ウェルネスフード・ワールド第128回|「エビデンスの強さ」とは何か

こんにちは、GNG武田です。

前号(第127回)では、システマティックレビュー(SR)とメタアナリシス(MA)の違いを整理し、
それぞれが「何ができて、何ができないのか」という観点から、機能性表示食品における科学的根拠の扱いについて考察しました。

SRはあくまでエビデンスを体系的に整理する方法であり、それ自体がエビデンスの強さを保証するものではありません。
この点を踏まえると、もう一つ重要な問いが浮かび上がってきます。
エビデンスとは、「ある/ない」で語るものなのでしょうか。

結論から言えば、エビデンスは本来、白か黒かではなく、
「どの程度、確からしいのか」というグラデーションで評価されるべきものです。


1.エビデンスは「0か1か」ではない。「確からしさ」のグラデーション
科学の世界において、エビデンスは、
「あるか、ないか」
ではなく、
「どの程度、確からしいのか」
という“強さ”で評価されます。
例えば、同じヒト試験であっても、
小規模で探索的な試験と、大規模で再現性の高い試験では、その意味合いは大きく異なります。
また、単一の研究結果よりも、複数の独立した研究で一貫した結果が得られている場合の方が、信頼性は高くなります。
さらに、研究の質も重要です。無作為化や盲検化が適切に行われているか、サンプルサイズは十分かといった点によって、
同じ「ヒト試験」であっても信頼性は大きく変わります。
つまり、エビデンスとは本来、
連続的なグラデーションとして評価されるものであり、
0か1かのように割り切れるものではありません。

2.海外の評価枠組み:FSANZやEFSAが重視する「証拠全体」の視点
さらに重要なのは、海外では単に「強弱がある」とするだけでなく、
その強さを評価する枠組み自体が制度の中に組み込まれているという点です。
例えば、
オーストラリア・ニュージーランドのFSANZ(オーストラリア・ニュージーランド食品基準局)では、
食品と健康の関係を確立するために、体系的レビューを前提とし、一貫性や因果性、研究の質などに基づく評価が求められます。

豪州のNHMRC(オーストラリア国立健康医療研究評議会)では、研究デザインや質に応じたエビデンスレベルの階層化が示されています。

米国のFTC(連邦取引委員会)は、“信頼できる科学的根拠”を求め、その中身として研究の質や再現性を重視しています。

欧州のEFSA(欧州食品安全機関)は、提出された科学的データについて、いわゆる“totality of evidence(証拠全体)”を比較検討した上で、
特定の条件下において当該機能が因果関係として実証されているかを評価します。

さらに、医療分野で広く用いられているGRADEでは、エビデンスの確実性を段階的に評価する体系が確立されています。
つまり、海外では
エビデンスの「強さ」は、一定のルールに基づいて評価されるもの
として扱われています。

3.低質な研究をいくら集めても無意味。Garbage in, Garbage outの罠
一方、日本の機能性表示食品制度では、
SRが存在するか、届出要件を満たしているか、といった基準が重視されるため、
「エビデンスがあるかないか」
という理解になりやすい構造があります。
しかし、ここで注意が必要です。
SRはあくまで、既存の研究を体系的に整理する方法に過ぎません。
その中に含まれる研究の質が低ければ、いくら丁寧にまとめたとしても、エビデンスの強さが高まるわけではありません。
極端に言えば、
質の低い研究をいくら集めても、強いエビデンスにはならない
ということです。
これは「Garbage in, Garbage out」とも言われる考え方であり、
エビデンス評価において極めて重要な視点です。
つまり、
SRはエビデンスを整理する方法であり、その強さを保証するものではない
という点を改めて認識する必要があります。

4.なぜ日本は「ある/ない」で語るのか?制度に潜む構造的要因
では、本来問うべきは何でしょうか。
それは、
エビデンスがあるかないかではなく、その強さはどの程度なのか
という問いです。
この点を科学の視点から捉えると、エビデンスの確実性とは、
その知見がどの程度再現可能であり、どの程度信頼できるかを示す指標です。
そして、この確実性の違いは結果として、
どの程度の確信をもってその機能性を語ることができるのか
という点に反映されます。

5. 科学の「強さ」と制度の「二値的判断」。そのズレをどう解釈するか
では、なぜ日本ではエビデンスが「ある/ない」で語られやすいのでしょうか。
そこには、制度設計やSRの位置づけ、行政運用といった構造的な要因があります。
また、制度が成熟するほど、
科学(強さ)と制度(二値的な判断)のズレ
が顕在化するという問題も見えてきます。


本号では、「エビデンスの強さ」という視点から、機能性表示食品における科学的根拠の捉え方を整理しました。

この「エビデンスの強さ」と、それをどのように伝えるかという問題については、
今後、「トランスペアレンシーマーケティング」において体系的に整理していきたいと考えています。
また、SRの位置づけや、なぜエビデンスが二値化されるのかといった構造については、Insight Letterにて詳しく解説する予定です。

 

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