本日配信のGNGニューズレターでは、冒頭の巻頭言にて、米国ダイエタリーサプリメント市場の成長とNBTYの成長についてご紹介しています。
国内ニュースからは、健康の維持・増進に関する食の意識調査、キリンホールディングス株式会社、ファンケルの完全子会社化を目的とした公開買い付け開始を決定、紅麹が腎臓障害、肝機能障害、筋肉の有害症状を引き起こす可能性は低いー10 年間の最新レビュー、などといった話題を取り上げています。
この記事では、その会員向けニューズレターの一部を抜粋してご紹介させていただきます。
こんにちは、GNG武田です。
このところ、暗いニュースが続いたウェルネスフード業界ですが、週末にビッグニュースが入ってきました。キリンホールディングスさんがファンケルさんを完全子会社化するという、業界にとって大きなインパクトのあるニュースです。キリンさんは、昨年のオーストラリアのサプリメントトップ企業であるBlackmoresの買収に続く、大きな動きだと思います。
米国ダイエタリーサプリメント市場も、多くのM&Aにより企業が成長してきました。ご存じない方もいらっしゃいますが、実は米国サプリメント市場のトップ企業は、ネスレの子会社のネスレヘルスサイエンスという会社なのです。そのネスレヘルスサイエンスも、これまたあまり知られていないNBTYという会社を買収して急成長しました。ネスレヘルスサイエンスの2020年の売上は$998Mでしたが、2021年にNBTYのコアブランドを買収し売上が$4,047Mに急拡大し、世界最大のサプリメント企業になりました。本号では、米国ダイエタリーサプリメント市場の成長とNBTYの成長にフォーカスしてみました。
また、先週のGNGグローバルニュースでご紹介した「紅麹エキスの使用が筋肉症状および肝機能障害の発生に与える影響:有害事象報告システムおよび利用可能なメタ分析からの最新情報“The Impact of Red Yeast Rice Extract Use on the Occurrence of Muscle Symptoms and Liver Dysfunction”」という論文の記事をGNGニューズレターでも再び掲載しました。
ここからは少し長くなりそうですので、お忙しい方は飛ばして下さい。
紅麹事件に関して、消費者庁の検討会を経て「食品表示基準の一部改正の方向性」が6月6日に公表されました。届出後の遵守事項として以下が示されています。
・サプリメント最終製品製造についてGMP遵守
・健康被害の情報の収集と提供の遵守
・届出後の新たな科学的知見により機能性表示の根拠が最新のものになっているかの情報収集
・届出後の遵守の自己チェック
これらは、制度の健全化にとって必要不可欠なことであり、中長期的に見ても良いことだと思います。
一方で、検討会では議論されず、メディアにもほとんど取り上げられていない重大な問題が残っていると思います(「NHKスペシャル」でも触れられていませんでした)。
それは、「モナコリンK」という医薬品成分が「ポリケチド」という名称で機能性表示食品の機能性関与成分として届出されたということです。第2回検討会で、FOOCOMの森田さんが参考人として参加され、「医薬品の成分を含む機能性表示食品について、新たな規制を検討してください。」と提言されましたが、検討会では議論されず、「検討会報告書」にも残っていません。わずかに報告書の別添資料の「構成員からの主な意見」として「医薬品成分を含む機能性表示食品について、届出情報を見ても消費者は気付くことができず、またこれらは特別な注意が必要である。届出情報の在り方について、新たな規制を検討してほしい。」と掲載されているだけです。
海外の食品原料はポジティブリスト、ネガティブリストで規制されることが一般的です。そして、リストに載っていない成分を食品として使用する場合は「新規食品(Novel Foods)」に該当し、市販前に申請し、国による審査、許可が必要になります(米国にはNovel Foods制度はありませんが、GRAS、NDIという制度があります)。
日本には、食品のポジティブリストもネガティブリストもありません。それに近いものに、昭和46年の厚生省薬務局長通知「無承認無許可医薬品の指導取締役について」(通称「46通知」)に添付されていた「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」と「医薬品的効能効果を標榜しない限り医薬品と判断しない成分本質(原材料)リスト」(両方合わせて、通称「食薬区分リスト」)があります。
しかし、このリストは医薬品かどうかを判定するためのリストであり、食品としての安全性を評価したものではありません。つまり、食品のポジティブリストでもネガティブリストでもありません。医薬品の法律で食品を規制するという、海外では見られない珍しい構造です。そして、どちらのリストにも掲載されていない原材料はどう扱われるか、これも重要です。「46通知」には「(どちらにも収載されていない成分本質(原材料)を含む製品を販売する事業者は)厚生労働省に判断を求めることができる」と書かれています。現状は、事業者の判断、責任で販売されています。
また、厚生労働省の「医薬品の範囲に関する基準」に関するQ&Aについて(平成31年3月15日)には、医薬品成分を元から含有する生鮮食品は、その成分を含むからと言って直ちに医薬品とは判断しない、その加工食品も、その成分を抽出・濃縮・純化を目的としていなければ、直ちに医薬品とは判断しない、という内容が示されています。
食薬区分リストの「専ら医薬品」リストには、モナコリンKもロバスタチンも掲載されていません。しかし、「46通知」の「食薬区分における成分本質(原材料)の取扱いについて」に、「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」の考え方として、「専ら医薬品として使用実態のある物」と示されています。つまり、モナコリンK(ロバスタチン)は「専ら医薬品リスト」に収載されるべき成分となります(なぜ収載されていないのかはわかりません)。ただし、先のQ&Aによれば、伝統的な製造方法であれば直ちに医薬品とは判定されません。つまり、伝統的な製造方法で作られた「紅麹」は、直ちに医薬品とは判断されないということです。
では、「モナコリンK」を抽出・濃縮・純化を目的とした場合はどうなるのでしょうか?伝統的に使用されてきた紅麹菌とは異なる菌株が使用された場合はどうなるのでしょうか?ハッキリしません。
そして、なぜ「モナコリンK」ではなく「ポリケチド」という機能性関与成分名となり届出が出来たのでしょうか?
