本日配信のGNGニューズレターでは、冒頭の巻頭言にて、DSHEA施行後から10年前後までの、当時の米国サプリメント市場の混乱等について、改めてまとめています。
国内ニュースからは、働く女性に聞いた睡眠に関するアンケート調査、味の素株式会社、「調理の楽しさ」「共食」とWell-beingとの関係を示した調査レポートを発表、プロバイオティクスが月経前症候群の精神的症状を改善、機能性表示食品めぐる措置命令、優良誤認「国が痩せると認めた」、などといった話題を取り上げています。
この記事では、その会員向けニューズレターの一部を抜粋してご紹介させていただきます。
こんにちは、GNG武田です。
残念ながら、先週火曜日に、再び機能性表示食品が措置命令を受けました。内容を見ましたが、あまりに酷い広告表現に愕然としました。これは無知なのか確信犯なのか、いろいろなことが頭の中をめぐりました。
恐らくこれらの広告は氷山の一角だと思います。最近、内臓脂肪、ウェストサイズ、体重、BMI低減機能を有する機能性表示食品の広告の調査をしましたが、明らかに事後チェック指針違反、延いては景品表示法違反が強く疑われるものが少なくありませんでした。再来年(2025年)に制度スタート10年を迎える機能性表示食品ですが、今まさに岐路に立っているのではないでしょうか。
機能性表示食品制度策定の際、参考とされた米国ダイエタリーサプリメント制度(Dietary Supplement Health and Education Act:以下DSHEA)は、来年(2024年)、制度施行30周年を迎えます。最近の機能性表示制度を取り巻く問題を見るにつけ、DSHEA施行10年を経た2004年当時の様子とよく似ているのではないかと思います。
制度が始まり、それまで出来なかった機能性表示ができるようになり、市場は活性化します。一方で、制度の理解が不十分な企業、或いは全く理解していない企業によるトラブルが続きます。そして、それらが消費者の信用を失うことになり、市場の成長が鈍化しました。
どんな問題が起きたのか?
DSHEA制定後、急成長していた米国サプリメント市場だが、すぐさま問題にも直面した。
■制度を守らない企業が続出
・構造/機能表示のルールを守っている企業は約50%程度しかいなかった
何故か?
●DSHEA制度のルールをきちんと理解していない。
●FDAの規制が甘いため、準拠を重視していない企業が多い。(FDAは公衆衛生に重大な影響を及ぼす事項にしか反応しない。)
■ネガティブ報道
・大手製薬会社3社がハーブ含有製品を発売、大きなマーケティングキャンペーンを行った。
それ対して、効果に疑いを持ったメディアによるネガティブな報道が市場全体に影響した。
実際に品質の悪い製品が流通していた事も浮き彫りとなった。
その他の要因としては、
■科学における要因
・サプリメントの有効性を示す研究結果数、信憑性の不足
・ヒト試験結果の不足、または矛盾するヒト試験結果
・疾病予防を目的とした研究に対する行政の助成が不足
■品質における要因
・摂取量、品質、含有成分量の不明確さ
・comによる表示の真実の暴露、ラベル表示の詐称による信頼度低下
が挙げられます。
それからおよそ20年が立ちますが、同じような現象が日本でも起きていると思えます。機能性表示制度導入後10年のパラドクス、とでも言いましょうか、制度を持て余す企業や、悪用する企業による違法行為が横行するようになるのは、国が違っても同じようです。特に、届出制である米国DSHEAと日本の機能性表示食品は企業の良心が問われる制度です。
では、なぜ米国DSHEAは30年続いたのか、ここから学べることは多くあると思います。来年6月に、DSHEA Summitが開催され、業界キーマンたちによるディスカッションがあります。私も参加できればと思っています。
お陰様をもちまして、来年、GNGも創業20周年を迎えます。
このご恩にお応えするために、「20周年謝恩セミナー」として米国と欧州から業界プロフェッショナルを招き、「日米欧ヘルスクレームサミット」を開催することを企画しています。既に、米国United Natural Products Alliance(UNPA)会長のLoren Israelsen氏からは来日可能の返事を頂いています。欧州からはGNGの長年のパートナであるNew Nutrition BusinessのJulian Mellentin氏をお招きする予定です。
規格基準型のEUヘルスクレーム制度、届出制のDSHEAの変遷や課題をお話しいただき、日本の機能性表示食品制度がより良く機能するためには何が必要か、皆さんと一緒に考える場に出来ればと思っています。開催時期は、来年5月後半を予定しています。
詳細が決まり次第、会員企業の皆さんには速やかにお知らせします。本サミットは、GNG研究会会員限定のクローズな会議にする予定です。
今号では、DSHEA施行後から10年前後までの、当時の米国サプリメント市場の混乱等について、改めてまとめてみました。機能性表示食品制度の現状と合わせてみて頂ければと思います(日本は、米国よりは遥かに健全だとは思いますが)。
武田 猛
GNGニューズレター(国内情報) 2023年12月15日 トピックス
<国内ニュース(要約)>
NEW PRODUCTS 新商品
●機能性表示食品「キレートレモンスパークリングクエン酸3000」期間限定で新発売
●「ルナリズム ブランド」から機能性表示食品「ルナリズム HIBACHI(ひばち)」新発売
●早大発ベンチャーのエコロギー、コオロギなど鉄分・亜鉛を豊富に含んだ天然素材100%使⽤の栄養バー「GRILLO BAR」を新発売
MARKET NEWS マーケット
●感染症に詳しい医師が実際に意識している免疫対策
●働く女性に聞いた睡眠に関するアンケート調査
COMPANY NEWS 企業情報
●米国子会社ファーマバイト社が女性の健康分野をサポートするボナファイドヘルス社を買収
●味の素株式会社、「調理の楽しさ」「共食」とWell-beingとの関係を示した調査レポートを発表
●「GABA100 睡活ビネガー」発売3 か月の売上が目標比400%超の大幅伸長
●柏の葉スマートシティ×明治、「ヨーグルトで街にミライをプロジェクト」が始動
●「記憶応援プロジェクト」開始
SCIENCE NEWS サイエンス
●プロバイオティクスが月経前症候群の精神的症状を改善
REGULATORY NEWS 法規制
●機能性表示食品めぐる措置命令、優良誤認「国が痩せると認めた」
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[今号のハイライト]
機能性表示食品めぐる措置命令、優良誤認「国が痩せると認めた」
消費者庁は12月5日、健康食品のインターネット販売を行う、株式会社アリュールに対し、景品表示法違反(優良誤認)にあたるとして措置命令を行ったと発表した。同社は、「国が痩せると認めたサプリ」などと、国が効果を認めたと標榜する機能性表示食品の広告を行っていた。届出表示に含まれない機能を訴求するなど、届出の範囲を著しく逸脱した広告表示も優良誤認と認定した。違反対象商品は、同社が2021年2月に届出を行っていたサプリメント「スリムサポ(SlimSapo)」である。
同商品の届出表示は、機能性関与成分に報告されている「肥満気味な方の体重、体脂肪、内臓脂肪、ウエストサイズの減少をサポートすることにより高めのBMIを減らす」であるが、同社はウェブサイトにおいて、「3週間で体重マイナス15kg」「1日たった1回で夢の40kg台」など、科学的根拠を踏まえた届出表示の範囲を大きく逸脱した広告を行っていた。
(会員向けニューズレター「GNGニューズレター2023年12月15日号」より抜粋)
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