こんにちは、GNG武田です。
先週22日、FFC2.0研究会による第1回シリーズセミナーが開催されました。
新規食品(ノベルフード)に求められる安全性試験をテーマとして、トランスジェニックグループさんが、非臨床と臨床のそれぞれの観点から健康食品の安全性評価について講演されました。
機能性表示食品だけでなく、健康食品全般の安全性に対する考え方を、改めて勉強させていただきました。
海外においても、サプリメントの安全性に関するニュースが多くなっています。
米国ミシガン大学の研究チームは、ハーブサプリメント(HDS)による肝毒症例が、7%(2004~2005年)から20%(2013~2014年)へと増加していることを公表しました。
ターメリック、緑茶エキス、ガルシニア、ブラックコホッシュ、紅麹米、アシュワガンダの6種類のハーブが肝毒性を持つ可能性があると指摘されています。
オーストラリアでは、薬品・医薬品行政局(TGA)がガルシニアカンボジアを含有する補完医薬品に対し、肝障害に関する使用上の注意を商品に記載することを求める提案を発表しました。
5月24日時点で、ガルシニアカンボジア、あるいはその成分のカルシウムヒドロキシクエン酸によるものとみられる障害症例が6件報告されていることを受けたものです。
わずか6件の報告により当局が注意喚起をすることを決めるというフットワークの良さです。
これらは、販売後の健康被害情報収集のあり方について示唆を得るものだと思いす。
国内だけでなく、広く海外の安全性や健康被害に関する情報収集をし、素早く対策を講じることは、日本においても重要になってくると思います。
武田 猛
この記事について
GNGでは、会員向けに世界各国の健康・食・栄養に関するニュースをセレクトし、日本語に要約したものを月に2回、ニューズレター「GNGグローバルニュース」として配信しています。
この記事では、その会員向けニューズレターの一部を抜粋してご紹介させていただきます。
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■GNGグローバルニュース 2024年8月27日号 トピックス
Market News マーケット
●魚か藻か:オメガ3の由来を正確かつエシカルに宣伝する方法
Products & technology News プロダクツ&テクノロジー
●微生物発酵事業への投資額がプラントベース事業を超えて躍進
●農家が農場で培養肉を生産?新技術の中心は農家
Science News サイエンス
●睡眠、メンタル症状向けサプリメントに関する論文レビュー
●プロバイオティクスとカゼインの併用はサッカー選手の持久力を改善する可能性
●ハーブサプリメントと肝障害との関連性を示唆する研究に業界は反発
●プラントベース食は生物学的な若返りを図る可能性:他の専門家「結論を出すには早すぎる」
●物価高騰の中、APACの消費者にとって睡眠とメンタルヘルスは最大の関心事
Company News 企業情報
●Zoe社、シリーズBで1,500万ドルを調達、米市場拡大を目指す
Regulatory News 法規制
●「キノコグミ」摂取後5人に幻覚、嘔吐などの症状が:オーストラリア
●米上議提出の「リスト法」に対し、ダイエタリーサプリメント関連5団体から反対意見噴出
●フランスの培養フォアグラのメーカー、Gourmey社がEUで認可を申請
●タイ政府機関、インスタント食品への新しいラベル規制条項を発表
●TGA、ガルシニアカンボジア商品に肝障害に関連する注意書きを加える提案
[今号のハイライト]
ハーブサプリメントと肝障害との関連性を示唆する研究に業界は反発
[2024/8/7] [nutraingredients.com/]
6種のハーブサプリメントを頻繁に摂取すると、肝臓に有害な影響を与える可能性を示唆する論文が発表され、ハーブ関連産業から非難、反論が上がっている。
University of Michiganの研究チームは、国民健康栄養調査(NHANES)のデータを見直し、米国内でのハーブサプリメント使用の理由、頻度を究明した。
NHANESによると、米国内のダイエタリーサプリメント利用は、32.9%(1971~1974年)から52%(2011~2012)、さらに57.6%(2017~2018)へと年々増加しているという。また、「Drug Induced Liver Injury Network」(DILIN)の処方箋、市販薬、代替薬による重度肝臓障害の事例を分析した。ハーブサプリメント(HDS)利用の広がりとともに、HDSによる肝毒症例が、7%(2004~2005)から20%(2013~2014)へと増加していることも示唆した。
研究チームは、NHANESから抽出した成人9,685人のデータにより、4.7%が、肝毒性を持つ可能性が指摘されるハーブ6種の影響を受けていると報告した。この6種とは、最も有害報告が多いターメリック、緑茶エキス、ガルシニア、ブラックコホッシュ、紅麹米、アシュワガンダとなっている。
研究者の説明によると、米国成人1,560万人が過去30日以内に肝毒性が疑われるハーブ系商品を最低1種摂取しているという。そして、「植物系商品の製造、検査に対する規制的監督が欠如している状況下では、臨床医は、規制外商品の摂取による有害事象の発生を注意深く見守るべきであり、監督および規制機関は、サプリメントがどのように製造、検査、販売、監視されるかに常に目を向けるべき」と警告した。
これに対し、米植物協議会(ABC)のStefan Gafner博士は、NHANESデータを基に、植物由来サプリメントを利用することは容認できるとするも、約1,500万人が肝毒性の可能性がある6種のハーブに暴露しているという可能性については、研究者が提示した複数のリファレンスは適切な脈絡を持たないと、異議を唱えた。また、同博士は、研究者が使用したデータは、成人の人口ではなく未成年を含んだ総人口を基にしたもので、欠陥があるといわざるを得ないと、抗議している。
さらに、論文では、ハーブ商品の成分や化合物の潜在的肝毒性を分析しておらず、治療的用量(研究で証明済み)で使用された場合の有害事象をレビュー、あるいは毒性リスクを確認したわけでもないなど、研究アプローチには複数の問題があると、反論した。
ただ、「残念なことに、障害の報告はあり、そうした商品には、適正な技術で配合されていない混入物が検出されている場合が多い。また、処方箋薬、市販薬との間違った併用なども考えられ、成分の確認、さらに、消費者の基礎的な健康状態、薬剤の併用、年齢、性別、商品製造法、利用期間などの要素が因果関係の評価を行う上で重要である」と加えた。
また、化合物の有害事象に対応するSafety Call社のRick Kingston氏は「論文の研究者は、調査研究の制限として、パンデミック前のNHANESに対する回答率の低さ、臨床転帰との関連性を判断する機会の欠如、サプリメントと薬剤利用の自己申告の性質などの可能性を挙げている。また、今回の研究では、サンプルサイズが、植物系商品による肝毒性を検出するうえでは適切ではなく、よって、ハーブ6種の摂取と肝障害発生との因果関係を確認するための研究設計ではないことも、言及している」と説明した。本研究はJAMA Network Openに掲載されている。
(会員向けニューズレター「GNGグローバルニュース2024年8月27日号」より抜粋)
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