原因究明の最中ではありますが、届出のプロセスも明確にされるべきだと思います。機能性表示食品届出の現場では、「何故、あの商品が届出できたのか?」と思う届出が時々あります。透明性の高い機能性表示食品制度ですが、届出プロセスについては透明性が高いとは思えない時があります。透明性の低い歪んだ届出は制度の健全化を妨げます。これは現場で強く感じていることです。
多くの被害者を出してしまった今回の事件の根本は、食薬区分リストに未掲載の医薬品成分が別の物質名で届出されたことにもあるのではないか、と思っています。
この機会に、機能性表示食品のみならず全ての食品に対して
・ノベルフード制度
・ポジティブリスト制度
が導入されることを強く望まれます。
それが、再発防止策になりますし、日本企業の海外での競争力強化にもなります。そして何より、国民の安全を守るという重要なことになります。国が重い腰を上げてくれることに期待をしています。
武田 猛
GNGニューズレター(国内情報) 2024年6月18日 トピックス
<国内ニュース(要約)>
NEW PRODUCTS 新商品
●キリン×ファンケル、機能性表示食品の炭酸飲料を新発売
●明治、フラクトオリゴ糖を使用したチョコレートを発売
MARKET NEWS マーケット
●健康の維持・増進に関する食の意識調査
●2024 年 4 月のドラッグストア販売額、「健康食品」は前年同月比 0.0%の横ばい
COMPANY NEWS 企業情報
●江崎グリコ株式会社、Greenspoon のグループ参画を通じ健康・食品事業強化
●カルビー、日本人に多い腸内フローラのタイプ TOP3 や傾向を発表
●腸内細菌検査の業界団体を 24 年設立へ
●QBB のプラントベースチーズ、ITI(国際味覚審査機構)2024 年優秀味覚賞を受賞
●味の素とクラシコム、協働マーケティング「暮らしの素プロジェクト」を始動
●キリンホールディングス株式会社、ファンケルの完全子会社化を目的とした公開買い付け開始を決定
SCIENCE NEWS サイエンス
●紅麹が腎臓障害、肝機能障害、筋肉の有害症状を引き起こす可能性は低いー10 年間の最新レビュー
●ユーグレナ社と武蔵野大学、エルゴチオネインがパーキンソン病の発症と進行に対する予防効果を有する可能性を示す研究結果を確認
●明治保有の乳酸菌を含む発酵乳に、糖尿病予備群成人の血糖コントロールを改善し HbA1cを下げる効果を確認
●金のユーグレナ®(パラミロン EOD-1®)の摂取が筋肉細胞を太くする
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[今号のハイライト]
紅麹が腎臓障害、肝機能障害、筋肉の有害症状を引き起こす可能性は低いー10年間の最新レビュー
[原文:Nutraingredients]
紅麹の摂取による腎臓障害、筋肉症状、肝機能障害の発生率が低いことが、10年間に渡るメタアナリシスの結果、明らかとなった。同研究結果は、小林製薬の紅麹サプリメント事件の前月に発表された。
今回の研究では、研究者らは筋肉と肝臓にのみ焦点を当てたが、メタアナリシスのレビューから、紅麹による腎臓障害の発生率は低いことも示された。
2013年9月(紅麹摂取に関連する最初の症例が記録された)から2023年9月30日まで、イタリアの研究者らは、紅麹抽出物の使用と筋骨格系症状および肝機能障害の発生との関連について、米国食品医薬品局(FDA)の有害事象報告システムのデータ(FAERSとCAERS)と、紅麹に関する無作為化臨床試験(RCT)の公表されたメタアナリシスを分析した。
「紅麹摂取に関連した筋骨格系障害は、2023年9月30日までにFAERSデータベースで報告された筋骨格系障害の全症例の0.002%を占めている」と研究者らはNutrients誌に書いており、CAERSのデータも同様の傾向を示している。
6,663人の被験者を対象とした20のRCT(モナコリンKの用量は2.4mgから24mgまで)のメタアナリシスでは、腎障害と肝機能異常の発生率は紅麹群、プラセボ群ともに5%未満であった。また、紅麹サプリメント(モナコリンKの含有量は2~10mgとさまざまである)を4~24週間にわたって摂取した研究のメタアナリシスでは、紅麹群でも対照群でも肝機能や腎機能に変化はみられなかった。
紅麹には、コレステロール値を下げるために使用される処方薬の一種であるスタチンと化学的に同一であるモナコリンKを中心とする生理活性成分モナコリンが含まれているため、コレステロール低下作用がある。さらに、モナコリンKはスタチンと同様に肝臓に影響を及ぼす可能性があるが、肝臓への害とスタチン療法との因果関係は確認されていない。
欧州食品安全機関(EFSA)は利用可能なデータを考慮し、2022年に紅麹サプリメントの安全性について警告を発し、3mg/日未満の用量で紅麹由来のモナコリンの使用を承認した。FDAもまた、紅麹サプリメントの安全性について懸念を表明し、2007年に早くもその使用に対する警告を発している。
研究者らは、「FDAに提出された報告書は因果関係について情報の質と信頼性にばらつきがあり、因果関係が科学的に検証されていないため、特定の製品に関連する実際のリスクを推定するために使用することはできない」と述べている。
(会員向けニューズレター「GNGニューズレター2024年6月18日号」より抜粋)
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