こんにちは、GNGの武田です。
先週、ラスベガスで開催されましたSupplySide Global(SSG)の視察に行ってきました。
新しい素材や原料も多く目を引きましたが、NMNの展示が再び増えているように感じました。
この背景には、9月末に発表されたFDA(米国食品医薬品局)によるNMN規制緩和の動きがあります。
これにより、米国ではNMNを含むサプリメント製品の市場投入が実質的に容認され、業界全体が再び活気づいているようです。
このタイミングに合わせるように、業界誌NutraIngredientsおよびFoodNavigatorが相次いでNAD⁺関連の記事を掲載しました。
• NAD⁺ market analysis: From hype to reality check(NutraIngredients)
• NAD⁺: The longevity molecule transforming functional food and drink(FoodNavigator)
両記事とも、NAD⁺市場が「過熱期」から「現実を見据えた段階」へ移行している点を指摘しています。
NAD⁺(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)は細胞のエネルギー代謝やDNA修復に関与する補酵素ですが、
体内での減少を補うにはNMNやNR(ニコチンアミドリボシド)といった前駆体の摂取が現実的とされています。
一方、NAD⁺を「長寿分子(longevity molecule)」として捉え、機能性飲料やスナック、グミなどの日常食品への応用を模索する動きも広がっています。
FoodNavigatorの記事では、「細胞代謝を支える食品」という新しいカテゴリー形成が注目されています。
SSGでは、FDAの方針転換を受け、NMN素材の展示が再び増加していました。
全てSelf-GRAS(自己確認GRAS)をベースにした原料ですが、企業は一斉に「合法的に再参入できる素材」として開発・販売を再開しつつあります。
市場は“NMN 2.0(第2フェーズ)”段階に入り、「細胞代謝」や「エネルギー生産」「レジリエンス(回復力)」といった科学的ベネフィットを軸に
再構築されつつあります。従来の「アンチエイジング」や「若返り」といった感覚的キーワードではなく、
「細胞レベルでの機能維持と健康寿命の延伸(Healthspan Optimization)」という、より実証的なテーマが中心に据えられています。
この動きは、近年加速するLongevityトレンドの進化とも密接に関係しています。
ここでいうLongevityは、単に「寿命を延ばす」ことではなく、細胞レベルの機能維持を通じて健康に生きられる期間(健康寿命)を最適化するという考え方です。
その中心にあるのが、エネルギー代謝やDNA修復に関わるNAD⁺経路であり、NAD⁺は「長寿分子(longevity molecule)」として、サーチュイン遺伝子の活性化やミトコンドリア機能の維持など、加齢に伴う代謝低下を抑える役割を担うことが知られています。
このため、NMNやNAD⁺関連素材は「寿命を延ばす」ための成分ではなく、
細胞を健全に保ち、生活の質を長く維持するための分子として再評価されつつあります。
さらに、米国市場では、これらのNAD⁺関連素材がプロテインやファイバー、血糖管理素材との組み合わせで活用される事例が増えています。
GLP-1薬ブームを背景に、「高たんぱく」「低糖質」「高栄養密度」の食品を通じて、筋量維持・代謝サポート・血糖安定化を同時に狙う“ウェイトウェルネス”市場が拡大しています。
この流れの中で、NAD⁺前駆体であるNMNやNRは、「代謝の質」「細胞のエネルギー効率」「ストレスからの回復力」を支える素材として、
新たな位置づけを獲得しています。
つまり、NMN/NAD⁺の応用は、サプリメントから機能性食品・飲料、そしてリアルフードへと拡張しつつあり、
今後は「プロテイン+NMN」「ファイバー+代謝サポート素材」「血糖コントロール+細胞活力」といった複合的フォーミュラが
主流になる可能性があります。
このような方向性は、単なる素材ブームではなく、“細胞の健康寿命を支える食”という新しい市場を形成しつつあると思います。
こうした視点から、「細胞レベルの老化抑制(cellular anti-aging)」は、今後の食品・サプリメント産業における大きな成長テーマになる可能性があります。
NMNやNAD⁺は単なる“素材”ではなく、「どのように細胞の健康を支えるか」という生理学的ストーリーを描けるかどうかが、
これからの製品開発と市場成長の鍵を握ると言えるでしょう。
この記事について
GNGでは、会員向けに世界各国の健康・食・栄養に関するニュースをセレクトし、日本語に要約したものを月に4回、ニューズレター「GNGグローバルニュース」として配信しています。

この記事では、その会員向けニューズレターの一部を抜粋してご紹介させていただきます。
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■GNGグローバルニュース 2025年11月6日号 トピックス
Market News
●EUにおける「マインドヘルス」サプリメントの法規制を解説
●機能性ビューティードリンク:革新を牽引する5製品
Products & technology News
●パン業界が目指す「健康パン」再構築の道
●NAD⁺:機能性食品・飲料を変えるlongevity(長寿)分子
●NAD⁺サプリ市場の再評価期:信頼性・差別化戦略が鍵となる新フェーズへ
●AIが変えるサプリメント開発:NutriSelect.aiの挑戦
Science News
●マインドヘルス訴求サプリの科学:脳・心に関する研究手法を探る
●マイクロカプセル化ポリフェノール、糖尿病予備軍における健康・体力改善を示唆
Company News
●Coca Cola、糖質ゼロ&高たんぱく質戦略でGLP-1時代に対応
Regulatory News
●オーストラリアのTGA、リスト医薬品の「許容適応表示」ガイダンスを更新へ
[今号のハイライト]NAD⁺:機能性食品・飲料を変えるlongevity(長寿)分子
|GNGグローバルニュース2025年11月6日号
longevity・ウェルネス市場において、NAD⁺(ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド)が注目を集めている。NAD⁺は細胞内でのエネルギー代謝、DNA修復、細胞シグナル伝達に重要な共酵素であり、加齢やストレス、食事の乱れによりそのレベルが低下するとされる。
食品・飲料業界では、NAD⁺を支えるための設計として、ビタミンB3(ナイアシン、ニコチンアミド、ニコチンアミドリボシド/NR、ニコチンアミドモノヌクレオチド/NMN)を配合する試みが進んでおり、機能性飲料、スナック、グミ、ミールリプレイスメントなど多様なフォーマットが探られている。
市場動向としては、NAD⁺関連の食品・飲料市場が現在約 12 億ドル規模から、2033年には約 48 億ドルに達するとの予測が出ており、年平均成長率(CAGR)は約 16.7%と報じられている。
出典
FoodNavigator(2025年10月23日)
https://www.foodnavigator.com/Article/2025/10/23/nad-the-longevity-molecule-transforming-functional-food-and-drink/?utm_source=newsletter_daily&utm_medium=email&utm_campaign=24-Oct-2025&cid=DM1240927&bid=826408446
(会員向けニューズレター「GNGグローバルニュース2025年11月6日号」より抜粋)
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