ウェルネスフード・ワールド第130回|日本の健康食品は、世界でどう戦うべきか

こんにちは、GNG武田です。

今号のウェルネスフードワールドでは、日本の健康食品が世界で戦うための「勝ち筋」をどこに見出すべきか、
輸出データからその構造を整理してみました。

1.世界市場における日本のポジション

2024年の健康食品(HS210690ベース)輸出額トップ10は以下のとおりです。
1位 米国:6,485百万ドル
2位 シンガポール:5,986百万ドル
3位 ドイツ:5,758百万ドル
4位 オランダ:4,288百万ドル
5位 中国:3,642百万ドル
6位 ポーランド:3,129百万ドル
7位 アイルランド:2,997百万ドル
8位 英国:2,854百万ドル
9位 フランス:2,661百万ドル
10位 イタリア:2,512百万ドル
一方、日本はというと、
745百万ドル、27位
というポジションでした。
正直なところ、もう少し上位にいるイメージを持たれている方も多いのではないでしょうか。

日本は品質が高い。
『日本ブランド』は海外でも通用する。
健康食品の領域でも、そう考えられていることが多いと思います。
ただ、少なくとも「輸出の数字」という結果で見ると、この前提がそのまま結びついているとは言いにくい状況です。

日本の輸出額の推移を見ると、
・ 2018年:738百万ドル(16位)
・ 2019年:829.1百万ドル(13位)
・ 2020年:1,203百万ドル(11位)
・ 2021年:1,191百万ドル(12位)
と一時的に上昇しました。
これはコロナ禍における越境EC需要の急増など、特殊要因によるものと考えられます。
しかしその後、
・ 2023年:830百万ドル(21位)
・ 2024年:745百万ドル(27位)
と大きく低下しています。
ピークから約40%減少し、順位も大きく後退しています。

これは決して、「市場環境が悪い」ということではなさそうです。
同じ期間に、米国、ドイツ、中国といった主要国は、いずれも輸出額を伸ばしています。
つまり、日本だけが世界の成長から取り残されている構図が見えてきます。

2.日本の健康食品輸出の現状と構造変化

ただし、このデータは少し注意して見る必要があります。
今回使っているHS210690という分類には、サプリメントだけでなく、栄養調整食品やプロテイン製品、さらには飲料の原液や乳幼児栄養製品、一部の原料や調製品も含まれています。
つまりこれは、「完成品サプリメントだけのランキング」というよりは、「広い意味での健康食品サプライチェーンの輸出構造」を見ているデータになります。
さらにもう一つ重要なのが、再輸出の存在です。
例えば2位のシンガポールや4位のオランダは、輸出額が非常に大きいですが、これはすべてが国内生産というわけではないと考えられます。
特にシンガポールの場合、外資大手の製造拠点(飲料原液や粉ミルクなど)としての側面に加え、米国系MLM企業などがシンガポールを「アジアの在庫拠点」として活用し、周辺国へ再輸出している実態があります。
つまりこのランキングは、「どこで作られたか」ではなく「どこから世界へ出ていったか」、すなわち物流と商流のハブ機能を映し出しています。

では、上位にいる欧州は何が強いのでしょうか。
ここで誤解されがちなのが、「欧州は生産力が強い」という理解です。
実際には、ビタミンCやビタミンEのような汎用品は、中国での生産比率が非常に高いことが知られています。
それでもドイツやオランダの数字が大きいのは、
どこで作るかではなく、誰が供給を設計しているか
にあります。
欧州には、
・ グローバルに展開する原料サプライヤー
・ 国際規格に対応した品質設計
・ 広域の供給ネットワーク
があります。
調達、品質管理、規格対応、供給。
この一連の流れを支えているため、最終的な輸出の数字として欧州に集約されやすい構造になっています。

3.なぜ日本は伸びないのか(データ構造の本質)

では日本はどうでしょうか。
日本企業も原料の海外展開は積極的に行っています。
機能性素材や発酵由来成分など、グローバルでも評価されている分野は確実に存在します。
一方で、最終製品としての輸出は限定的です。
結果として、統計上の数字が小さくなる傾向があります。
実務的に見て、もう一つ大きいと感じるのが、安全性評価の壁です。
海外に展開する際には、
・ 原料の安全性評価
・ 摂取量設計
・ 各国規制への適合
といった対応が必要になります。
ここにかかる時間とコストは想像以上に大きく、結果として海外展開のスピードを削ぐ最大のボトルネックとなっています。

一方で、機能性については変化が出てきています。
機能性表示食品(FFC)制度の導入以降、RCT(ヒト試験)が事実上の標準となりました。
日本国内ではトクホは厳格な制度として運用されていますが、トクホは「日本の行政許可」という国内制度に依存しています。
一方、FFCではSR(システマティックレビュー)が用いられるケースが多く、既存の臨床研究を整理した形で説明されます。共通の手法で説明できるため、海外の関係者にとっても理解されやすい側面があります。
実務的には、FFCのエビデンスの方が国際的に通用しやすいケースも見られます。

4. 日本の課題と今後の勝ち筋

このように見ていくと、課題は「品質」そのものではありません。
日本の製品は国内基準において適切に管理されていますが、海外展開では、それとは別に「グローバル市場のレギュレーションから逆算した設計」が求められます。
国内制度に準拠しているだけでは不十分で、最初から世界基準に合わせた安全性評価や摂取条件の設計を組み込んでおく必要があります。
この負担の大きさが、結果として海外展開そのものの難しさにつながっていると考えられます。

原料そのものに大きな弱さがあるわけではなさそうです。
品質の問題でもありません。
「日本ブランドは強い」という前提は、少なくとも健康食品の輸出という観点では、そのままでは通用しなくなっている側面があります。
ただし、どこで価値を取るのかを明確にし、最初からグローバル基準を設計に組み込むことができれば、
日本のポジションを変えられる余地は十分にあります。

今回はここまでにしたいと思います。
このテーマは、「では日本はどこで戦うべきか」という話にもつながりますので、別途、The Global Nutrition Insight Letterで深掘りしてみたいと思います。
出典:UN Comtrade(World Bank WITS経由)、HS210690、GNG作成

 

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