2021年、時代は「健康(ヘルス)」から「ウェルネス」へ|ウェルネスフード・ワールド第88回

2021年、時代は「健康(ヘルス)」から「ウェルネス」へ

こんにちは。GNGの武田です。

2021年から、私たちは「健康食品」という呼び方をやめ、「ウェルネスフード」と呼ぶことにしました。

理由は、「健康(ヘルス)」はあくまで手段であり、ゴールは「豊かな人生、輝いている人生、自己実現」というウェルネスな状態を実現することである、という考え方に共感を覚えたからです。

今後、GNGは「ウェルネスフード」「ウェルネスライフ」という言葉を使用することにしました。

メールマガジンも「健康食品ワールド」から「ウェルネスフード・ワールド」に変更いたします。

10キートレンド2021日本語要約版を発行~10キートレンドを振り返る~

先週金曜日(1月15日)、“10 Key Trends in Food, Nutrition & Health 2021”(以下、10キートレンド)の日本語要約版を発行しました。

10キートレンドは2005年から毎年発行されており、GNGでは、10キートレンド2006年から毎年、日本語要約版を発行してきました。

10キートレンドは、毎年その内容が充実、進化してきました。2005年版(英語版)は全43ページだったのが、2021年版(英語版)では、146ページと100ページ以上増えています。日本語要約版も、当初はWordでサマリーとして位置付けていましたが、2018年から、内容を充実させるためにPPTに変更しました。今では、豊富な図表やビジュアルもご覧いただきながら、より一層ご理解いただきやすくなっていると思います。

10キートレンド2021日本語要約版は、要約版とはいえ133ページにも及んでいます。図表を挿入しているため、文字も小さくボリュームが多くなっており、隅々まで読むと約5時間かかります。

ご多忙な方は、じっくりお読みいただく時間がないと思い、3時間の「理解度UPセミナー」を来月開催することにしました。セミナーの詳細は、この記事の後半にてご案内します。

2005年の10キートレンド

それではここで、10キートレンドを振り返ってみましょう。

2005年の10キートレンドは以下の通りです。

キートレンド1:健康が食品の将来像である

キートレンド2:食品が元来持っている健康パワー

キートレンド3:「良い食生活、悪い食生活」は終わり、「良い食品、悪い食品」の時代へ

キートレンド4:良い炭水化物と悪い炭水化物:全粒粉と低GIの台頭

キートレンド5:カスタム化した栄養

キートレンド6:バーと飲料が食品の未来である

キートレンド7:1日分の用量及びパッケージのイノベーション

キートレンド8:サプリメントからの広がり

キートレンド9:健康のリーダーシップ、刺激を与えるアジア

キートレンド10:子供の栄養危機が全ての企業の課題となる

いかがでしょうか。

今から16年前にこれをご覧になっていたら読者の皆さんのビジネスにどのような影響があったでしょうか?

2011年の10キートレンド

続いて、10年前の10キートレンド2011年をご覧ください。

キートレンド1:腸の健康

キートレンド2:エナジー

キートレンド3:体感性‐実感できるベネフィット

キートレンド4:フルーツ:食と健康の未来

キートレンド5:ウエイトマネジメント

キートレンド6:ナチュラルヘルシー&超利便性の追求

キートレンド7:パッケージとプレミアム戦略

キートレンド8:抗酸化

キートレンド9:免疫

キートレンド10:ボーン&ムーブメント

10キートレンドはどのように選定されるのか?

毎年、10キートレンドを発表しているNew Nutrition Business(以下、NNB)誌では、10キートレンドを「食品・栄養・健康ビジネスの将来的な方向性を示す「長期的」かつ「成長のチャンスがあるグローバルなトレンド」」と位置付け、

  • 消費者ニーズ
  • 販売トレンド
  • 栄養科学
  • 原料&技術
  • 規制
  • マーケティング戦略
  • 競合環境(市場勢力図)

の7つの項目それぞれを定量・定性分析を行い、スコア化し、トレンドダイアグラムを作成し、10のトレンドを選出しています。

そして、2019年からは10キートレンドを包括するもの、ウェルネスビジネスにおいて標準となりつつある、かつては独立したトレンドであったが今やカテゴリー、分野は関係なく当たり前となっているトレンドを「メガトレンド」を選出しています。

2021年の10キートレンド

2021年の10キートレンドは次の通りです。

メガトレンド

メガトレンド1:天然の機能性

メガトレンド2:細分化

メガトレンド3:ウエイトウェルネス

メガトレンド4:スナック化は戦略の基軸

メガトレンド5:サスティナビリティ

10キートレンド

キートレンド1:より少ない、より良い、楽しみのための炭水化物

キートレンド2:スイッチが入った動物性プロテイン

キートレンド3:代替プロテイン-エンドウ豆を超えた成長

キートレンド4:多様化する腸のウェルネス

キートレンド5:植物を便利に

キートレンド6:追い風を受ける免疫力

キートレンド7:燃料としての脂肪の発展

キートレンド8:多様化する甘味

キートレンド9:新たなムード&マインドフード

キートレンド10:来歴の持つパワー

ここまでお読みいただき気付かれた方も多いと思いますが、この10キートレンドは過去の歴史を知っているのといないのとでは、理解の態度が大きくことなります。

竹中平蔵氏は、問題解決の際には「川を上り、海を渡れ」と言われています。
川を上るとは、歴史を遡るということ、何か問題があった時は同じような問題が過去になかったか調べ解決の糸口にするという意味です。そして、海を渡るとは、海外に目を向けて同じような問題が起こっていないか、どう対応しているかを調べて問題に対処するということです。

