンスニュートリション市場が急拡大
●中国によるEU乳製品への新たな関税措置の概要と背景

Science News
●AHPA が「Botanical Safety Handbook」に最新の安全情報を反映
●プロバイオティクス補給、ストレスの感受性への影響に男女差の可能性

Company News
●Whole Foods Market が「2026年の食物繊維ブーム」を予測 — 消費者需要の高まりとカテゴリー機会
●Z世代を捉える乳製品カテゴリー再定義の動き

Regulatory News
● 2026年におけるアジア太平洋(APAC)地域の主要なニュートラシューティカル関連規制動向
●米FDAが「栄養素と疾病リスク低減の健康表示」をめぐる請願を拒否 — ANHの要求却下
●米国新食事ガイドライン2025–2030発表:現場が感じる「リアルな影響」と変化

[今号のハイライト]

米国新食事ガイドライン2025–2030発表:現場が感じる「リアルな影響」と変化|GNGグローバルニュース2026年1月15日号

 米国保健福祉省(HHS)および農務省(USDA)は、「米国人のための食事ガイドライン2025–2030」を公表した。新指針は従来より簡潔化されつつ、たんぱく質摂取量を体重1kg当たり1.2~1.6gへ引き上げ、全粒穀物を基本とした食事構成や超加工食品の回避を強調している。特にシーフードはたんぱく質源として頻繁に言及され、オメガ3を多く含む魚介類は「健康的な脂肪」の例として示されている。妊娠・授乳期の女性に対しても、水銀含有量が比較的少なく、オメガ3が豊富な魚介類の摂取が推奨されている。
これに対し、自然食品業界団体のNatural Products Association(NPA)は「多くの人が食事だけで必要な栄養を満たせていない現状がある」とコメントし、特定の栄養素については補完的な手段の重要性を指摘している。また、Council for Responsible Nutrition(CRN)も、ガイドラインの方向性を評価しつつ、ビタミンDなど不足しやすい栄養素については、食事内容や生活環境、年齢などの条件に応じて、サプリメントなどによる補完を選択肢とすることが現実的であるとの見解を示している。
 本ガイドラインは、米国市場における商品設計などに影響を与える可能性があり、海外展開・商品開発・マーケティング戦略の検討にあたって参照される基準の一つとなり得る。
出典
WholeFoods (2026年1月9日)
https://www.wholefoodsmagazine.com/articles/17846-industry-reacts-to-the-new-us-dietary-guidelines

Dietary Guidelines for Americans
https://www.dietaryguidelines.gov/

 (会員向けニューズレター「GNGグローバルニュース2026年1月15日号」より抜粋)

 グローバルニュートリション研究会の会員企業の皆様は、会員ページで最新記事から過去10数年分のバックナンバーまですべての記事を読むことができます。

会員の方はこちら お問合せはこちら


グローバルニュートリション研究会とは?

世界中のニュートリションに関する情報の洪水の中から価値ある情報を厳選し、タイムリーに提供する、日本で唯一のサービスです。

単なる情報ではなく、これまで、弊社が関わった800以上のプロジェクトから得た経験や知見もお伝えしています。

ご多忙の皆様が、業界動向を短時間で把握できますよう、お役に立てることができましたら幸甚です。

グローバルニュートリション研究会について

 

最近の記事

CONTACT

  • TEL:03-5944-9813

お問合せフォーム

PAGE TOP