本日配信のGNGニューズレターでは、冒頭の巻頭言にて、武田が米国CRNが公表した調査レポート、ダイエタリーサプリメント使用による医療費削減効果について紹介しています。
国内ニュースからは、完全栄養食の市場意識調査、「まずい」「コスパが悪い」等のイメージが未利用者に先行か、キリン、電気味覚の塩味増強効果と減塩手法が「Innovative Technologies 2022」を受賞、森永乳業とライフログテクノロジー、たんぱく質摂取の新しい習慣化を目指した取り組み開始、森下仁丹とメタジェン、ビフィズス菌による便通改善効果を得られる人の予測に成功、などといった話題を取り上げています。
この記事では、その会員向けニューズレターの一部を抜粋してご紹介させていただきます。
こんにちは、GNG武田です。
今年も残すところ1ヵ月となりました。今年のウェルネスフード業界を一言で表すとしたら「フィジカルからメンタルへ」ではないかと思います。
今からおよそ15年ほど前、まだ機能性表示食品制度が誕生するとはだれも思っていないかった頃、当時の健康食品業界は、課題山積、前途多難の真っただ中で、業界の将来も風前の灯火でした。
そんな中、米国のLweinスタディを知り、サプリメントの経済効果について考えるきっかけをもらいました。とても衝撃的なニュースでした(2007年6月)。サプリメントによる医療費削減効果をシュミレーションするという、サプリメントの存在意義を示そうという、とても素晴らしい試みでした。
その内容は、
- カルシウムとビタミンDの併用による骨粗しょう症リスクの低下により、54年間で正味の費用削減効果は約161 億ドル(約2兆2,540 億円)になると推定される
- 母親の葉酸摂取により、胎児のNTD 神経管欠損症発症の予防効果により、5年間で14 億ドル(約1,960 億円)を削減することができる
- ω-3脂肪酸摂取によりCHD(冠動脈疾患)発症リスク低減により、5 年間でヘルスケア費用が32 億ドル(約4,480 億円)削減されると推定される
- ルテインとゼアキサンチンの併用により、相対的なAMD(加齢性網膜黄斑変性症)リスクが減少するので、援助を必要とする人が減り、5 年間で36 億ドル(約4,100 億円)が削減されると推定される
というものでした(いずれもサプリメント費用を差し引いた金額。1$=140円で計算)。
サプリメントによる社会貢献を具体的な数字で示す、画期的な内容でした。当時、このようなシュミレーションが日本でも出来ないものか、いろいろと考えたものでした。
そして今年になり、やはり米国で、CRN(the Council for Responsible Nutrition)が “Health Care Cost Savings from the Targeted Use of Dietary Supplements”(ダイエタリーサプリメント使用による医療費削減効果)という調査レポートを公表しました。
Lweinスタディと同様、サプリメント使用による医療費削減効果を試算し、シュミレーションしています。
今回の対象成分と疾病は以下の通りです。
それらの2022年から2030年の累計NET BENEFITSは、
- オメガ 3 脂肪酸と冠動脈疾患:20億ドル(約5,628億円)
- マグネシウムと冠動脈疾患:98億ドル(約2,646億円)
- 水溶性食物繊維と冠動脈疾患:66億ドル(約1,772億円)
- ビタミン K2 と冠動脈疾患:84億ドル(約1兆1,738億円)
- カルシウム & ビタミンDと骨粗しょう症:41億ドル(約2兆1,757億円)
- ルテイン&ゼアキサンチンと加齢黄斑変性:94億ドル(約132億円)
- ビタミンB群と認知機能低下:64億ドル(約1兆3,670億円)
- プロバイオティクスと過敏性腸症候群、生産性向上:83億ドル(約1兆3,276億円)
- 妊娠中の母親のコリン摂取と幼児期の認知発達:08億ドル(約151億円)
と試算されています(いずれもサプリメント費用を差し引いた金額。1$=140円で計算)。
もちろん、これらのシュミレーションは、特定の高リスク集団に対しての効果に限定されます。米国では、医療現場でもサプリメントが使用されていますので、このような試算が出てきます。そして何より、これらの裏付けるエビデンスがあります。
