こんにちは、GNG武田です。
機能性表示食品制度は、安全性、品質管理体制については規制強化される方向で改正されることになりました。一方、機能性表示の科学的根拠については新規原料を除いては手を付けられることはありませんでしたが、安泰とは程遠い状況だと思います。
一昨年の日経クロステックによる機能性の科学的根拠に対する批判から、さくらフォレスト措置命令、そして直近では日経サイエンスによる「誇張表示」批判、など、枚挙にいとまがありません。
機能性表示(ヘルスクレーム)について、恐らく世界で最も厳格なものはEUヘルスクレーム制度だと思います。一方、米国ダイエタリーサプリメント制度の構造機能表示は自己責任による制度で、表示そのもののハードルは高くありません。但し、米国には強力な抑止力があるため、企業の自制が一定程度機能しています。その強力な抑止力とは、FTCによる告発と民間弁護士による集団訴訟です。
EUは、厳格な制度による事前規制、米国は告発や訴訟による事後規制で制度を維持しています。現在の日本の機能性表示食品制度は、このどちらでもありません。トクホ制度も、EUヘルスクレーム制度の厳格さには及びません。
今号のNNBでは、レギュレーション・ケーススタディとしてEUヘルスクレームの近況を分析しています。この内容は、5月24日に「GNG創立20周年記念セミナー」のために来日したJulian氏が、当日話してくれた内容のサマリーになっています。EUヘルスクレーム制度があまりにも厳格なため、申請を避ける企業が増加している状況が報告されています。これは、社会にとってハッピーなことなのか、考えさせられます。
問題は3つあると思います。
まず、食品の機能性研究に対する投資が減り、イノベーションが起きにくくなること。
2つ目に、ヘルスクレーム制度を変化球として使うことで、消費者を誤認させてしまうこと(日本の栄養機能食品も同様です)。
そして、国内産業の空洞化です。EU企業は米国進出を目指し、米国での市場化を優先するようになります。これは、ここ最近の日本企業も同様かと思います。
日本の機能性表示食品制度は今まさに岐路に立たされていると思います。米国スタイルか?EUスタイルか?或いは独自のジャパンスタイルか?そんなことを考えていました。
武田 猛
この記事について
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この記事では、その会員向けマガジンの一部を抜粋してご紹介させていただきます。
■NNB(New Nutrition Business)6月号 トピックス
今回、会員向けにお届けしたNNB日本語要約版のタイトルは以下の通りです:
●減量薬でネスレの利益は増えるのか?
●着想を得たいなら巨大都市以外にも目を向けよ
●差別化と勇気がもたらしたDaveの成功
●消費者に合わせた自然食品の成功をソーシャルメディアが後押し
●Nutri-Score は現実との接触で失敗した
●EUのヘルスクレーム、申請を避ける企業が増加
●Mary’s Gone Cracker社:オーガニック、グルテンフリーのパイオニア
●低炭水化物パン・ブランド Hero はゼロで競争を目指す
●大自然由来の発酵菌類から生まれた乳代替品
●標的アミノ酸カットが癌の予後を改善するという期待
●クレアチンはスポーツ・ブラザーの枠を超えられるか?
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[今号のハイライト]
減量薬でネスレの利益は増えるのか?
Ozempic®やその他の減量薬は2023年に突如として食品ビジネスの意識にのぼったが、その影響はまだ始まったばかりだ。ネスレ社が2024年5月に、これらの医薬品を使用する患者を対象としたまったく新しい商品を発表したが、グルカゴン様ペプチドの影響と、肥満や糖尿病患者への訴求に企業が対応しようと躍起になっていることを示す最も明確な例である。
(会員向けニューズレター「NNBマンスリーレポート2024年6月号」日本語要約版より抜粋)
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