10キートレンドは、まさに「川を上り、海を渡る」ために最適なツールなのです。

特に、豊富なケーススタディーには、成功事例だけでなく失敗事例も掲載されています。失敗事例から得られる教訓はとても重要です。

10キートレンドの変遷を整理して見える化

そしてもう一つ、トレンドを先取りするには、良質な情報定点観測することが最も効果的です。何故なら、定点観測をしないと、変化に気付けないからです。

10キートレンドの変遷を整理して見える化してみると、いろいろな気付きがあります。

例えば、メガトレンドとなっている「天然の機能性」は「ナチュラルヘルシー」というトレンドで長年10キートレンドの常連となっており、他のトレンドにも影響を与えてきました。

また、「ウエイトウェルネス」も「ウエイトマネジメント」として10キートレンド常連であり、やはり他のトレンドに影響を与えてきました。

この5年くらい前からですが、各トレンド間の相互作用というのも無視できなくなっています。かつては1つのトレンドを取り入れて成功しているブランドが多かったのですが、トレンドが標準化してくると、もはやそのトレンドを取り入れるだけでは差別化ができないようなってきました。

最近は複数のトレンド掛け合わせ複数の訴求をした商品成功例が目立ちます。

しかし、複数のトレンド掛け合わせるといっても相性があります。例えば、腸の健康、免疫力アップ、心臓の健康などというものを組み合わせてもうまくいきません。腸の健康良い炭水化物プロテインプラントベース掛け合わせると、消費者に対して強いメッセージを打ち出せます。

そして、トレンドの進化のスピードが速くなっていることにも気付きます。
パーソナライゼーション・細分化」というトレンドが初めて登場したのは2017年ですが、2020年にはメガトレンドとなっています。

この背景にはSNSを中心とした情報の多様化が一気に進み、消費者が自ら情報を集め、評価し行動することに拍車をかけたからです。それにしても、10キートレンド2005年に「カスタム化した栄養」が選出されていることは興味深いです。

具体的な戦略

10キートレンドは、業界人が業界人のために書いたものです。豊富な事例から導き出されたトレンドと、そのトレンドを取り入れ、活用するための具体的な戦略も示されています。

例えば、「腸のウェルネス」には、9つの戦略が示されています。

1. プロバイオティクスと発酵    

2. プレバイオティクスと食物繊維          

3. プラントベースの乳代替品    

4. 乳糖フリー               

5. A2 

6. グレインフリー

7. 新興のヤギ乳の採用

8. グルテンフリー

9. FODMAP食

もちろん、全ての戦略が日本で有効であるとは限りません。海外と日本との違いを十分考慮し、10キートレンドを深く理解し、良い所取りをすることが大切です。

そして、忘れてはいけないのがCOVID-19の影響です。COVID-19パンデミックによりトレンドの進化スピードアップしています。

10キートレンド2005年をご覧いただくと、キートレンド9に「健康のリーダーシップ、刺激を与えるアジア」とアジアが出てきます。実は2005年3月、GNGはNNBのパートナーとなりました。そして、日本の情報をNNBを通じて発信していきました。

10キートレンド2006年のキートレンド9に「健康分野ではアジアがリード」、2007年にはキートレンド7として「日本のトレンドが世界へ」が選出されました。

2000年代半ばは、まさにアジアの時代でした。

しかし、その後ウェルネスフードトレンド欧米、特に米国が発信地となりました。

2015年機能性表示食品制度スタートし、企業のサイエンスへの投資が活発化し、今、再び日本が世界に向かってトレンドを発信する時代になってきたと思います。

多くの方が、この10キートレンドを手に取り、活用されることをお勧めしたいと思います。

2021年、健康食品ビジネスはどこへ向かうのか?

【10 Key Trends(テン・キートレンド)理解度アップセミナー】を開催します。

「10 Key Trends in food, Nutrition & Health 2021」に基づく『NNB10キートレンド 理解度アップセミナー』(3時間+質疑応答のフルバージョン)

(2021年5月追記:セミナーは終了しました。上記リンクは、10キートレンド2021日本語要約版レポート販売ページに切り替わります)

王道のナチュラルヘルシーからプラントベース、肉、スナック化、良い炭水化物&悪い炭水化物、脂肪、気分を高める「ムードフード」など多岐にわたるトレンドの解説とビジネスチャンスの分析、各トレンドを活用した海外事例が豊富で、今後のマーケティングや商品開発などに役立ちます。

皆様のウェルネスフードビジネスに少しでもお役に立てましたら幸いです。

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18年間の実務経験と20年間のコンサル経験を積み、38年間一貫して健康食品ビジネスに携わる。国内外750以上のプロジェクトを実施。「世界全体の中で日本を位置付け、自らのビジネスを正確に位置付ける」という「グローバルセンス」のもとに先行する欧米トレンドを取り入れたコンセプトメイキングに定評がある。世界各地にネットワークを築き上げ、情報活用サービス「グローバルニュートリション研究会」主宰。食品会社、化粧品会社、製薬会社の健康食品部門に対して、商品開発・マーケティング・海外進出などのコンサルティングを行っている。人が幸せに生きるためには健康が第一である。健康食品産業は「幸せ創造産業」である、という信念のもと、クライアントの成功を通じ、消費者に支持される業界を目指し、業界で働く人すべてが自分の仕事に誇りと自信をもてるようにしたいという想いから、業界健全化活動にも取り組んでいる。

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