日本で同じようなシュミレーションをしようとした場合、まずエビデンスがありません。
米国は、サプリメントの有効性に対して国の予算を投入して検証をしています。残念ながら、日本ではそのような取り組みはありません。
米国はダイエタリーサプリメント健康教育法、日本は食品表示法。この差はますます拡がるばかりです。
今号では、 “Health Care Cost Savings from the Targeted Use of Dietary Supplements”に掲載されている2022年のシュミレーションを中心にお伝えします。
武田 猛
GNGニューズレター(国内情報) 2022年12月1日 トピックス
<国内ニュース(要約)>
NEW PRODUCTS 新商品
●唾液から免疫状態を15分で可視化する測定システム開発
MARKET NEWS マーケット
●サンスター、「お口の健康に関する調査」の結果概要発表
●Trairy Media、「ダイエットのきっかけ・理由アンケート」調査結果発表
●「ナッツバーなどバー型スナック調査」、男女とも「高たんぱく」「食物繊維豊富」を志向
●農水省、職員と来庁者の野菜摂取量を見える化測定した結果公表
●完全栄養食の市場意識調査、「まずい」「コスパが悪い」等のイメージが未利用者に先行か
COMPANY NEWS 企業情報
●キリン、電気味覚の塩味増強効果と減塩手法が「Innovative Technologies 2022」を受賞
●「プロジェクトA」食物アレルギーに関するオンライン出前授業2年目スタート
●森永乳業とライフログテクノロジー、たんぱく質摂取の新しい習慣化を目指した取り組み開始
SCIENCE NEWS サイエンス
●日清オイリオ、高齢者に向けてスマホアプリを用いた栄養指導の実証研究を開始
●フラボノイドの豊富な果物摂取量とうつ病の発症リスクとの関連
●森下仁丹とメタジェン、ビフィズス菌による便通改善効果を得られる人の予測に成功
●ストレスや職業意識の男女差に関する調査結果
●睡眠時無呼吸症候群の罹患がコロナ感染リスクを高める可能性
●血清尿酸値が高い2型糖尿病患者、大麦摂取により血清尿酸値が改善
REGULATORY NEWS 法規制
●厚生労働省、健康日本21(第二次)最終評価報告書を公表
[今号のハイライト]
森下仁丹とメタジェン、ビフィズス菌による便通改善効果を得られる人の予測に成功
[原文:PR TIMES Inc.]
森下仁丹株式会社と株式会社メタジェンは、生きたビフィズス菌を摂取することにより、便通が改善する人の腸内環境の特徴を明らかにした。また、機械学習を用いて、腸内環境の特徴からビフィズス菌摂取により便通が改善する人の予測にも成功した。
同研究では、便秘傾向者を主とした平均年齢47.7歳の20人(男性8人と女性12人)に、2週間にわたってビフィズス菌粉末0.53gを内包したカプセル、あるいはデンプンを内包したカプセル(プラセボ)を1日1回摂取させ、便通の評価と腸内細菌叢・腸内代謝物質を解析した。カプセルには、ビフィズス菌が胃を通過して腸まで届くように、森下仁丹の「耐酸性シームレスカプセル」、腸内環境評価手法には、メタジェンの「メタボロゲノミクス」が用いられている。
その結果、ビフィズス菌を摂取した被験者は、プラセボ群と比較して摂取2週間後の排便回数が有意に増加した。ビフィズス菌の摂取により顕著に排便間隔が改善された被験者を「レスポンダー」と定義し、機械学習を用いて、ビフィズス菌摂取前の腸内環境からレスポンダーの予測に成功した。レスポンダーの腸内では Eubacterium 属細菌の1種が多いこと、 Dorea 属細菌が少ないことなど、複数の腸内細菌の特徴が認められた。
森下仁丹株式会社は、「今回の共同研究で得られた成果をもとに、個々人の腸内環境を考慮した製品開発を視野に、今後も腸内環境の研究に取り組んでまいります」としている。同研究成果は2022年10月25日、科学雑誌「Computational and Structural Biotechnology Journal」に掲載された。
(会員向けニューズレター「GNGニューズレター2022年12月1日号」より抜粋)
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